記事の監修
株式会社瞬読 代表取締役山中恵美子
大学卒業後、関西テレビ放送株式会社に勤務。2009年学習塾を開講し3万人の生徒が卒業。
学習効果を上げる方法として速読を取り入れる。これが後の「瞬読」となり生徒が次々と難関校に合格。
2018年瞬読のみの講座が開講し、現在受講生は2,600名を超える。
著書『瞬読』は10万部超えのベストセラーに。その他、TV・ラジオなどメディアにも多数登場し、全国に瞬読を広めている。
若々しい脳を保ちたい!」ある程度年齢を重ねると、誰もがそのように願うものです。完全な脳年齢の若返りはムリだとしても、実年齢より脳年齢を若く維持することは、十分に可能です。
今回の記事では、脳年齢若返りについての基礎知識・具体的な方法・関連する研究データなどを紹介していきます。脳を若く保ちたい人は、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
脳年齢若返りについて知っておきたい基礎知識
脳年齢若返りの方法を紹介する前に、まずは脳年齢についての基本的な知識をおさらいしておこうと思います。脳年齢の影響や脳年齢の若返りで得られるメリットなど、しっかりと確認しておいてください。
そもそも脳年齢とはなにか
脳年齢を調べる際には、計算力や記憶力のテストがおこなわれます。そういったテストの結果が、年齢別平均値のどのスコア帯に当てはまるかをみて、脳年齢が判定されるわけです。
したがって、実年齢が50歳でも、テストの結果によっては、脳の年齢が70代と診断されることもあり得ます。もちろん反対に、80代でも実年齢より何十年も若い状態を維持している人だっているでしょう。
一般的に、脳は加齢とともに衰えるといわれています。たしかに加齢により脳細胞が減少するのは事実ですが、だからといって脳の機能が必ずしも低下するとは限りません。
ストレスや不規則な生活、栄養不足といった悪い生活習慣を回避できていれば、高齢になっても脳機能の衰えを感じさせない生活は十分に可能です。脳年齢の若返りに有効な方法については、のちほど詳しく紹介します。
脳の加齢による影響について
前述のとおり、歳を重ねるごとに、脳が老化するのは紛れもない事実です。一般的に20代が脳の成長のピークといわれており、30代くらいから脳の萎縮がはじまります。さらに60代になると、肉眼で識別できるほど萎縮が進行するそうです。
40代を過ぎると、「人の名前が出てこない」「忘れ物が増えた」など、加齢による脳機能の衰えを実際に体感している人も多いでしょう。
しかし、脳には非常に強力な代替作用があります。脳細胞が減少しても、正常な部位がそのぶんの機能を補おうと動き出してくれるんです。だから、必要以上に不安がる必要はありません。私たちがやるべきは、生活習慣を整え、脳へ適切な負荷をかけてあげることです。
具体的な方法を試すまえに、「適切なケアさえ怠らなければ、脳年齢の若返りは十分に可能」だと、ぜひ頭に入れておきましょう。
◆脳年齢と脳トレの関係については、コチラの記事でお読みいただけます
脳年齢の若返りがもたらす嬉しい効果
脳の衰えを最小限に食い止められれば、たくさんの素晴らしい効果が得られます。脳の衰えと聞いて気になるのは、やはり記憶力の低下に代表される「認知症のリスク」でしょう。
足が悪くても、視力が極端に落ちても、なんとか生活は可能です。ところが、認知症のように記憶力や思考力に問題がある状態だと、普通の生活ができなくなってしまいます。
脳の若返りにより記憶力が改善されれば、人の名前や大事な情報を忘れることなく、いくつになっても普通に生活ができます。また思考力や判断力が正常に機能していれば、やるべき日常的なタスクもこなせるし、そうなれば仕事を継続することも可能です。
人生100年時代といわれる現代社会において、元気で仕事ができる状態かどうかは、非常に重要なポイントです。実際に働かないとしても、いつでも働ける状態を維持できれば、人生の選択肢が大きく広がります。
脳年齢若返りに効果的な方法はこれだ!
残念ながら、これさえやっておけば脳年齢が若返るという方法はありません。今回紹介する方法を、地道に改善していくしかないんです。ただし、今回紹介するのは、誰でもすぐに取り組めるものばかりです。焦らずに、ひとつずつクリアしていきましょう。
1.バランスのよい食生活
脳年齢を若返らせるためにまず見直すべきは、食生活です。脳は私たちの体をコントロールする司令塔の役割を果たしており、栄養が不足するとてきめんに機能が落ちてきます。
脳の主な栄養素はブドウ糖ですが、ブドウ糖以外にも、神経伝達物質の分泌に欠かせない「ビタミンB」や「葉酸」「ミネラル」、シナプスをつくる「ビタミンD」も大事な栄養素です。
必要な栄養を摂取するには、とにかく野菜や果物・魚や肉・豆類・乳製品といった食材を、バランスよく食べるようにしてください。とくに、オメガ3脂肪酸の豊富な青魚は、脳年齢の若返りには必須の食材になります。
反対に、砂糖や塩分の摂取はできるだけ控えましょう。脂質についても、三大栄養素のひとつではあるものの、摂り過ぎは肥満や心筋梗塞の大きな原因になります。
三大栄養素(たんばく質・脂質・炭水化物)を中心に、必要な栄養素が含まれる食材をよく噛んで食べる。これが脳年齢の若返りの第一歩です。
◆バランスのよい食事については、コチラの記事でお読みいただけます
2.運動で脳のストレスを軽減
もし私が脳年齢の若返りのために、なにかひとつだけ取り組むとしたら、まずは運動からはじめるでしょう。それだけ、運動が脳へ与える影響は大きいのです。
WHOが発表した「身体活動に関する世界行動計画 2018-2030※1」を読むと、運動には心疾患や脳卒中といった病気の予防や、メンタルヘルスの改善効果があると書かれています。
運動の種類に関しては、ウォーキング・サイクリング・水泳・ヨガなど、自分の好きな運動を選んでもらって大丈夫です。脳年齢の若返りが目的なら、運動の種類よりも、運動の強度のほうが重要になります。
認知症予防が目的の場合、週に合計150分以上の中強度の有酸素運動もしくは、週に合計75分以上の強度の高い活発な運動をひとつの基準にしてください。もちろん年齢や個人の健康状態で変わってくるため、詳細は以下のサイト※2で確認いただければと思います。
※参考1:身体活動に関する世界行動計画 2018-2030概要版
※参考2:認知機能低下および認知症 のリスク低減 WHOガイドライン
◆運動と脳の関係については、コチラの記事でお読みいただけます
3.認知トレーニングで脳を使う
脳機能の衰えは、加齢やストレス、生活習慣の乱れなど、さまざまな要素が絡み合って起こると考えられています。いつも同じことばかり繰り返す、いわゆるルーティンワークが多い人も、脳が衰えやすいです。
原因は数あれど、認知トレーニング(脳トレ)で脳に適度な刺激を与えれば、脳の劣化は最小限に食い止められます。
具体的な認知トレーニングの方法としては、ナンプレやクロスワードパズル、計算クイズなど、頭を使うゲームをイメージする人が多いでしょう。しかし、認知トレーニングは、そういったゲームだけではありません。
「外国語を学ぶ」「楽器を演奏する」「絵を描く」といった作業も、立派な認知トレーニングです。さらに、ウォーキングやヨガなど、体を動かすタイプの認知トレーニングもあります。
掃除や洗濯のような家事だって、やりようによっては認知トレーニングの役割を果たしてくれます。ようは、脳に刺激を与えてくれるものなら、どのような行動も認知トレーニングになり得るんです。
大事なのは、認知トレーニングの内容よりも、継続してできるかどうかです。これまでに、認知トレーニングの継続性については、何度もお伝えしています。ぜひ、そういった記事にも、目を通しておいてください。
4.十分な睡眠と休息で脳は若返る
※参考: 平成26年版厚生労働白書 図表2-3-22 睡眠時間の国際比較
脳年齢の若返りには、十分な睡眠と休息が大切です。じつは、私たちが寝ている間も脳は一生懸命働いていて、その日の出来事を整理し、記憶を定着させています。だから、良質な睡眠が取れないと、頭のなかが整理しきれず、脳の働きが低下してしまうのです。
一般的に、成人に必要な睡眠は、8時間以上が推奨されています。ところが、日本人の平均睡眠時間は世界でもワースト3に入るほど、短いです。上図は睡眠時間の国際比較一覧ですが、1位のフランスと比較して、日本人は1時間以上も睡眠時間が短いのがわかります。(女性の場合)
睡眠は、健康の基本です。ぜひ、1時間早くベッドに入り、ゆっくりと休息を取るように心がけてください。
また、心を休める休息時間も、脳の若返りには必要です。趣味を楽しんだり、友人と過ごしたりと、心を緩める時間を定期的に確保してください。自然のなかでゆっくりと過ごすのも、脳のリフレッシュにつながります。郊外の公園、海や山での散歩など、最低でも週に1回は自然のなかで過ごすように意識してみてください。
◆自然のなかで過ごすメリットについては、コチラの記事でお読みいただけます
5.社会的繋がりを維持する
いつまでも若々しく元気に過ごすには、なんらかの社会的繋がりが不可欠です。嬉しいことがあればシェアをして、苦しいときにはお互いに助け合う。そういう家族や友人がいれば、それだけで人生は本当に豊かだと心から思います。
内閣府がおこなった「人々のつながりに関する基礎調査」を調べてみると、いつも孤独を感じている人の傾向がよくわかります。
まったく外出しない人、直接他人と話す機会の少ない人、趣味や地域の集まりといった社会活動に参加していない人は、やはり常に孤独感を抱いている人が多いです。
逆にみれば、適度に外出して友人や家族とコミュニケーションを取れる人は、いつも楽しく生活ができるわけですよね。コロナの影響もだいぶ落ち着いてきた感じがありますから、ムリのない範囲で人と会う機会を増やしてみてはいかがでしょうか。
なかでも、趣味のサークルや地域活動のように、新しい出会いが多い場所への参加は非常にオススメです。新しい出会いがあると、適度な緊張感が生まれ、脳が刺激を受けます。
また、ボランティア活動も非常にいいですね。他人のために働く行為を通して、達成感や自己肯定感が高まり、脳の健康が向上します。
脳年齢若返りの研究データをしっかりと確認しておこう
最後に、脳年齢若返りに関する研究データをいくつか紹介しておきます。まだ解明されていないことも多い分野ではありますが、こういったデータをみると脳年齢の若返りに取り組むモチベーションが高まります。
食事と栄養が脳に与える影響
食事と脳に関するデータは数多くありますが、今回は、脳の発達と非常に密接な関係のあるオメガ3脂肪酸の研究データをみていきましょう。
当論文では、「認知機能低下や軽度認知障害は、オメガ3脂肪酸の低下レベルと相関性があり、オメガ3脂肪酸の摂取により認知機能の向上が確認された」と述べられています。
オメガ3脂肪酸を構成するEPAやDHAは、サケやマグロのように脂肪が多い魚、カニや牡蠣といった甲殻類に多く含まれています。くるみのような豆類も、オメガ3脂肪酸は豊富です。
なお、オメガ3脂肪酸はサプリメントからでも摂取できます。ただし現時点で、サプリメントの効果に関する明確なエビデンスは発表されていません。できるだけ、上記のような食材から摂取するほうが、無難だと思います。
◆脳に優しいブレインフードについては、コチラの記事でお読みいただけます
認知トレーニングで脳年齢が若返り
認知トレーニングと脳の関係については、まだ未解明な面が数多くあるのが現実です。しかし、認知トレーニングで脳がよい影響を受けるのは間違いなく、積極的に取り入れる価値は十分にあると考えられます。
ここでは、サウジアラビアのキングサウド大学でおこなわれた認知トレーニングの例を紹介しておきます。使用したトレーニングは、これまで何度も紹介している脳トレアプリ「Lumosity」です。
1日約15分×週7日をワンセットとして、Lumosityを3週間続けたところ、記憶力・注意力・情報処理能力といった認知機能が改善をみせたそうです。もちろんすべての認知機能に効果があるかどうかは、もう少し幅広い対象に向けた研究が必要でしょう。
でも、簡単に手に入るアプリで有効な結果が出たという事実は、私たちに大きな希望を与えてくれます。
※参考:Brain Training Games Enhance Cognitive Function in Healthy Subjects
◆Lumosityについては、コチラの記事でお読みいただけます
社会的繋がりが脳に与える影響とは
最後に、脳の健康にとってどれだけ社会的繋がりが重要であるかという、研究データを紹介しておきます。過去数十年間の研究により、社会的なつながりが強い大人は、孤立している同世代の人よりも健康で長生きであるという傾向がはっきりと現れているそうです。
社会的な繋がりがなくても一見問題なさそうですが、人間は社会的繋がりを失うと、心と身体の健康どちらにも悪い影響を受けます。しかもその影響は長期間続くため、できるだけ早い段階での対処が必要です。
人間関係の核となるのは、なんといっても、家族と仲のよい友人でしょう。SNSに代表されるオンラインでの繋がりは便利ですが、身近な人とのコミュニケーションを増やすのが最優先です。
身近な人を大切にすれば、その人の人間関係を通して、自然と社会との接点は増えていきます。ぜひ今日から、もういちど身近な人との関係を見直してみてください。それだけでも、あなたの社会的繋がりは、飛躍的に広がっていくはずです。
※参考:Social Relationships and Health: A Flashpoint for Health Policy – PMC
まとめ
誰でも、加齢による脳の衰えは避けられません。ただし冒頭でもお話ししたように、実年齢より若い脳年齢を維持することは、十分に可能です。
今回は、脳年齢の若返りを実現するための具体的な方法を紹介しました。すべて一度におこなうのがむずかしい場合は、ひとつずつじっくりと取り組んでみてください。どれかひとつでも習慣化できれば、必ずよい結果が現れてくるはずです。