記事の監修
株式会社瞬読 代表取締役山中恵美子
大学卒業後、関西テレビ放送株式会社に勤務。2009年学習塾を開講し3万人の生徒が卒業。
学習効果を上げる方法として速読を取り入れる。これが後の「瞬読」となり生徒が次々と難関校に合格。
2018年瞬読のみの講座が開講し、現在受講生は2,600名を超える。
著書『瞬読』は10万部超えのベストセラーに。その他、TV・ラジオなどメディアにも多数登場し、全国に瞬読を広めている。
幼少期からティーンエイジャーまでの期間は、知識やスキル、思考力といった社会性の基盤を築く重要な時期です。いくつになっても学びに遅いということはありませんが、最適な学びの時期というのはやはり存在します。
本記事では、子どもの脳の発達がいつピークを迎えるのか、そしてその時期にどのような取り組みをすればよいのか、わかりやすく解説していきます。
目次
脳の発達から見た子どもとの取り組み方を分野別に紹介
冒頭でもお話ししたように、年齢に関係なく知識やスキルは学べます。とはいえ、できるだけこの時期までに取り組んでおきたいという大まかな目安を知っておくと、親としては安心でしょう。
そこでこの章では、主な分野別に、最適な学びの時期や学びのポイントについて解説していきます。
母国語の基本的な語彙
子どもの脳が劇的に成長する0〜2歳までの時期は、母国語の基本的な語彙を習得する絶好のチャンスです。
2020年にPANS誌に掲載された論文※には、親が積極的に話しかけをしている乳幼児は、そうでない乳幼児に比べて、よりたくさんの言葉を覚えていると記載されています。
さらに、専門家が親の話し方に適切なコーチングをした家庭では、乳幼児の言語能力が通常よりも発達していたそうです。
普通に考えれば、言葉が理解できない赤ちゃんに話しかけても無駄に思えてしまいます。しかし、前述のデータからもわかるように、言葉がまだ理解できない段階でも、子どもは親が優しく語りかける言葉や表情・仕草をしっかりと感じているのです。
親にとっても忙しく大変な時期ではありますが、愛情をもって、どうかできるだけ積極的に話しかけてあげてください。
※参考: Parent coaching increases conversational turns and advances infant language development | PNAS
走る・投げるといった運動能力
走る・投げるといった運動能力を向上させたいなら、3〜5歳くらいの時期に運動をスタートさせるのがオススメです。なぜならば、ちょうど3〜5歳頃に、運動野(身体の動きを司る部位)の位置する頭頂葉が著しく発達するからです。
特定のスポーツに取り組むのもよいですが、まずは外で思い切り遊ぶ機会をつくってあげましょう。公園で走り回ったり、友達と一緒にボール遊びをしたりする機会が多ければ多いほど、体力がつきバランス感覚も鍛えられます。
とはいえ、このくらいの年齢だと、子どもだけで出かけるのは少々危険です。平日はむずかしいとしても、そのぶんぜひ週末に子どもを自然のなかへ連れていってあげてください。
普段は家のなかでゲームを好む子どもたちも、きっと大はしゃぎして、スポーツやキャンプを楽しんでくれるはずです。
感情コントロール
他人と一緒に生活するうえで、感情コントロールは本当に大切です。1〜2歳児ならともかく、保育園や幼稚園へ通うまでに、ある程度自分の感情をコントロールできるようになっていないと友達に嫌われてしまいます。
2〜3歳頃になると、子どもは「なぜ?」という質問をたくさんしてきます。いわゆる「なぜなぜ期」ですが、このなぜなぜ期は、子どもに感情コントロールを教える絶好の機会です。
たとえば、遊んでいたおもちゃを兄弟に取られたら、悲しくて泣いてしまうでしょう。そのときに、嫌なことをされたらなぜ悲しくなるのか、身をもって学びます。
こういった経験を数多くすることで、他人にも自分と同じような感情があり、一方的に自分の感情を押しつけてはいけないと理解していくわけです。
音楽のようなクリエイティブな習い事
よく、「ピアノのような楽器を習わせるなら、できるだけ小さい頃からはじめた方がいい」という話を耳にします。もし、あなたが、子どもをプロの演奏者にしたいと真剣に考えているなら、答えは完全にイエスです。
楽器演奏は反復練習によって身につくスキルであり、プロですら1日練習をしないと感覚が鈍ってしまうといわれています。そう考えれば、当然小さい頃から練習を継続する方が有利です。
とはいえ、楽器を習わせる親御さんのすべてが、子どもをプロ奏者にしたいと考えているわけではないでしょう。ひとつの教養として、人前で演奏しても恥ずかしくない程度に上達すればよいと考えている人の方が大多数だと思います。
であれば、子どもがやりたいと言い出してからでも、音楽をはじめるのは決して遅くありません。無理強いをして、子どもが音楽自体を嫌いになることのないように注意してください。
勉強全般
脳の発達という面でいえば、勉強をはじめる時期にとくにピークはありません。80歳を超えても、超難関資格に合格する人もいますから、いくつになっても遅すぎることはないのです。
とはいえ、やはり子どもの頃にしっかりと基礎学力を身につけておくと、大人になってから幅広い分野の知識の習得が楽になります。
では、実際にいつ頃から勉強をスタートするのがよいのでしょうか。一般的には、幼稚園の年中・年長クラスを学習開始のひとつの目安にしているケースが多いです。
小学校から本格的に勉強がはじまるので、その1〜2年前頃から、読み書きや簡単な計算に慣れておこうというわけです。
もちろん、この段階で勉強の結果にこだわる必要はないでしょう。あくまでも、机に座っての勉強に慣れるのが目的です。親自身あまり勉強が得意ではないなら、公文のように就学準備向けカリキュラムのある学習塾のお世話になるのもよいかもしれません。
第二言語の習得
一般的に、10〜12歳頃までに学習をスタートしないと、母国語でない言語をネイティブ並みに身につけるのはむずかしいと考えられています。
このスタート時期のリミットとなる時期を「臨界期」と呼びますが、臨界期については諸説入り乱れており、そもそも臨界期など存在しないという説も根強いのです。
とはいえ、言語の要素によっては、やはり学習をはじめる年齢によって習得度が大きく変わってきます。
スペインでおこなわれた第二言語学習に関する研究※では、8歳から英語をはじめた子どもと11歳からはじめた子どもの英語力を比較しています。その結果、両者の文法能力に差はまったくなかったのです。
差が見られたのは、リスニングと発音でした。つまり、ネイティブレベルで英語を聴き話したいなら、やはりできるだけ早く学習をはじめる方が有利なわけです。文部省の資料を見ると、具体的に5〜8歳という数字が提示されています。
もちろん習得度は、第二言語習得に対する子どもの学習意欲によるものが大きいです。親のエゴにならないよう、まずはしっかりと子どもの意思を確認してあげてください。
脳の発達を促すために知っておくべきポイント
ここまで、分野別に子どもの脳の成長についてお話ししてきました。この章では、子どもの脳の発達を促すために知っておくべきポイントを、5つご紹介します。
日常生活の習慣を改善する
勉強をしたり第二言語を学んだりする前に、まずは日常生活をしっかりと整えてあげるのが最優先事項となります。なかでも、「睡眠」と「食生活」は、子どもの脳の成長にとってもっとも重要です。
幼稚園から小学生くらいになると、子どもは少しずつ夜ふかしになってきます。今はゲームや映画など、さまざまな娯楽がいつでも気軽に楽しめるので、どうしても睡眠時間が不規則になりがちです。
人間は睡眠中に、その日のできごとや覚えた内容を整理します。その記憶の整理がおこなわれるのは、ひと晩に4〜5回のみ発生するレム睡眠中だけです。だから、睡眠時間が減ると、記憶の整理と定着が十分におこなわれません。
また、ものすごいスピードで成長する子どもの脳をしっかり形成していくには、脳にしっかりと栄養を入れてあげる必要があります。最近は、糖質制限が流行っており、白米・麺類・イモ類といった糖質を極端に制限する人も多いです。
人間の脳は、基本的に血液中に含まれるブドウ糖を主な栄養源としています。食べすぎはよくないとしても、子どもへの極端な糖質制限は避けてください。
◆脳によい生活習慣については、コチラの記事でもお読みいただけます
遊びと学びをバランスよくおこなう
脳の成長を促すには、遊びと学びをバランスよくおこなう意識が重要です。ところが多くの親は、遊びよりもしっかりと勉強して、よい学校に進学してほしいと願っています。
偏差値の高い学校へ入れれば、将来の選択肢が増えますので、こういった願いを抱くのは親として当然でしょう。
しかし、遊びを知らずに育った子どもは、創造性や協調性といった大切な能力が劣っているケースも多いです。子どもは、遊びを通じて新しいことを生み出す力や集中して取り組むことの重要性を学びます。
さらに、友達と一緒に遊ぶなかで、他人と協力すること、そして集団のルールを守る必要性を自然と身につけていくのです。
今は、ゲームを実況するだけでも仕事になる時代です。親世代の価値観で、子どもの可能性をつぶさないよう、遊びと学びのバランスをうまく導いてあげてください。
親子で取り組むことの重要性
勉強を子どもに習慣づけたいなら、できる範囲でよいですから、ぜひ一緒に取り組む意識をもってください。前述の通り、適切な時期に学習を開始するのは、学習効率を考えるうえで非常に重要なポイントになってきます。しかし、いくら重要でも、無理強いは禁物です。
幼児期から小学校低学年頃までなら、多少厳しく指導しても、親の言うことを聞いてくれるかもしれません。でも、中学生や高校生になれば、「自分は子どもの頃そんなに勉強したのかよ……」と、親に反発するケースも増えてくるでしょう。
ところが、親が一緒になって勉強に取り組む姿勢を見せれば、子どもだって頑張ろうという気持ちになるものです。もちろん、子どもと同じ量の勉強をしてくださいという意味ではありません。
ごくたまに、問題を出してあげたり、一緒に問題を解いてみたりするだけで十分です。「子どもの成長を本当に願っている」という気持ちさえ伝われば、子どもは自主的に一生懸命勉強をしてくれますから。
自然のなかで体を動かす時間をつくる
脳の健全な成長を望むなら、ぜひ子どもを定期的に自然のなかへ連れていってあげてください。子どもは、義務教育中に、学校というごく狭いコミュニティで10年間近くも過ごさなければなりません。
もしそのなかで、人間関係や学業につまずけば、居場所を失いメンタルに大きなダメージを受けてしまう可能性が高いです。
自然のなかで過ごす時間には、そういったストレスを軽減してくれる働きがあります。林野庁がおこなった実験※1によれば、森林のなかに座って木々を眺めているだけで、リラックス状態を示す副交感神経活動が都市部の1.5倍にアップしたそうです。
さらに、ストレスホルモン「コルチゾール」の濃度が、都市部で計測した場合と比較して13%も低下しました。
今なら、流行りのキャンプなどもよいですね。キャンプや川遊びといった自然体験を多く経験する子どもは、自尊感情が通常の21.2%高くなるというデータ※2もあります。
自尊感情が高い子どもは、他人との関係性をつくるのが上手です。サッカーのようなチームスポーツ、あるいは学校での人間関係において、自尊感情の高さは非常によい影響をもたらしてくれるはずです。
※参考1: 保健・レクリエーション機能:林野庁
※参考2: データで見る国立公園の健康効果とは? | 国立公園に、行ってみよう! | 環境省
◆自然が脳に与える影響については、コチラの記事でもお読みいただけます
テクノロジーを活用して学習効率を高める
脳を効率よく成長させるには、テクノロジーの活用は欠かせません。現代の子どもたちは、デジタルネイティブとして育ち、テクノロジーを使いこなす力を自然に身につけています。この能力を学習に活かせば、楽しみながら効率的に学べる環境が整うはずです。
たとえば、計算力や語彙力をアップしたいなら、ゲーム感覚で学べる教育アプリが数多くリリースされています。
また、オンライン動画でのレッスンを活用すれば、視覚と聴覚の両面からアプローチできるので、記憶の定着度が大幅に向上するでしょう。わからないところをいつでも巻き戻して確認できるのも、大きいですよね。
なお、最近の学生は、動画を2倍速で視聴します。私もやってみましたが、たしかに2倍速でも十分に理解できました。話すのが速い講師の場合でも、1.5倍ならまったく問題ありません。単純に考えて、講義を受ける時間が半分で済むわけで、その分の時間を復習に回せます。
ただし、子どもが小さいうちは、親が多少関与して、勉強に直接関係ない不適切なコンテンツを取り除く配慮は必要になってくるでしょう。
まとめ
今回は、運動や勉強といった分野別に、最適な学びの時期や学びのポイントについてご紹介しました。脳の成長に合った適切な関わり方を知れば、子どもに大きなストレスをかけることなく、効率的にサポートができます。
ぜひ、今回紹介した内容を参考にしていただければ幸いです。