記事の監修
株式会社瞬読 代表取締役山中恵美子
大学卒業後、関西テレビ放送株式会社に勤務。2009年学習塾を開講し3万人の生徒が卒業。
学習効果を上げる方法として速読を取り入れる。これが後の「瞬読」となり生徒が次々と難関校に合格。
2018年瞬読のみの講座が開講し、現在受講生は2,600名を超える。
著書『瞬読』は10万部超えのベストセラーに。その他、TV・ラジオなどメディアにも多数登場し、全国に瞬読を広めている。
今まで簡単にできたことが、思うようにできなくなると、本当に気持ちが落ち込みますよね。知っているはずの名前がすぐに出てこない自分をみると、将来認知症になるのではないかと、不安に感じる人も多いのではないでしょうか。
でも、幸いなことに、脳の衰えを食い止めることは可能です。2019年のアルツハイマー病協会国際会議では、遺伝子要素がある人でも「食事」「運動」「生活習慣」の改善で、発症リスクを大幅に軽減できると発表されました。
将来の認知症リスクを少しでも減らすためにも、今回の記事では、脳の活性化をうながす10の方法を紹介していきます。もちろん、10個すべてに手をつける必要はありません。できるものから、ひとつずつ取り組んでいきましょう。
目次
1:バランスのよい食事をよく噛んで食べる
人間は食事から得られるエネルギーを原料として、体を維持しています。つまり、普段食べている食事の質や量によって、体の良し悪しが大きく変わってくるということです。
したがって脳の活性化を考えるなら、まずはバランスのよい食事をよく噛んで食べることが、とても大事になってきます。
バランスという面では、地中海食が非常にオススメです。地中海食といえば、アメリカの主要機関の調査で、ここ数年ずっと1位に選ばれている人気の食事法。野菜や未精製穀物・魚・良質なオイルなどをバランスよく食べれば、脳はどんどん健康になっていくでしょう。
もちろん日本人なら、日本食がいいという人も多いはずです。塩分を控えめにして、良質な脂質をプラスすれば、日本食でもまったく問題ありません。そのへんは、個人の好みで調整していただければと思います。
なお、脳の主な栄養素は、ブドウ糖です。ご飯など炭水化物からつくられるブドウ糖は、糖質制限ブームの影響もあり、敬遠される傾向にあります。もちろん、摂りすぎはよくありませんが、少なすぎるのも問題です。必ず適量の炭水化物は、取るようにしてください。
2:8時間以上の睡眠を確保
脳を活性化する方法を考えた場合、十分な睡眠時間の確保は非常に重要です。アメリカ神経学会が発行する「Neurology誌」に掲載された研究データ※1には、極端に短い睡眠を続けた人に、脳の一部縮小がみられたと書かれています。
そこであらためて世界の睡眠時間を調べてみると、日本人の平均睡眠時間は、ここ数年いつもワースト1・2位を争っている状態でした。
株式会社ブレインスリープがおこなった「2022年睡眠偏差値調査」によれば、日本人の平均睡眠時間は、6時間43分※2。一方で、OECD加盟国の平均睡眠時間は8時間25分ですから、いかに日本人の睡眠が不足しているかがわかります。
脳は、睡眠中に記憶の振り返りをして、必要のない記憶を整理するといわれています。そういう大事な作業の時間が少なければ、脳は常に乱雑なままです。ぜひ、1日8時間以上の睡眠を目指してください。
※2:NHKの調査では7時間12分。調査方法により結果は異なる
3:有酸素運動で血流をよくする
適度な運動で血流がよくなると、脳(とくに海馬)の働きは活性化するといわれています。スウェーデン・ヨンショーピング大学の研究※によると、最大1時間程度の有酸素運動で、被験者の学習能力や記憶力が大きく向上したそうです。
早い人なら、わずか2分の有酸素運動で効果が出たそうですから、それだけ有酸素運動が脳に与える影響は大きいのでしょう。
なお有酸素運動といっても、激しく追い込んで、心拍数を上げすぎるとかえって逆効果です。あくまでも緩やかに血流を改善するのが目的ですから、ごく軽いウォーキングや体操ができれば十分効果は見込めます。
忙しい人なら、「いつもよりひと駅手前で降りて歩く」「エレベーターは使わない」といった感じで、日常生活の負荷を少しだけ上げてみてください。続けるうちに、脳がスッキリしていく感覚を味わえると思いますよ。
4:料理や家事を積極的に楽しむ
これまでほかの記事で何回もお話ししていますが、料理をすると、前頭葉部や海馬が活発に動き出すことがわかっています。ものごとを判断し記憶する部位が活性化すれば、脳全体の働きがアップするのは当たり前です。
料理が素晴らしいのは、大きく以下の3つの理由があると考えられます。
- 頭と体の両方がバランスよく鍛えられる
- マルチタスクにより考える力がつく
- 栄養バランスの整った食生活
さすがに有酸素運動とまではいきませんが、買い物にいったり、食材や食器を取りにいったりと、料理中は案外体を動かしているものです。
また、お湯を沸かしながら食材を切るといったように、料理中は常に複数の行為を同時におこなっています。このマルチタスクの繰り返しが、脳を思いっきり刺激してくれるんです。
もちろん、外食では取りにくい野菜や食物繊維も、自炊なら大量に摂取できます。普段料理を担当していない人も、ムリをしない範囲で、ぜひチャレンジしてみてください。
◆脳と料理の関係についてはコチラの記事でもお読みいただけます
5:音楽や読書など、好きなことに没頭する時間をつくる
ストレスは、脳の働きを著しく阻害します。なかでも、記憶の定着を判断する海馬は、特別ストレスに弱い器官です。海馬を鍛えてストレス耐性をつけるのも大事ですが、やはりできるだけストレスを与えないように、やさしく海馬をいたわっていきたいですよね。
そういう意味では、音楽や読書など、好きなことに没頭する時間をつくるのは非常によい考えだと思います。
好きな曲や好きな小説に没頭していると、その世界観に魅了されて、現実世界のストレスなんてどこかに吹っ飛んでいきますよね。そうやってストレスを軽減できれば、リセットされた脳は、また活発に動き出しやすくなります。
とくに音楽の力は、本当に侮れません。その効果は、認知症改善を目的として、広く音楽療法が用いられていることでもわかります。
もちろん音楽や読書だけでなく、夢中になれることならなんでもOKです。人にいわれたものではなく、自分に合ったストレス解消法を、みつけていきましょう。
6:週に1度は自然のなかですごす
さまざまな研究により、定期的に自然と触れる時間をもてば、脳は活性化すると証明されています。目安としては、週に1回、最低でも30分程度は確保したいところです。
どうしても忙しい場合は、観葉植物や海や山の画像を5〜10分間眺めるだけでも、十分効果があります。まずはムリをせず、とにかく自然に触れる機会を定期的にもつよう、意識してみてください。
自然が脳や心によい理由のひとつとして、カナダトロント大学のジェニファー・ステラ助教授は、我々が自然から受ける「畏敬の念」をあげています。
一面がオレンジに染まった夕日や息を呑むようなオーロラをみれば、多くの人が自然に対する畏敬の念を感じるでしょう。畏敬の念とは、ようするに自分の常識をはるかに超えたときに感じる、尊敬と驚愕の感情です。
「なんて自然はでっかいんだ。自分の悩みなんてちっぽけだな……」こんな風に感じられたら、もうこっちのもの。知らないうちにストレスは小さくなり、脳の働きは正常な状態に戻っていくはずです。
7:友人や家族とのコミュニケーションを大切に
ここまで何度もお伝えしているように、脳の働きを活性化するには、まず脳に与えるストレスを減らさなければなりません。ストレスの原因は、お金・健康・人間関係のどれかに当てはまるケースがほとんどです。
なかでも、友人や家族といった身近な人たちとのトラブルは、脳にとてつもないストレスを与えます。
お金や健康にトラブルがあっても、理解して寄り添ってくれる人がいれば、案外乗り切れるものです。しかし孤独は、私たちのメンタルをボロボロにし、トラブルに立ち向かう気力を奪っていきます。
そういう悲しい状況に陥らないためにも、日頃から友人や家族を大切にして、いつも楽しくすごせるように努力しておきたいですね。
8:脳トレで脳に刺激を与える
手軽に脳を鍛えるなら、やはり脳トレは欠かせません。ただ、脳トレの効果については、少々疑問の目でみている人も少なくないでしょう。実際のところ、脳トレの脳機能回復については、賛否両方のデータが存在している状態です。
とはいえ、脳トレの効果を証明するデータはたくさんあります。なによりもやっていて楽しいですから、あまりむずかしく考えずに、気に入った脳トレにどんどんチャレンジしてみてください。
なお脳トレは、大きく頭脳系と作業系にわかれます。気軽に座ってできる脳トレがよければ、パズルや将棋などはどうでしょうか。少し手を動かしたいというなら、料理や絵画なんかもオススメです。
具体的な脳トレについては、以下の記事で詳しく紹介しています。よかったら、そちらの記事も読んでみてください。
◆オススメの脳トレについてはコチラの記事でもお読みいただけます
9:新しいことにチャレンジしてみる
脳を活性化する方法を探しているなら、特別むずかしいことを考える前に、まずはなにか新しいことにチャレンジしてみてください。
毎日同じことを繰り返していると、脳は考えることを放棄してしまいます。その点、新しいことにチャレンジすれば、わからないことばかり。新しいことに対応しようと、脳は一生懸命動き出し、ドーパミンが適度に分泌されます。
ドーパミンは、過剰に分泌されると依存症を引き起こす可能性もありますが、適量であればやる気や集中力をもたらしてくれる優れた物質です。
なお新しいことならなんでもOKですが、それが好きなことなら、ドーパミンはより効率よく分泌されます。もちろん最初は、通勤路を変えてみるなど、ごく簡単な変化で十分です。まずは、できることから、積極的に生活パターンを変えてみましょう。
10:人生の目的を明確にして、脳を苛む不安要素を消す
現代人の多くは、正体のみえない漠然とした不安に苛まれています。人生100年時代がはじまり、労働期間の長期化が確実視される今、老後の不安も以前より大きくなってきました。
また近年、ブロックチェーンやAIのような社会を根本から変えてしまう技術が、立て続けに出現しています。人間誰しも、経験したことのないものに対しては、恐怖を感じてしまうもの。
こういった先のみえない不安に対抗するには、人生の目的を明確にして、これからの行動指針を決めてしまうのが一番です。
社会がどう動こうと、「自分はこうしたい」という目標さえ明確なら、不安に飲み込まれることはありません。もちろん、どんなことをしても、不安が完全に消えることはないでしょう。でも、行動指針が決まれば、あとは毎日やることに集中するだけです。
「やることを決めてそこに日々集中する」そう考えれば気持ちはスーッと楽になり、脳が本来のパフォーマンスを発揮しやすくなります。
まとめ
今回は、脳を活性化する方法として、10の提言をしました。どの方法も、脳をしっかりと活性化してくれるものばかりです。10個すべてに取り組む必要はないですが、できれば半分くらいを目標に、チャレンジしてみてください。