記事の監修
株式会社瞬読 代表取締役山中恵美子
大学卒業後、関西テレビ放送株式会社に勤務。2009年学習塾を開講し3万人の生徒が卒業。
学習効果を上げる方法として速読を取り入れる。これが後の「瞬読」となり生徒が次々と難関校に合格。
2018年瞬読のみの講座が開講し、現在受講生は2,600名を超える。
著書『瞬読』は10万部超えのベストセラーに。その他、TV・ラジオなどメディアにも多数登場し、全国に瞬読を広めている。
人生は、判断の連続です。小さなことから人生を左右する重大な問題まで、常に判断を繰り返しながら生活しています。
もし、「最近なんかうまくいかないな」とか「なぜあんなことをしてしまったのだろう」と感じることが増えたとしたら、それは脳トレで判断力を鍛え直すタイミングなのかもしれません。
今回は、最初に判断力が衰える原因を解説します。そのあとで、判断力改善にピッタリな脳トレを紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
まずは判断力が衰える原因を明確にする
脳トレに取り組んで判断力を鍛えるなら、まず判断力が低下する原因をしっかり理解しておく必要があります。原因がわからないと、脳トレの効果が実感できませんからね。
判断力が衰える主な原因は、以下の4点です。
- 前頭葉の機能低下
- 脳疾患に代表される病気の影響
- 体調悪化によるマイナス思考
- 悩みやトラブルによる集中力の低下
ひとつずつ解説します。
前頭葉の機能低下
脳の約30%を占める前頭葉は、言語・運動・感情のコントロールをおこなう、非常に重要な役割を担っています。判断力はこの前頭葉と大きく関わっていて、前頭葉の機能が低下すると、正しい判断を下せない可能性が高いです。
もちろん、影響を受けるのは判断力だけではありません。「うまく喋れない」「体を思うように動かせない」「いつも重苦しい気分になる」といった弊害を引き起こし、日常生活に大きな支障を及ぼします。
ただ前頭葉の機能低下は、脳へ刺激を与えて神経ネットワークを拡大できれば、かなりの確率で予防できるといわれています。
そのためには、できるだけルーティンワークを回避して、常に新しい刺激を脳に与え続けるのが一番です。そういう意味でも、脳トレは前頭葉を鍛えるよいきっかけになるでしょう。
◆前頭葉を鍛える方法については、コチラの記事でお読みいただけます
脳疾患に代表される病気の影響
先ほどの前頭葉の衰えとも共通する話ですが、脳疾患のような病気によっても、判断力は著しく低下します。判断力に大きな影響をおよぼす脳疾患といえば、やはりアルツハイマー病や前頭側頭葉変性症といった認知症でしょう。認知症が進行すると、もはや判断力どころではありません。
認知症になれば、いつ以下のような状態になるか、誰にもわからないのです。
■ ものごとをすぐに忘れてしまう「記憶障害」
■ 自分のいる場所や時間がわからなくなる「見当識障害」
■ 計画性や論理性のある行動ができない「実行機能障害」
■ うまく話せない・人やものを識別できない「失語・失認」
■ 理解に時間がかかり適切な判断を下せない「判断力低下」
いったん認知症が発症してしまえば、いくら脳トレをしても元の状態に戻すことは不可能です。
脳トレの役割は、脳機能を鍛えて、認知症のような症状を予防すること。そのことを忘れずに、ぜひできるだけ早い段階から脳トレに取り組んでください。そうすれば、脳疾患による判断力低下のリスクは、大幅に軽減できるはずです。
◆認知症予防にオススメの脳トレについては、コチラの記事でお読みいただけます
体調悪化によるマイナス思考
足が痛い・体がだるい・なんとなく疲れが取れないといった、いっけん軽微な体調の変化によっても、判断力は大きな影響を受けます。
単純に考えて、体調が悪ければそちらに気を取られてしまい、正常な判断などできるわけがありません。本当はすぐにでも対応しなければならないのに、肩が凝って偏頭痛に苦しんでいれば、つい後回しにしてしまいます。
そして残念なことに、体調が戻らない限り、自分の間違った判断にいつまでも気づけないのです。だから、気づいたときにはすでに手遅れの状態であり、悪い結果が一気に押し寄せてきます。
また、体調が悪いと、どうしても極端な発想になりがちです。本当は折衷案もあるのに、じっくりと解決策を考える余裕がありません。しかし、あまりにも白黒はっきり決着をつけすぎると、たいていなんらかの問題を引き起こすものです。
そして、こういった考え方が日常化してくると、「あんなことするんじゃなかった」「こんなジメジメした性格だから嫌われるんだ」と、マイナスのループから抜け出せなくなります。
悩みやトラブルによる集中力の低下
悩みやトラブルでストレスの多い状態が続くと、体調の悪化と同様に、やはり判断力は低下します。問題が起きてもすぐに解決できれば、判断力の低下を引き起こすまでには至らないのですが、トラブルが長引くと少々やっかいです。
長期間悩みを抱えた状態が続くと、肩こり・頭痛といった肉体的な症状や、吐き気・睡眠障害のような心の不調を引き起こします。前述のとおり、体調が悪ければ正常な判断ができず、さらに状況は悪くなっていくでしょう。
いったん、こういった負のループに巻き込まれてしまうと、自力での脱出はかなり大変です。さらに長期化すれば、やがてうつ病や自律神経失調症のような重篤な症状を引き起こしかねません。
もし悩みやトラブルで判断力の低下を自覚しているなら、友人や家族・会社の上司など、誰か信頼のできる第三者に相談するのを強くオススメします。もし体調面に問題があるなら、なるべく早い段階で、専門のドクターに相談してください。
判断力改善にオススメの脳トレ4選
判断力は、ある意味場数がすべてです。むずかしく頭で考えるよりも、実際に判断する機会を増やしたほうが、間違いなく判断力は磨かれていきます。今回は、やっているうちに自然と判断力がアップする、オススメの脳トレを4つ紹介します。
パズル
※参考:Newton別冊『確率パズル』 (ニュートン別冊) | |本 | 通販 | Amazon
判断力を鍛えるには、小さな決断を数多くこなすのが一番です。そういう意味でいうと、こまかい作業を繰り返すパズルは、非常にオススメの脳トレといえます。
パズルにもさまざまな種類があり、どのパズルに取り組むかによって効果は異なります。もちろんどのパズルでも、しっかり取り組めば、判断力はアップするでしょう。でも判断力によりフォーカスするなら、ナンプレや確率・統計パズルのような、数字を使ったパズルがオススメです。
上図は、雑誌Newtonの別冊『確率パズル』に掲載されている、確率パズルのサンプル画像です。条件を提示されて、そのゲームを受けるべきかどうかを問われています。こういった確率が関係する問題は、実際に両方の条件を検討しながら、じっくりと判断をしないと解けません。
これまで数字を使ったパズルを敬遠していた人には、間違いなく正しい判断を下すよい訓練になるはずです。
麻雀
※参考:一般社団法人日本健康麻将協会 「健康マージャン」開催会場支援のクラウドファンディングをスタート! | 麻雀新聞
もし4人メンバーを集められるなら、ぜひ麻雀に挑戦してみてください。麻雀は、当たり前ですが、相手のいるゲームです。そのため、相手の捨て牌や場の流れを読み、臨機応変に作戦を変更しないとゲームには勝てません。
元々麻雀は、非常にギャンブル性の高いゲームでした。しかし今や、「お金をかけない」「酒とタバコはNG」という、いわゆる「健康麻雀」を楽しめる場所がたくさんあります。
人と話しながら和気あいあいと麻雀をすれば、一気にストレスなど吹っ飛んでいくでしょう。また麻雀には、点数の計算・相手との駆け引き・指先を使うなど、脳トレの要素がこれでもかというくらい揃っています。
なお、どうしても人数が集まらない場合は、麻雀アプリが便利です。さすがにおしゃべりはムリですけれども、コンピューターと戦いながら判断力を鍛えていきましょう。
料理
これまで別記事で何度も紹介しているように、料理は究極の脳トレだと思っています。もちろん料理をしていると、判断力が必要な場面もたくさんありますよ。
まず料理の素晴らしいのは、頭と体を両方使うところです。「レシピを考える」「料理の手順を決める」「明日の献立を決める」など、考えることは山ほどあります。しかも、料理の最中には、思いもよらないハプニングがよく発生します。
「あっ、みりんがなかった……代わりに砂糖を多めに入れよう」
「息子の友だちが遊びにきたから、夕飯はたっぷり食べられるカレーに変更しようかな」
こういったイレギュラーな状況は、あなたの判断力を思い切り鍛えてくれるはずです。
また料理をすると、思っている以上に体を動かします。鍋に水を汲んでお湯を沸かす間に、材料を切って炒めたり煮たりと、休む暇がありません。そもそも、買い物にいかないと食材が手に入りませんからね。
それに、料理をすれば、自分の好きな料理が食べられます。毎日とはいいませんが、まずは週に2〜3回料理に挑戦してみてはいかがでしょうか。
軽めの運動
判断力に直接関係するわけではないのですが、すべての脳トレのベースになるのが、適度な運動です。判断力や集中力といった精神面のパフォーマンスは、健康な肉体があってはじめて成立します。この辺は、判断力が衰える原因でお伝えしたとおりです。
とはいえ、あくまでも脳トレが目的であれば、ハードな筋トレや激しい有酸素運動は必要ありません。30分程度のウォーキングやストレッチを、週に2〜3回継続できれば運動の強度は十分です。
下半身を中心に運動すれば、ふくらはぎのポンプ効果により、全身の血流が改善されます。そうすれば必然的に脳の血流も改善され、血液中に含まれるブドウ糖(脳の栄養源)と酸素が、たっぷりと脳に供給されるというわけです。
時間のない人は、「ひと駅前で降りる」「5階以下ならエレベーターはなるべく使わない」など、日常生活に運動を取り入れると効率的に脳トレができます。
脳トレで判断力低下を予防する際のポイント
最後に、脳トレで判断力低下を予防する際のポイントを5点紹介します。どれだけ真剣に脳トレに取り組んでも、大事なポイントを外せば思ったような効果は期待できません。
自分なりの判断基準を明確にしておく
判断力のない人は、ほぼ全員明確な判断基準をもっていません。基準が決まっていなければ、判断に迷うのも当たり前の話です。
したがって脳トレとは別の話として、まず自分なりの判断基準を設定するのが、最優先事項になります。もちろん、判断基準を定めるには、その判断基準が適正かどうかを見極める目が必要です。
たとえば美味しいコーヒーを飲みたいなら、「苦味は強めで酸味抑えめが好み」といった自分なりの評価基準がないと、味を評価できませんよね。コーヒーは嗜好品なので、評価基準は100%自分の主観で構いません。
しかし仕事や人間関係においては、当たり前ですが常に相手がいます。いくら自分の評価が正しいと思っていても、そこに客観性がなければ、相手から受け入れてもらえない可能性が高いです。
相手にも、その人なりの判断基準がありますからね。自分なりの判断基準は大事ですが、客観性のある適切な基準になっているかどうか、常に問いかける姿勢は必要だと思います。
知識量を増やして正しい判断を
前述のとおり、自分の判断基準を定期的にチェックするのは、非常に重要です。自分が偏った思想のもとに判断していないか、いつも自問するくらいでちょうどいいと思います。
とはいえ、判断基準のチェックにはそれなりのバックボーンがないと、チェック機能が働きません。だから、定期的に情報収集をして、自分のなかの判断材料を増やしていく必要があります。
社会人なら、おそらく経済ニュースや時事ニュースは、日々チェックしているはずです。もし可能であれば、これからは海外の情報を英語で確認できるようにしておくと、より精度の高い情報が入手できます。日本と海外のマスコミは、かなり報道内容が違いますからね。
また、ネットやテレビだけでなく、もっと本を読むべきです。本にもバイアスはかかっていますが、知りたいジャンルの本を10冊も読めば、よい面も悪い面も自然と判断できるようになります。
固定観念はアウト
判断力を高めるうえで、もっとも注意すべきは、固定観念です。先ほど「自分なりの判断基準をもつ」といいましたが、固定観念があると適切な判断基準を設定できません。
なぜならば、固定観念には、客観性が著しく欠けているからです。そもそも固定観念とは、自分の経験から作り上げられた思い込みです。「女性は家事をするもの」「60歳になれば定年退職しなければならない」よく耳にする話ですが、これらは完全な固定観念といえます。
共働きが増えた現在では、男性も家事をするのが当然という考えが増えてきました。60歳で退職する人は多いとはいえ、70歳が定年の会社もあるし(少ないですけどね)、そもそも30代で起業したっていいわけです。
このように、固定観念は、よくミスリードを引き起こします。自分の判断が本当に正しいのか、必ず振り返ってみてください。
さまざまなコミュニティと関係をつくる
「自分の判断基準に客観性があるか」固定観念の有無を確認したいなら、ぜひさまざまなコミュニティに参加してください。毎日、自宅と会社の往復では、判断基準が偏っても当然です。
その点属性のまったく異なる複数のコミュニティに参加すれば、それぞれの価値観を比較できるので、偏った固定観念に凝り固まる危険性を減らせます。
とはいえ、新しい出会いは楽しい反面、気を使って面倒だという人も少なくないでしょう。であれば、まずは近所の集まりやしばらく連絡を取っていない古い友人に声をかけてみるのがオススメです。
そうやって新しい出会いに慣れてきたら、あらためて趣味のサークルや資格の勉強会など、自分の好きな集まりに参加してみればいいと思います。
もちろん、コロナウイルスの影響で直接参加するのは面倒なことも多いです。でも、今はオンラインでのやりとりも当たり前になりました。もしかすると、直接顔を合わせてのやり取りではないほうが、気軽によい関係がつくれるかもしれませんね。
まとめ
判断力の低下には、必ずなんらかの原因があります。脳トレに取り組む前に、まずはしっかりと原因を押さえておきましょう。原因がわかれば、あとはその原因を解消(軽減)してくれる脳トレを継続するだけです。
もちろん、今回紹介した脳トレのポイントを忘れずに実践してくださいね。そうすれば必ず脳トレが判断力の向上を助けてくれるはずです。