
記事の監修
株式会社瞬読 代表取締役山中恵美子
大学卒業後、関西テレビ放送株式会社に勤務。2009年学習塾を開講し3万人の生徒が卒業。
学習効果を上げる方法として速読を取り入れる。これが後の「瞬読」となり生徒が次々と難関校に合格。
2018年瞬読のみの講座が開講し、現在受講生は2,600名を超える。
著書『瞬読』は10万部超えのベストセラーに。その他、TV・ラジオなどメディアにも多数登場し、全国に瞬読を広めている。
私たちの脳は、大きく「右脳」と「左脳」にわかれており、それぞれ異なる役割と特徴があります。独創的なアイディアに溢れるアーティストと、論理的に物事を進めるビジネスパーソンの違いは、右脳と左脳の働きに隠されているのかもしれません。
この記事では、「右脳と左脳の違い」「右脳と左脳の力を発揮するためのコツ」などについて、わかりやすく紐解いていきます。
目次
右脳と左脳の違いとは?
冒頭でもお話ししたとおり、大脳は大脳縦裂とよばれる深い溝によって、右脳と左脳にわかれます。それぞれ得意とする分野は異なり、そのときに必要な能力をうまく使いわけて、私たちはものごとに対処しているのです。
左右両方の脳をバランスよく鍛えていく前に、まずは右脳と左脳の働きをしっかりと理解しておきましょう。
◆右脳と左脳の違いについては、コチラの記事でもお読みいただけます
「論理的思考」に代表される左脳の主な働き
私たちが、論理的にものごとを考えられるのは、論理的思考を得意とする左脳のおかげです。以下に、左脳の主な働きをいくつか挙げておきます。
- 言語の理解
- 計算力
- 論理的思考
- 分析力
- 時間感覚
上記のなかでも、とくに重要なのが言語に関する能力でしょう。子どもが問題文を読んで解答できるのも、社会人が文献を調べてビジネスレポートを作成できるのも、物事を論理的に考えそれを文章にまとめる左脳の機能が正常に働いているからです。
言葉を理解する「ウェルニケ野」と話す・書くを司る「ブローカ野」は、どちらも左脳(2%の人は右脳にある)にあります。そのため、ウェルニケ野やブローカ野に障害が起これば、なんらかの形で言語に障害が発生します。
今回は言語を中心に紹介しましたが、ほかにも「計算力」や「時間感覚」「分析力」など、左脳がなければ普通の日常生活は送れません。
直感の源となる右脳の役割
論理的な思考や言語・計算などを司る左脳に対して、主に感性に関係する能力をコントロールしているのが右脳です。そのため、左脳は「言語脳・論理脳」、右脳は「感覚脳」ともよばれています。
右脳の主な働きは、以下のとおりです。
- 直感的思考(ひらめき)
- イメージ変換
- 創造性
- 想像力
- 全体把握能力
左脳と違って、たしかに感覚的な能力が多いですよね。そのため、音楽やアートに取り組む際には、左脳よりも右脳が中心になって活動しています。
また、言葉ではうまく表現できない「雰囲気」や「ムード」を感じ取る能力も、右脳と密接に関係しています。もちろん、過去に蓄積された経験や知識(左脳)があるからこそ、今どういう状況なのか「直感」が働いてくれるわけです。
このように、左脳と右脳はそれぞれ別の働きをもっていながらも、相互補完しながら、バランスを保っています。左脳と右脳の連携については、このあと詳しく解説します。
左脳と右脳の関係性について
前述のとおり、ほとんどの人は、ものを書いたり話したりするときに左脳を使います。一方で音楽を聴いたりクリエイティブな活動をしている間は、右脳が大活躍しているのです。
しかし、これは便宜上わかりやすく説明しているだけで、実際には必要に応じて左右の脳が適時切り替わりながら稼働しています。
左右の脳は完全に独立しているわけではなく、約2億本もの神経細胞の束「脳梁」で、繋がっているのです。そして、この脳梁を通じて、左右の脳は頻繁に情報交換をおこなっています。
たとえば、絵を描いている間中、右脳だけが働いているわけではありません。対象物を観察する・過去の記憶から必要な情報を取り出す・絵のバランスを確認するといった作業をしている間は、左脳が主に働いています。
小説を読んでいるとき、左脳は言葉の意味や文法を処理し、右脳は物語の全体像や背景の雰囲気を感じ取ります
このように左脳と右脳はそれぞれ異なる強みを持っており、脳梁を介して互いに情報を共有し、最適な反応を生み出してくれるのです。
右脳派・左脳派の真相
ネットで「右脳・左脳」と検索すると、よく「右脳派・左脳派、あなたはどっち?」といった内容の情報がヒットします。非常に誤解を生みやすいトピックなので、右脳速読の指導者として、この点を少し深掘りしておきたいと思います。
人間は右脳派と左脳派にわかれるというのは本当なのか?
「私は右脳派だからクリエイティブな仕事が得意」とか、「左脳派だから論理的な思考が得意」といった表現を耳にすることがありますよね。たしかに、右脳は直感・感情・芸術的才能と関わりが深く、左脳が論理的思考や言語能力をコントロールしているのは事実です。
しかし実際のところ、人間の脳を単純に「右脳派」と「左脳派」に分類するのは、かなり無理があります。先ほどもお伝えしたように、左右の脳は脳梁で繋がっていて、互いに連携を取りながら活動しているわけです。
誰かと話しているときに、左脳が主に働き、話す内容を理解します。しかしそれと同時に、相手の表情や声のトーンから、右脳が感情の動きを感じ取っているのです。
ユタ大学のジェフ・アンダーソン博士は、研究の結果※、「左右どちらか一方にしかない機能があるのは事実だが、左脳と右脳のどちらが強いという傾向はない」と述べています。
私たちの脳は、その状況に応じて左右それぞれがうまく機能するようにできているわけで、右脳派・左脳派というラベリングは意味のない行為であるといえるでしょう。
※参考:Think You’re “Right-Brained” or “Left-Brained?” Think Again. | University of Utah Health
性格や仕事を右脳派か左脳派で分類することの問題点
「クリエイティブな人は右脳が活発」や「論理的な仕事は左脳派の人にお任せ」といった分類方法を信じている人は、意外に多いものです。もちろん、左右の使用頻度が偏っている人もいますが、人間の脳は左右の機能がバランスよく働く状態が正常です。
前述のユタ大学の研究データからもわかるように、左右どちらか一方が強いというエビデンスはありません。こういった大前提を踏まえて考えると、右脳派・左脳派という区分けで自分の適性を決めつける行為は、あまりよくない状況といえます。
もしあなたが「私は本を読むのが苦手」と思っているなら、それは右脳派だからではなく、単純に本を読む行為に慣れていないだけです。また、楽器演奏が得意だからといって、左脳の能力が劣っているとも限りません。
人々を単純な「右脳派」「左脳派」のラベルで分類してしまうと、その人の能力や可能性を著しく狭めてしまいます。
もちろん、大まかな傾向の把握として、右脳派・左脳派という考え方が役立つケースもあるでしょう。ですが、こういった分類方法を絶対的な基準とするのは、やはりやめておくほうが無難です。
右脳と左脳のバランスが重要
私たちの脳は、右脳と左脳で、それぞれ特性が異なります。人によっては、左右どちらか一方の能力に、使用頻度が偏っている場合もあるでしょう。
だからといって、使用頻度の少ない方(と自分では思っている)の能力を軽視するのは、大きな機会損失に繋がります。自分でコントロールできるものではありませんが、それでもできるだけ左右バランスよく使う意識をもってください。
ここまで何度もお話しているように、右脳と左脳がバランスよく連携している状態こそ、脳の理想形です。
たとえば、ビジネスの新しいアイデアを生み出すときには、まず右脳が「ん?これはいいかも……」とひらめきます。しかし、そのままではただのアイデアの種です。今度はその種を左脳が論理的に分析して、数字に落とし込み、実現性を煮詰めていきます。
このように、左右のバランスを心がければ、脳のパフォーマンスはどんどんよくなっていくでしょう。
右脳と左脳の力を最大限に引き出すコツ
右脳と左脳の切り替えは、無意識におこなうものであり、自分でコントロールするのは基本的に不可能です。ただし、両方の能力をバランスよく利用する意識があれば、自然と左右のバランスは整ってきます。
脳トレーニングで意図的に脳を刺激
脳を鍛えるなら、やはり脳トレがもっともオススメです。鍛えたい機能に対応した脳トレを選べば、遠回りせずに効率よく脳をレベルアップできます。
一般的に脳トレといえば、数字や漢字のクイズ、あるいはナンプレのようなゲームをイメージする人が多いでしょう。しかし、ウォーキングや体操のように、体を動かす作業も脳によい影響を与えてくれます。
具体的な脳トレの選び方としては、右脳と左脳という観点ではなく、鍛えたい能力に対応した脳トレを選ぶのが基本です。とくに高齢者のかたは、衰えの気になる認知機能を改善してくれる脳トレを選ぶと、認知症の予防にも繋がります。
たとえば、記憶力の衰えが気になるなら、神経衰弱のようなメモリー系ゲームがオススメです。言語能力を改善したい人は、四字熟語クイズや読書などもいいですね。
なお、脳トレの定番「間違い探し」「パズル」「迷路」など、ほとんどの脳トレはアプリでも利用できます。毎日のちょっとしたスキマ時間を利用して、脳の健康を維持していきましょう。
◆認知機能別オススメの脳トレアプリについては、コチラの記事でお読みいただけます
仕事や勉強に左右両方の能力を活かす
仕事や勉強を効果的に進めるためには、左右両方の能力をバランスよく使用する感覚が求められます。
たとえば、さまざまなビジネスシーンを考えてみましょう。ビジネスプランの立案や問題解決時には、「論理的思考」を代表とする左脳の力が大きく求められます。
一方、新しいアイディアを出す際や漠然とした情報を具体化していく場面になると、創造力や全体像把握の得意な右脳の出番です。さらに、顧客との交渉やチーム内の調整のように、コミュニケーションが必要とされる場面では、右脳の共感力や感受性がとても役立ちます。
しかし多くの現代人は、どうしても結果を早急に求められるため、左脳に偏っている人が非常に多いです。そういうときは、意識して右脳(普段右脳を使っている人は左脳)を使うようにしてください。
普段数字を使って分析をしている人は、アイデア出しを100本やってみるのです。逆にいつも右脳を使っているなら、数字を用いて徹底的に分析してみましょう。そうやっていくうちに、自然と左右バランスよく脳を活用できるようになっていくはずです。
健康にも効果アリ!脳のバランスを整える方法
右脳と左脳がバランスよく稼働しているという状況は、すなわち体全体が健康であるという証明でもあります。おそらくストレスもあまり感じることのない、非常に穏やかな日常を過ごせているはずです。
ただしこういったバランスは、ちょっとしたことがきっかけで、すぐに崩れてしまいます。バランスの狂いが大きくなり、さらに長期化すれば、メンタル的にトラブルが起きる可能性も高いです。
健康を維持するためにも、定期的に以下のような方法に取り組み、脳のバランスを整えていきましょう。
- メディテーションや深呼吸
- 1回30分週に2〜3回程度の有酸素運動
- 趣味やクリエイティブな活動
- バランスのよい食事
- 7〜8時間の睡眠
- 自然との触れ合い
上記はどれも重要なものばかりですが、左脳偏重の自覚がある人は、ぜひ自然との触れ合いの時間をつくってください。自然はストレスを軽減してくれるほかに、副交感神経の活動を促進してくれる働きもあります。
そのほかの方法については別記事で解説しているので、ぜひ参考にしていただければと思います。
◆自然と触れるメリットについては、コチラの記事でお読みいただけます
◆睡眠や食生活と脳の関係については、コチラの記事でお読みいただけます
まとめ
右脳は直感や感覚、左脳は論理的思考と、右脳と左脳にはそれぞれ違う役割があります。だからといって、人間を単純に「右脳派」「左脳派」とラベルづけするのは、あまり意味がありません。
大切なのは、左右の脳をバランスよく使用し、日常生活や仕事に活かすことです。今回の内容を参考に、ぜひ左右のバランス調整に取り組んでみてください。