記事の監修
株式会社瞬読 代表取締役山中恵美子
大学卒業後、関西テレビ放送株式会社に勤務。2009年学習塾を開講し3万人の生徒が卒業。
学習効果を上げる方法として速読を取り入れる。これが後の「瞬読」となり生徒が次々と難関校に合格。
2018年瞬読のみの講座が開講し、現在受講生は2,600名を超える。
著書『瞬読』は10万部超えのベストセラーに。その他、TV・ラジオなどメディアにも多数登場し、全国に瞬読を広めている。
ある程度オフィシャルな会議なら、必ず会議の内容を記録した「議事録」を作成するはずです。議事録は今後の指針となる、非常に重要な役割を担っています。しかし、その重要な議事録の書き方をきちんと教えてもらったことのある人は、そう多くないはずです。
そこで今回は、議事録を書く際の基本的なルールやポイントなどについて、詳しく解説します。議事録の書き方に不安を感じている方は、ぜひ最後までお読みください。
目次
議事録と一般的なメモの違い
情報を文字として残す行為自体は、議事録も一般的なメモも変わりません。しかし、メモを取る目的が大きく異なります。
一般的なメモは、タスクやアイデアを、忘れないように残しておくためのものです。あくまでも利用するのは書いた本人だけというのが基本なので、内容や書式は自由に選択できます。
一方、議事録は会議で話し合われた内容を関係者全体で共有し、情報の統一や意思決定をサポートするための公式な記録です。そのため、議事録には正確さと客観性が求められます。
また、議事録はいわゆる「文字起こし」とは異なり、すべての発言を記録する必要はありません。発言をそのまま書き起こすと読みにくくなってしまいます。要点だけを簡潔に整理し、第三者が読んでも内容を理解できるように記録するのがポイントです。
両者の違いをひと言でいえば、メモは「自分のための記録」、議事録は「みんなのための記録」といった感じでしょうか。この根本的な違いを理解しておかないと、非常に読みにくい議事録を書いてしまう可能性があります。
議事録に書くべき5つの項目
会社ごとにこまかい違いはあるにせよ、議事録として残すべき内容はおおよそ決まっています。今回は、議事録に書くべき項目を5つにわけて紹介します。
1.会議の基本情報(会議名・開催日時など)
まずは、以下に挙げた会議の基本情報をきちんと記入します。
- 会議名
- 開催日時
- 開催場所
- 参加者
- 会議の形式(対面・オンライン)
テンプレート化された議事録を使用しているなら、当然上記の項目がすでに用意されているはずです。もし、決まった書式がないのであれば、必ず上記の項目を記入してください。会議の内容と直接関係ありませんが、基本情報の記入漏れがあると、後日検索するのが困難です。
なかでも、参加者の記入は重要です。誰がどのような立場で参加したのか、参加責任を明確にするためにも、忘れずに記入しておきましょう。
また、オンライン会議の場合は、会議ツールのURLや会議ID、パスコードなども記録しておくと便利です。
2.会議の目的や議題(進捗確認・新商品の企画など)
打ち合わせの詳細を記入する前に、会議の目的と議題を箇条書きにまとめておきます。アジェンダ(会議の進行予定表)が事前に用意されているなら、その内容を記入すればOKです。(事前に記入しておくと、議事録の作成が楽です)
アジェンダがない場合は、冒頭に、「◯月発売予定の新商品の販売方針を決定して全支社に通達する」といった、会議の目的を書いてください。目的が提示されることで、その会議の役割が明確になります。
そのあとに、その日打ち合わせした議題を列記しておきます。
- マーケティング戦略の決定
- キャンペーン期間
- 支店別販売目標価格
上記のように、箇条書きおよびナンバリングをしておくと、情報の整理がスムーズです。
3.各議題の詳細(議題名・発言内容など)
言うまでもなく、この各議題の詳細のパートが、議事録の中核部分になります。まず議題名を書き、話し合いの内容を整理して記録しましょう。
発言内容や決定事項のみを記載しがちですが、できるだけ発言者の名前も記入しておきたいところです。
- 中部支社の売上目標金額◯◯円(斎藤部長)
- 営業ツール◯◯から△△に変更(高橋)
といった具合に名前が書いてあると、会議に参加していない人があとから詳細を打ち合わせする際に役立ちます。
また、全員が合意した決定事項だけでなく、次回に持ち越された課題なども、議題ごとに明確に書き出しておくとよいでしょう。
もちろん、発言内容を逐一記録する必要はありません。第三者が読んでも理解できるよう、いかにわかりやすくまとめられるかが、議事録作成者の腕の見せどころです。
4.決定事項と具体的なアクションプランの記録
各議題の詳細パートに記載された決定事項を、あらためてこのセクションにまとめておきます。詳細パートにはさまざまな議論内容が混在しているため、決定事項だけを別途まとめておくと、わかりやすい議事録になります。
「〇〇プロジェクトの予算を△△円に確定」といった形で、会議で合意された内容を簡潔かつ正確に記載しておきましょう。
また、決定事項とは別に、実際のアクションプランについても記入しておきます。たとえば、「予算案の配布用資料を来週金曜までに作成(担当:鈴木)」のように、担当者と期限をセットで記載するのがポイントです。
さらに、未解決の課題や次回会議へ持ち越す議論もあわせて記載しておくと、次回会議の準備が楽になります。ただし、あまり項目が多くなると読みにくくなるため、それぞれ別の項目にわけて書くほうがよいかもしれません。そのへんは、状況に応じて自由にアレンジしてください。
5.補足事項・質疑応答、次回の会議予定など
議事録の最後に、補足事項や質疑応答、次回の会議予定などを記入します。補足事項として、注意点や会議中に共有された資料情報、参考URLなどを残しておくと、詳細を確認する際にとても便利です。
また、会議中に質問が多かった点については、質疑応答として簡単にまとめておくとよいでしょう。疑問点とその回答を記載しておけば、会議に参加していない人もスムーズに議事録を読み進められます。
さらに、次回の会議予定が決まっていれば、忘れずに記載しておいてください。「次回会議:2024年12月28日(木)15:00〜16:00、オンライン、議題:進捗確認と営業方針の見直し」のように、次回の議題まで書いておけば、次の会議の参加者にスムーズな橋渡しができます。
知っておくべき議事録の基本ルール
議事録に記載する項目がわかったところで、今度は議事録作成の基本的なルールを4つご紹介します。
テンプレートに沿って記入する
もし議事録のテンプレートが用意されているなら、必ずテンプレートに沿って議事録を作成してください。個人の書き方に任せてしまうと、人によって議事録のクオリティにばらつきが発生します。
その点テンプレートが決まっていれば、「会議の基本情報」「議題」「決定事項」「アクションプラン」「次回会議情報」といった項目に沿って記入すればいいので、そういった個人差が生まれにくいです。当然、情報の抜け落ちも最小限に抑えられるでしょう。
また、フォーマットが統一されていると、読む側の負担が少なくて済みます。書かれている内容と場所が明確なので、あちこち読み散らかす必要がないからです。
なお、議事録作成は、デジタルツールとの相性が抜群です。テンプレートのカスタマイズや社内での共有性を考えると、手書きよりもデジタルツールによる議事録作成をおすすめします。(会議中の下書き自体は、手書きのほうが楽かもしれません)
ポイントだけを簡潔に記載
議事録を作成する際は、ポイントだけを簡潔に記載する意識が重要です。会議中のすべての発言を詳細に記録しようとすると、内容が膨大になり、見返したときに必要な情報が埋もれてしまいます。同時に、手に意識が向いてしまい、肝心の内容を見失ってしまう可能性も高いです。
そういった状況を回避するためにも、発言や議論をうまく要約して、ポイントだけを簡潔に記録してください。簡潔にという意味では、箇条書きの活用も必至です。文章として残そうとすると、どうしても文字量が多くなります。
ズラズラと長文が並んだ議事録は、会議レポートのようになってしまい、かなり読みにくいです。議事録は「簡潔さ」と「わかりやすさ」が命です。誰が読んでも必要な情報を素早く把握できるよう、過不足のない記録を心がけましょう。
◆ポイントを絞ってメモするメリットについては、コチラの記事でもお読みいただけます
事実のみを記録する
議事録には、事実のみを記録するのが大原則です。個人的な意見や主観的な解釈を盛り込んでしまうと、読んだ人に誤解を与えてしまう可能性があります。納得のいかない結論が出た場合など、どうしても自分の意見を反映させたくなるものです。その気持ちはよくわかります。
しかし、議事録は会議の記録が目的です。間違った方向へミスリードを起こしかねない表現は、避けなければなりません。誤解を避けるためにも、「誰がなにを発言して」「どのように決定されたか」スペースに余裕があれば、そういった過程もしっかりと残しておきたいところです。
いずれにせよ、議事録は、会議のレポートではありません。会議で議論された必要事項を淡々と記録しておけば、議事録の役割はそれで十分です。議事録は会社全体で共有する資料なので、とにかく客観的な視点を心がけてください。
略語やマークなど使用ルールを統一しておく
こまかい話かもしれませんが、議事録をわかりやすく、かつ効率的に作成するためには、略語やマークなどの使用ルールを統一しておくことが大切です。
頻繁に出てくる言葉を毎回書いていたら、読みにくいし、書くのも面倒です。たとえば、売上目標という言葉が頻出するなら、◯で囲んだ売という文字に略してしまえば、わずか1文字だけの記入で済みます。
また、事前に社内で「承認は✔」「未解決事項は△」「重要事項は★」といったマークの使い方を決めておくと非常に便利です。「チェックがついているから、これは承認済み事項である」と、会議に参加していない人でも一発で理解できます。
もちろん、新入社員や中途採用者のように、はじめて議事録を見る人もいるはずです。略語やマークの使用ルールを、凡例として議事録の冒頭や別ページに記載しておくと、はじめて議事録を読む人も混乱することなくスムーズに理解できるでしょう。
◆色分けやイラストの活用については、コチラの記事でお読みいただけます
効率よく議事録メモを取るためのポイント
通常のメモとは違い、議事録には公的な記録としての役割が求められます。最後に、効率よく客観性のある議事録メモを取るためのポイントを3点紹介します。
他人が読むことを前提に
議事録を作成するときは、常に「他人が読むこと」を意識してください。議事録は、自分だけでなく、ほかの参加者や会議に参加していない人も閲覧するものです。そのため、誰にでもわかるように、簡潔な表現を用いる必要があります。
前述の通り、議事録に個人の意見は必要ありません。事実だけを簡潔(箇条書きや記号も有効)に記しておけば、読み手も余計なことを考えずに、会議内容の理解に集中できます。
また、専門用語や一般的ではない情報を記録する場合は、注釈を添えておくと読み手に親切です。「これはどういう意味だろう」という疑問点が多いと、いちいち調べなくてはならず、議事録を読むのが苦痛になってしまいます。
議事録は、情報を共有する重要なツールです。「他人が読んで必要な情報をすぐに理解できるか」といった点を意識しながら作成すれば、きっと読みやすい議事録が作成できるでしょう。
体裁よりもスピードを重視
ここまで、議事録の書き方について、さまざまなポイントを紹介してきました。しかし、議事録を作成する際は、体裁にこだわるよりもスピードを重視する意識も必要です。
会議中は話の流れが速く、すべてを完璧に書き留めようとすると重要なポイントを聞き逃してしまうことがあります。いくらあなたが聞き逃しても、その間会議は待ってはくれないのです。
そのため、会議中はあくまでも話の内容を簡潔に書き取ることに集中しましょう。正式な書式としての記録は、あとからじっくりおこなえばよいのです。キーワードだけを素早く書き、略せる言葉は略語や記号でどんどん簡素化していきます。
下書きの段階では、自分だけが理解できればいいので、メモの体裁よりも情報のキャッチアップに全集中してください。
場合によって録音機器を併用
先ほどお話ししたように、会議の流れは速く、会議中にすべての情報を正確に記録するのはなかなか大変です。記録者といえども参加者の一員ですから、記録に時間を取られてしまい、肝心の会議に集中できないのも困ってしまいます。
そのようなときは、録音機器を併用するのがおすすめです。ボイスレコーダーなどを用意しておけば、書ききれない内容もあとからじっくりと確認できます。バックアップがある安心感により、記録をしながら会議の内容に集中できるのも、録音機器使用の大きなメリットです。
とくに、話の速いせっかちなリーダーが主催する会議や、複数人が同時に発言するスタイルの会議では、録音機器が大いに役立ってくれます。
ただし、録音はあくまで補助的な役割に過ぎません。録音データの聞き返しには、当然会議と同じだけの時間がかかるため、できるだけ書面として記録しておく方があとあと楽です。
また、録音をする場合は、必ず参加者全員から事前に許可を得る必要があります。録音するというのは、証拠として残るという意味ですから、黙って録音をすると非常に嫌がられるのが普通です。参加者とトラブルを起こさないためにも、事前の確認は決して忘れないでください。
まとめ
会社員であれば、必ず議事録の作成に携わることがあるはずです。しかし、冒頭でも触れたように、議事録の書き方を習ったことのある人はそれほど多くありません。今回紹介した議事録の書き方を参考に、ぜひ自分なりのやり方を見つけていただければと思います。