記事の監修
株式会社瞬読 代表取締役山中恵美子
大学卒業後、関西テレビ放送株式会社に勤務。2009年学習塾を開講し3万人の生徒が卒業。
学習効果を上げる方法として速読を取り入れる。これが後の「瞬読」となり生徒が次々と難関校に合格。
2018年瞬読のみの講座が開講し、現在受講生は2,600名を超える。
著書『瞬読』は10万部超えのベストセラーに。その他、TV・ラジオなどメディアにも多数登場し、全国に瞬読を広めている。
仕事の効率を上げるためには、正しいメモの取り方を知っておく必要があります。しかし、ただメモを取ればよいというわけではありません。仕事のできる人たちは、メモを効果的に使い、情報の整理やトラブルの回避、そして信頼関係の構築に役立てています。
本記事では、メモを取る目的や避けるべきNG行為、さらにメモの効率を最大化するための具体的なポイントについて紹介します。メモの取り方を見直して、あなたも仕事のスムーズさを実感してみませんか?
目次
仕事でメモを取る目的
メモの効率的な取り方について説明する前に、まずは仕事でメモを取る目的をしっかりと押さえておきましょう。
情報を忘れないようにするため
メモを取る一番の目的は、やはり情報を忘れないためでしょう。仕事中には、会議での重要な決定事項や上司からの指示、取引先とのやり取りなど、じつにさまざまな種類の情報を処理しなければなりません。
これらを頭のなかだけで覚えておこうとすると、どうしても漏れや誤解が生じやすくなります。すぐに対応できるならともかく、数日後に対応するタスクともなれば、おそらく情報の詳細をほとんど忘れてしまっているはずです。
しかし、重要なポイントをきちんとメモしておけば、ある程度時間が経過してから取りかかっても、問題なく対応できます。
人間の脳は、わずか1日経過しただけで、インプットした情報の約70%も忘れてしまうそうです。ましてや、複数のタスクをこなさなければならない場合、忘却率はさらに大きくなるでしょう。
自分の記憶力を過信せず、必要な情報は必ずメモを取るように心がけてください。
疑問点を明らかにするため
メモを取るもうひとつの大きな目的は、仕事中に浮かんだ疑問点を明確にすることにあります。会議や商談をしているなかで、多くの情報が一度に共有されますが、そのすべてを瞬時に理解するのはなかなか大変です。
その場で確認できればベストですが、相手との関係性や時間の問題などもあり、いつもその場で疑問点がクリアになるとは限りません。
そういったとき、メモに疑問点を書き留めておくと、あとから調べられるし、あらためて相手に質問することも可能です。(もちろん、その場で確認すべきこともあります)
不明な点があるのに、なにが不明なのかを忘れてしまうのは、最悪のパターンといえます。理解が曖昧なまま仕事を進めてしまえば、あとから大きなトラブルを引き起こしかねませんので。
その点、メモさえしておけば、とんちんかんな質問をして相手を怒らせることもありません。「先ほどは時間がなくて確認できませんでしたが、◯◯はこういう意味で間違いないでしょうか?」と真摯に確認すれば、相手も丁寧に答えてくれるはずです。
あとからトラブルにならないようにするため
あとからトラブルにならないようにするためにも、重要な指示や必要な情報は必ずメモするべきです。前述の通り、人の記憶は非常に曖昧で、時間の経過とともに、情報の大半を忘れてしまいます。
また、記憶に頼って仕事を進めると、どうしてもそこに自分の固定観念や解釈が介入してしまうものです。そうなると、相手の希望する内容とズレた仕事内容になってしまい、トラブルに発展する可能性が高くなります。
お互いに譲らず、「言った・言わない」の状態になったら、関係の修復は困難です。でも、メモに打ち合わせの内容を記録しておけば、それを証拠として堂々と対応ができます。きちんとメモを取っている姿を見せることで、相手の態度が軟化することも考えられます。
そう考えると、メモは単なる記録ではなく、リスク対策としての側面をもっているといえるでしょう。とくに上司や取引先との打ち合わせの内容は、できるだけ詳しくメモをしておくことをオススメします。
相手に安心感を与えるため
メモには、相手に安心感を与えるという大きな効果があります。とくに、上司や取引先との会話中に、しっかりとメモを取る姿勢を見せられれば、相手に誠実な印象をもってもらえる可能性が高まります。
誰だって自分の話をメモしながら聞いてもらえたら、嬉しいですよね。少なくとも、その人のことを悪くは思わないはずです。
また、メモに話しの内容を書き留めているわけですから、なにかトラブルが起きた場合、ある程度責任の所在がはっきりします。言った言わないの水掛け論を回避でき、人間関係を壊滅的に壊す事態にまでは至らずに済むでしょう。
このように、メモは単なる記録ではなく、相手と信頼関係を築くための重要な手段でもあります。しっかりとメモを取る習慣をつけて、コミュニケーションの質を向上させ、円滑な仕事の進行につなげていきましょう。
メモの取り方が下手な人のやりがちなNG行為
せっかくメモを取っても、ポイントを外すと思うような効果は期待できません。メモ下手がやりがちなNG行為を反面教師とし、きちんと効果の出るメモの取り方を身につけていきましょう。
情報をすべてメモしようとする
メモを取る際に、すべての情報を漏らさず記録しようとする人がいます。しかし、これは逆効果になることが多いです。
なぜなら、すべての情報を詳細にメモしようとすると、話を聞くための集中力がメモの方に分散されてしまい、肝心なポイントを聞き逃してしまうリスクが高まるからです。
また、こまかすぎるメモはあとで見返す際に、なにが重要だったのかがわかりづらく、情報の整理整頓に余計な時間がかかります。
ところが、真面目で仕事熱心な人ほど、こういった状況に陥りがちです。相手の言葉をしっかりと覚えておこうとして、メモに注力しすぎてしまうのですね。メモを書く際には、できるだけポイントを絞り、重要なキーワードだけ書くのがポイントになります。
メモの書き方のコツについては、のちほど詳しくお伝えします。
メモの文章が長すぎる
メモを取るときに、詳しく書こうとして、メモの文章が長くなってしまう人も多いです。しかし、メモは、あとから詳細を検討するためのきっかけにすぎません。
とりあえず、重要なポイントだけメモしておいて、そこから詳しい内容を引き出せれば、それでメモの役割は十分果たしています。
ところが、メモの段階ですべてを書き留めようとすると、書くことに一生懸命になってしまい、肝心の内容が頭に入ってきません。メモするのに時間はかかるし、そのくせ理解度は中途半端というのでは、わざわざメモをする意味がなくなってしまいます。
また、メモの文章が長すぎると、あとから見返すときに、どこが重要なポイントなのかを見分ける時間が余計にかかります。メモを取る際には、文章を短くまとめ、必要な情報を一目で把握できるようなメモの取り方が必要です。
字が汚すぎてメモの判読に時間がかかる
急いでメモしようとするあまり、ついつい字が乱れてしまい、あとで見返したときに「これ、なんて書いてあるんだろう……」と困ることがあります。せっかくメモしたのに、自分の字が読めないときは、本当に焦るものです。
わかりやすくメモしたはずなのに、判読に時間がかかるようでは、あまりにももったいなさすぎます。それでも解読できればまだマシで、最悪の場合、読み取れない可能性もゼロではありません。
こういった事態を防ぐには、丁寧に書くのはもちろん、メモの取り方も重要です。箇条書きで書く、記号を多用するなど、時短の工夫はいくらでもできます。
また、相手の許可を取れれば、会話を録音して、あとからじっくりと確認するという手もあります。これなら、焦って読めないメモを書くこともなくなるでしょう。
仕事の効率が爆上がりするメモの取り方のポイント
せっかくメモを取るなら、メモによって仕事の効率を大幅に向上させたいもの。この章では、メモの取り方に関するコツを10個ご紹介していきます。
会話中に確認しながらメモを取る
メモの効率化を目指すなら、相手との会話中に随時内容を確認しながらメモしていくのが有効です。相手の話している内容が自分の理解と合っているかを、その場で確認しながらメモを取れれば、勘違いやミスが大幅に少なくなります。
とくに、複雑な指示や数字・日程のような正確さが求められる内容の場合、できるだけその場で「◯◯でよろしいですか?」と確認を入れたいところです。
確認を怠ってしまうと、あとで「話が違う」と大きなトラブルに発展するリスクが高まります。しかも、確認をしながらのメモは、自分の話をきちんと聞いてもらっているという信頼感を相手に与えます。
ただし、あまりにも確認の回数が多いと、打ち合わせがスムーズに進みません。人によっては、鬱陶しいと感じる人もいるでしょう。もし相手が話の途中で質問されるのを嫌がるようなら、あとからまとめて質問するなど、臨機応変に対応してください。
1枚メモなら見返しが素早くできる
メモを取る際には、1枚の紙にすべてをまとめる「1枚メモ」がオススメです。複数のページにまたがって情報を記録してしまうと、あとから見返すときに、必要な情報を探す時間が余計にかかってしまいます。
メモは、簡潔に書くのが鉄則です。A4用紙1枚を目安にして、必要な情報はすべてそこに集約するようにしましょう。1枚に情報がまとまっていれば、あとから情報を探すのも簡単です。
ところが、よく「A4用紙1枚じゃ書ききれないよ」という声を耳にします。しかし、議事録ではないのですから、1枚に書ききれない情報は、基本的にメモ書きのキャパを完全にオーバーしていると思ってください。
1枚に書ききれないほどの情報量なら、録音をしてあとから書き起こすなど、別途工夫が必要になるでしょう。(どんなに情報量が多くても、せいぜい裏面に書き足すくらいが限界です)
◆1枚メモのメリットと書き方については、コチラの記事でもお読みいただけます
キーワードと箇条書きでスピードアップ
先ほど、1枚目メモのメリットをお伝えしました。ただ、1枚メモに情報を収めるには、書き方に少々工夫が必要です。
1枚メモに書く場合は、キーワードと箇条書きが基本になります。せっかくメモをするなら、できるだけたくさんの情報を残しておきたいと思うものです。しかし、すべての情報を書き出すのは時間がかかるし、手も疲れてしまいます。
情報の整理もむずかしくなるので、重要なキーワードだけを抜き出して、できるだけ簡潔にメモをしてください。通常の文章ではなく、「見積もり金額の再計算」というように、ごく短文を書きなぐっていくのが、素早くメモするポイントになります。
メモの主な役割は、情報の整理整頓です。情報の優先順位や関連性がわかればよいので、詳細については、別途手帳やノートに書き出して対応していけばよいでしょう。
◆キーワードのメモの取り方については、コチラの記事でもお読みいただけます
要点を簡潔にまとめる
メモを取る際には、できるだけ要点を簡潔にまとめましょう。仕事中には多くの情報が飛び交いますが、そのすべてを書き留めるのは、あまりにも非効率です。
メモの目的は「必要な情報を素早く確認できるようにすること」でしょう。それなのに、情報が多すぎると、あとから確認するのが大変になります。
そういう事態に陥らないためには、話のなかから具体的な数値や決定事項といった、重要な点だけを選んで書き留めるのがポイントです。
とはいえ、いきなり必要な情報だけを書き取るのは大変かもしれません。そういう場合は、とにかく単語やフレーズだけを記入するようにしてみてください。メモの短縮化に慣れてきたら、箇条書きを活用するのもよい方法です。
文章のままメモをするとどうしても冗長になるし、手に意識が集中してしまい、肝心の内容を見失ってしまう可能性が出てきます。シンプルさこそが、メモの質を高める最大の秘訣です。
あとから書き込むスペースを残しておく
「あとから書き込むスペースを残しておく」というのも、メモ書きの重要なポイントです。会議や打ち合わせのメモの場合、あとから補足情報を付け足したくなるケースがよくあります。メモした内容について、後日上司から受けた指示を残しておく必要も出てくるでしょう。
その際、メモに余白がないと新しい情報を書き足せません。その結果、別のページに記録せざるを得ず、見直しの際に重要な内容を見落とす原因になります。その点、十分なスペースを残しておけば、見直して気づいたことや疑問点を簡単に書き加えられます。
具体的には、箇条書きの下やページの端に余白を設けておくと使いやすいです。ただメモを取るのではなく、「あとから書き足すこと」を前提にメモを取る習慣をつけることで、さらに実用的で使いやすいメモが完成します。
日付やタイトルを必ず記入する
メモに日付やタイトルを記入することは基本中の基本なのに、意外と忘れがちです。しかし、これを習慣化するだけで、あとからメモを見返す際の利便性が格段に向上します。
打ち合わせのメモをあとで確認する際、日付やタイトルがないと、メモを探すだけでもひと苦労です。メモの枚数が少ないうちはよくても、10枚20枚と過去のメモが増えていけばいくほど、比例して検索の手間も増えてしまいます。
日付は「いつの情報か」を明確にし、タイトルは「どのような内容か」をひと目で把握するために役立ちます。凝ったタイトルは必要ありませんが、「◯月☓日のプロジェクト会議」といったタイトルでは、不十分です。
「◯月☓日のプロジェクト会議(広告費用について)」というように、短くても構わないので、プロジェクト会議の内容がわかるようなワードも加えておきましょう。
◆日付とタイトルの重要性については、コチラの記事でもお読みいただけます
見返す前提でメモを取る「PREP法の活用」
メモを取るときは、「あとから見返す前提」で整理しておくことが大切です。そのために役立つのが「PREP法(プレップ法)」というフレームワークです。
PREP法とは、「Point(要点)」「Reason(理由)」「Example(具体例)」「Point(再度結論)」の順で情報を整理する手法になります。
たとえば、会議で新しい提案が出た場合、まず「要点」として提案内容を簡潔に記録。次に、なぜその提案が採用されたのか、その理由や背景を記入しておきます。
さらに「具体例」として事例や数値データをメモし、最後に「結論」として採択された内容や次のアクションを記入しておけば、誤解による伝達ミスが激減するでしょう。
このように、PREP法は情報が論理的な構成に基づき記入されるので、ただのなぐり書きではなく、実用的な資料として機能します。情報量が多く、第三者と共有するタイプのメモなら、PREP法の導入は非常に有効です。
マーカーやイラストを活用する
メモをわかりやすく、見返しやすいものにするためには、マーカーやイラストの活用をオススメします。重要なキーワードや決定事項にマーカーを引いておくと、大事なポイントだけがパッと目に入り、必要な情報が見つけやすいです。
なかでも色分けは効果的で、たとえば「緊急のタスクは赤」「次回確認事項は青」といったルールを決めておくと、情報を探す手間が大幅に軽減できます。
また、イラストを使うのも有効です。シンプルな矢印やアイコンを描くだけでも、情報の流れや関係性が一目でわかるようになります。こういった視覚的要素をメモに取り入れると、アイデアの創出や記憶のトリガーとしても役立ってくれます。
なにより、カラーバリエーションが豊富で、イラストのあるメモは、見返すのが楽しいです。楽しいという気持ちは、メモを継続する大きなモチベーションになってくれます。絵心がないという人でも、気にせずどんどん取り入れていきましょう。
紙とデジタルの使い分けを意識する
メモを取る場合、あなたは紙派ですか、それともアプリメモ派でしょうか。さまざまな意見はありますが、基本的には紙のメモ(A4サイズ)をオススメしています。もちろん、デジタルにも長所が数多くあるので、状況に応じて使い分ければ、メモの効率と利便性が大幅に向上するでしょう。
紙のメモは、手を動かしながら書くため、記憶に残りやすいのが大きな魅力です。スケジュールなどを書き取る際に、スマートフォンのような電子デバイスよりも、紙媒体の方が想起(記憶の蘇り)に関する脳の活動が活性するという研究データ※も発表されています。
一方で、デジタルメモは情報の保存や検索が簡単で、チームとの共有に向いています。たとえば、Google KeepやNotionのようなツールを使えば、メモをいつでも誰でも確認でき、リンクや画像の添付なども可能です。
そう考えると、とりあえず紙に情報やアイデアを記録し、必要に応じてデジタルでメモを保存・共有するといった使い方もできます。どちらかだけ偏重するのではなく、両者の賢い使い分けが、メモの効果を最大限に引き出してくれるでしょう。
◆紙とデジタルの使い分けについては、コチラの記事でもお読みいただけます
スケジュール帳は必需品
スケジュール帳は、仕事をスムーズに進めるうえで欠かせないツールです。タスクや予定が頭のなかだけにしかない状態だと、優先順位をつけたり全体像を把握したりするのがむずかしくなります。その結果として、タスクの漏れや遅れが生じてしまうわけです。
しかし、メモを取る際にスケジュールをしっかり書き込んでおくと、基本的にメモさえあれば必要事項の概要はすべて確認できます。もちろん、朝や夕方に、スケジュール帳でしっかりと予定を確認する作業も必要でしょう。
でも、メモにスケジュールを反映させておけば、わざわざメモ帳を取り出して確認する手間がかかりません。わずかな違いかもしれませんが、こういうちょっとした工夫が、ビジネスの効率を大きく向上してくれます。
仕事の効率を上げたいなら、節目節目はスケジュール帳で、日中の活動中はメモでサッと確認するのがオススメですよ。
◆メモとスケジュール帳の併用については、コチラの記事でもお読みいただけます
まとめ
今回は、メモを取る目的や避けるべきNG行為、さらに効率的なメモの取り方について解説をしてきました。ミスを減らし、効率的に仕事を進めるために、メモを取る習慣は非常に重要です。今回紹介したメモに関する情報を基に、ぜひメモの取り方をブラッシュアップしていただければと思います。