
記事の監修
株式会社瞬読 代表取締役山中恵美子
大学卒業後、関西テレビ放送株式会社に勤務。2009年学習塾を開講し3万人の生徒が卒業。
学習効果を上げる方法として速読を取り入れる。これが後の「瞬読」となり生徒が次々と難関校に合格。
2018年瞬読のみの講座が開講し、現在受講生は2,600名を超える。
著書『瞬読』は10万部超えのベストセラーに。その他、TV・ラジオなどメディアにも多数登場し、全国に瞬読を広めている。
英語を聞き取れない原因は、単語力の不足だけではありません。英語独特のリズムや発音ルールに慣れていないことも、英会話のリスニングをむずかしくしている大きな要因です。
当記事では、リスニングが苦手な理由を明らかにし、効率よくリスニング力を高めるための具体的な勉強法を紹介します。毎日の学習に取り入れれば、英語の音がクリアに聞こえるようになり、英会話への自信もつくはずです。
目次
英会話のリスニング力が伸びない原因とは?
英会話のリスニング力が伸びない原因は大きく3つあり、それぞれ対処法が異なります。自分にどれが当てはまるか、チェックしてみてください。
単語やフレーズのストックが圧倒的に不足している
英会話のリスニングが苦手な人の多くは、「知っている単語やフレーズが少ない」という壁にぶつかっているはずです。リスニング力を鍛えようとしても、そもそも聞こえた単語の意味がわからなければ、会話の内容を理解できません。
「ambulance=救急車」という意味を知らなければ、アンビュランスという音を聴き取れたとしても、永遠に意味はわからないままです。
また、シチュエーションによって同じ意味の単語を使いわけるケースがあることも、考慮する必要があります。たとえば、同じ購入するという意味の単語でも、日常会話で「buy」が使われるのに対して、ビジネスではよりフォーマルな「purchase」を使うのが一般的です。
ほかにも、「riseとraise(自動詞・他動詞)」「hearとlisten(ニュアンスの違い)」のように、どちらが正しいのか判断に悩む言葉が数多くあります。そういう知識がないと、悩んでいるうちに、ネイティブの速い英語は耳元をサーッと通り過ぎてしまうでしょう。
ネイティブの会話スピードについていけない
ネイティブの会話が速すぎて聞き取れないと感じるのは、英語を英語のまま理解する「英語脳」ができていないのが大きな原因のひとつです。
多くの学習者は、英語を聞いた瞬間に頭のなかで日本語へ訳そうとします。しかし、英語から日本語へ訳すには、わずかながら時間が必要です。
たとえば、「I’ll grab a bite before work.」という発言を聞き、「grab=つかむ、bite=かむ……あ、食事のことか!」 と考えている間に、会話はとっくに別のトピックに移っています。
ネイティブの速い英語をスムーズに聞き取るには、日本語を介さない理解力が不可欠です。英語脳ができていないと感じているなら、単語をイメージ(画像)で理解するトレーニングをオススメします。
辞書で日本語の意味を調べるのではなく、画像検索するクセをつけると、少しずつイメージで単語の意味を捉えられるようになってきます。ぜひ試してみてください。
英語の発音ルールを理解していない
英語の音が聞き取れない原因のひとつに、「発音ルールを知らない」という問題があります。日本語は一音一音はっきり発音されますが、英語は単語同士がつながったり、省略されたりするパターンが非常に多いのです。
たとえば、「good time」は 「グッド タイム」ではなく、「グッタイム」のように聞こえます。これは、破裂音と破裂音が合わさると、前の破裂音が省略される「リダクション」というルールによるものです。
また、「Can I help you?」のように、「キャン アイ〜」から 「キャナイ〜」に変化するパターンもあります。単語同士をつなげて読むルールを「リンキング(リエゾン)」といいます。
こういった発音ルールを知らないと、リスニング中に「知らない音」として認識されてしまい、聞き取れないと感じるわけです。英語の発音は単語単体ではなく、文章やフレーズのなかでどのように発音されるか、その点を意識して学ぶことが重要です。
効率よくリスニング力をアップする勉強法
英会話のリスニング力が伸びない原因がわかったところで、今度は効率よくリスニング力をアップする勉強法について見ていきましょう。
ルックアップ&音読で基礎知識を叩き込む
英会話のリスニング力を上げるには、まず基本的な単語やフレーズを瞬時に理解できるようにする必要があります。そのために効果的なのが、「ルックアップ&音読」です。
ルックアップ&音読は、英文を見て意味を確認したあと、テキストを見ずに音読するという学習法になります。
たとえば、「I’ll have the same.(私も同じものをください)」 というフレーズを読んだら、すぐに本や画面を閉じ、なにも見ない状態で口に出してみます。間違っていたら、どこでつまずいたのかを確認し、スラスラ話せるまで繰り返してください。
多くの人は、英文を見て、わかったつもりになっています。しかし、実際にやってみるとわかりますが、ほんの数秒前に見た文章なのに、ビックリするほど口から出てきません。それくらい、人間の記憶はあやふやなのです。
ルックアップ&音読で、お手本がなくても話せるフレーズを頭のなかにストックしていけば、聴き取れる言葉が劇的に増えます。ぜひ試してみてください。
◆ルックアップ&音読については、コチラの記事でもお読みいただけます
リピーティングとシャドーイングで耳と口を同時に鍛える
リスニング力を効果的に鍛えるには、耳と口を同時に使うトレーニングが欠かせません。その代表的な方法が、リピーティングとシャドーイング です。
リピーティング は、英語の音声を一文ずつ聞き、そのあと音声を止めて同じ内容を繰り返す練習法です。聞き取れなかった部分を意識しながら真似すれば、リスニングとスピーキングの両方を強化できます。
一方、シャドーイングは、音声を聞きながら少し遅れて真似する方法です。音声に被せて真似をしていくので、ルックアップ&音読やリピーティングと比べて、難易度は格段にアップします。
効果は絶大ですが、少なくともTOEIC700点くらいのレベルになるまでは控えておくほうが無難です。
それまでは、ルックアップ&音読とリピーティングを主軸にして、英会話に慣れてきたら少しずつシャドーイングに取り組むようにしてください。
◆シャドーイングについては、コチラの記事でもお読みいただけます
ディクテーションでこまかい音までしっかり聞き取る力を養う
ディクテーションは、英語の音声を聞き取り、そのまま書き起こす練習法です。このトレーニングで、前述のリダクションやリンキングを正確に認識する力が身につきます。
リスニングに自信がない人ほど、音を「なんとなく」聞き流してしまいがちです。でも、ディクテーションをするとなると、すべての音を書き出さなければなりません。より集中してリスニングするようになるため、キャッチできる言葉がどんどん増えていきます。
ディクテーションで聴き取れない言葉があっても、すぐにスクリプトを見てはいけません。何回も繰り返して、もうこれ以上聴き取れないというところまできて、はじめてスクリプトを確認します。ここまで耳を追い込むと、飛躍的な速度でリスニング力が研ぎ澄まされていくのを自覚できるはずです。
ただし、ディクテーションは時間がかかるため、やりすぎると逆に学習効率が下がることも考えられます。毎日取り組む必要はなく、週に1〜2回、短めの音声で集中的に練習するのがポイントです。
ポッドキャストやYouTubeで英語を聴きまくる
リスニングの勉強をする際、最初のうちは、単語帳や文法書の例文を題材にリスニングするようになるでしょう。音声の速度も遅いし、発音も明瞭なので、初心者のリスニング題材にはピッタリです。
しかし、リスニング力が上がってくると、だんだん教材の英語では物足りなくなってきます。そうなってきたら、そろそろポッドキャストやYouTubeに移行してもよい頃合いかもしれません。
ポッドキャストやYouTubeは、語学学習者向けに作られているわけではないので、ネイティブの自然な英語が学べます。内容もおもしろいものが多く、飽きずに続けられます。
よく映画やドラマを題材に選ぶ人がいますが、リスニングの難易度は最上級クラスです。会話形式なので、とにかくスピードが速いし、スラングもばんばん出てきます。
その点、ポッドキャストやYouTubeは情報をリスナーに伝えることが目的なので、説明も丁寧だしスラングも少なめです。(もちろん配信者によります)
いずれにせよ、ただ聞き流していても効果は期待できません。わからない箇所はスクリプトで確認しながら、集中して聴き込んでください。
リスニング力を効果的に伸ばすためのコツ
せっかくリスニングのトレーニングをするなら、できるだけ効率的におこないたいものですよね。そこで最後に、リスニング力を効果的に伸ばすためのコツを3つご紹介します。
自分に合ったレベルの教材を選ぶ
英語のリスニング力を伸ばすには、「自分に合ったレベルの教材を選ぶこと」が非常に重要になってきます。むずかしすぎる音声を聞いても、内容がほとんど理解できず、おそらく挫折してしまうでしょう。
だからといって、あまりにも簡単すぎる題材を選んでしまうと、成長につながらず、リスニング学習の効果が半減してしまいます。
理想的なのは、「聞いてみて6〜7割は理解できる」レベルの教材です。これくらいの難易度であれば、わからない部分に意識を向けつつも、ストレスなく学習を続けられます。
初心者なら、やはり学習者向けの教材を使うのが無難です。ただ、教材ばかり聴いてもすぐ飽きてしまいます。 そういう場合は、子ども向けの海外アニメやスクリプト付きのポッドキャストなんかがオススメです。
中〜上級者なら、頑張ってYouTubeチャンネルや海外ドラマ、ニュースなどに挑戦してみるのもいいかもしれません。
ただ、前述の通り、無理は禁物です。継続してリスニング学習ができるように、適切な題材選びを心がけてください。
スクリプトで答え合わせができるようにしておく
どういった題材を選ぶにしろ、スクリプト(台本)は必須です。スクリプトがなければ、正しく聞き取れたかどうかが判断できません。そういう意味では、やはり単語帳や文法書の音声は便利です。テキストを読めば、内容がすぐに確認できるし、解説までついていますので。
とはいえ、ポッドキャストやニュースは、スクリプトがあるものも多いし、ドラマや映画もネットで検索すればたいていスクリプトが見つかります。YouTubeも字幕が出る動画は多いので、スクリプトについてはそれほど気にする必要はないでしょう。
リスニング学習をするときは、まず スクリプトなしで音声を聞き、どのくらい理解できたか確認してください。そのあと、スクリプトを見ながらもう一度音声を聞き、聞き取れなかった部分をチェックします。
「聞こえた音」と「実際の単語」が一致しているかどうかを確認する。ここが、リスニング学習のポイントです。くれぐれも、あやふやな音をそのまま放置しないでください。せっかくリスニングをしても、効果が半減してしまいます。
独り言でアウトプットの時間を増やす
闇雲にリスニングをしても、聞き取る能力は向上しません。中学レベルの単語と文法を学んだら、覚えた内容を独り言でどんどんアウトプットしていきましょう。独り言でアウトプット量を増やせば、脳内にフレーズのストックが蓄積され、リスニングが楽になります。
たとえば、朝起きたときに 「I’m going to make some coffee.(コーヒーを淹れよう)」と言ってみたり、外出時に 「It’s a little chilly today.(今日はちょっと肌寒いな)」とつぶやいてみたりするだけでもOKです。
日常会話の大半は、こういった他愛もないフレーズで構成されています。だからこそ、自分の日常生活に関する独り言が、リスニング力を大いにサポートしてくれるのです。
独り言の効果を最大限活かすために、できれば録音して聞き返してみることをオススメします。自分の発音や表現のクセがわかるし、あとからAIに矯正してもらうことも可能です。
間違った表現を覚えてしまったら、逆効果ですからね。気になるフレーズがあれば、できるだけAIのチェックを受けるようにしましょう。
◆独り言によるアウトプットについては、コチラの記事でもお読みいただけます
まとめ
英会話のリスニング力を効率よくアップする方法は、非常にシンプルです。英会話のリスニング力が伸びない原因を押さえて、対策を実行するだけで、リスニング力は必ず改善します。
ルックアップ&音読やリピーティングなど、具体的な対策は、本文中でいくつも紹介しました。すべての方法に取り組む必要はないので、どれか気になるものからひとつずつ試してみてください。