記事の監修
株式会社瞬読 代表取締役山中恵美子
大学卒業後、関西テレビ放送株式会社に勤務。2009年学習塾を開講し3万人の生徒が卒業。
学習効果を上げる方法として速読を取り入れる。これが後の「瞬読」となり生徒が次々と難関校に合格。
2018年瞬読のみの講座が開講し、現在受講生は2,600名を超える。
著書『瞬読』は10万部超えのベストセラーに。その他、TV・ラジオなどメディアにも多数登場し、全国に瞬読を広めている。
「最近、なんか物忘れが多いなあ」「どうもうまく頭が働かない」そんな風に感じることが多くなったら、生活を見直すサインです。
今回紹介する10個の「脳にいい習慣」のなかから、まず2〜3個ピックアップして、すぐに取り組んでみてください。継続していくうちに、脳がどんどん活性化していくのに気づくはずです。
それでは、ひとつずつみていきましょう。
目次
週に2〜3回は体を動かす
脳の活性化と体全体の健康維持を兼ねて、週に2〜3回程度はぜひ体を動かすようにしましょう。適度な運動は心臓を強化し、血液の流れを改善してくれます。そうなると、脳へ血液中に含まれる酸素と栄養素がしっかりと届くので、脳がスムーズに働き出します。
運動の種類は、とくに制限はありません。ウォーキング・ヨガ・水泳・サイクリングなど、無理なく続けられるものなら、好きな運動を自由に選んでください。
個人的なオススメは、自然のなかを歩くハイキング(ウォーキング)です。普通に歩くのもいいですけど、山や郊外の公園を歩くと、木々から放出される「フィトンチッド」が癒やし効果を与えてくれます。
なお、対戦するタイプのスポーツが嫌いでなければ、野球やバレーのようなチームスポーツも非常にオススメです。勝つための戦略づくりや他人の動きを考慮しながら動くといった、よい意味での負担がより強く脳に刺激を与えてくれます。
◆自然のなかで過ごすメリットについては、コチラの記事でお読みいただけます
8時間以上の良質な睡眠を目指す
なにかひとつだけ脳によいことをするとしたら、私は間違いなく8時間以上の睡眠を選びます。そのくらい、睡眠が生活のクオリティに与える影響は大きいのです。
脳は、レム睡眠とよばれる時間帯に、記憶の整理をおこないます。レム睡眠は、ひと晩に約4〜5回しか発生しません。睡眠時間が極端に短いと、レム睡眠の回数も減ってしまいます。
すると、本来するはずだった記憶の整理が十分にできないまま、起きることになるわけです。これでは、常に頭のなかがぼんやりしたまま。脳のもつ本来のポテンシャルを、活かしきれません。非常にもったいない話ですよね。
もちろん、睡眠は時間だけでなく質も重要です。食事やアルコールの摂取は、どんなに遅くとも就寝2〜3時間前までには済ませ、ぐっすりと眠る準備をしましょう。
そのほかにも、「寝室を暗く静かに保つ」「快適な寝具を用意する」「ベッドでスマホはみない」など、良質な睡眠を確保するための環境作りは本当に重要です。
睡眠のリズムも大事なので、できるだけ毎日同じ時間にベッドへ入るように、習慣づけてみてください。それだけでも眠りの質は、大きく向上すると思います。
◆睡眠の重要性については、コチラの記事でもお読みいただけます
バランスのよい食事を心がける
脳の機能を維持し、パフォーマンスを最大限に引き出すには、バランスのよい食事が不可欠です。必要な栄養が不足すれば、頭はうまく働かない。誰もが知っていることなのに、多くの人の食事は非常に偏っています。
脳の主な栄養源は、血液中に含まれるブドウ糖です。そのため、ごはんやパンといった糖質を多量に摂取すればいいと思うかもしれません。しかし現代人は、明らかに糖質を摂り過ぎています。(糖質の摂り過ぎは病気を引き起こします)
あくまでも「三大栄養素(たんぱく質・脂質・炭水化物)」を中心に、バランスよく栄誉を摂ることが重要なのです。また、ビタミンやミネラルなどが不足すると、「ドーパミン」「セロトニン」といった神経伝達物質をうまく作り出せません。
こういった神経伝達物質がきちんと分泌されなければ、精神面に大きな影響が出ます。そういう意味でも、ビタミンやミネラル・鉄・亜鉛といった、いわゆる「微量栄養素」もしっかりと摂るようにしてください。
なお、砂糖や加工食品の過剰な摂取は避けるべきです。これらの食品は、炎症を引き起こし、記憶力や認知機能を低下させる可能性があります。脳の活性化にオススメなブレインフードについては、以下の記事で紹介しています。
◆ブレインフードについては、コチラの記事でお読みいただけます
水分補給で脳は活性する
私たちの脳は約80%が水分でできており、脳の機能を維持するためには適切な水分補給が不可欠です。水分不足になると、集中力の低下・記憶力の衰え・頭痛などの症状が出やすくなります。
また少し古い調査ですが、脳の反応テスト前に水分補給をした人の反応速度がアップしたという、イーストロンドン大学による研究データ※1もあります。しっかりと水分補給をしていきましょう。
人間が必要とする水分量は、1日約2.5L※2といわれています。とはいえ、いくら必要だといっても、2.5Lの水を飲むのはかなり厳しいですよね。でも、安心してください。食事に含まれる水分などを考慮すると、実際に飲料として飲む量は、およそ1.2Lになります。
もちろん体格・季節・運動量などによって必要な量は変わってきますが、1〜1.5Lくらいなら、なんとかなりそうな感じがしませんか。(一気に飲む必要はなく、こまめな水分補給がポイント)
なお、水分補給には、できるだけカフェインや砂糖が少ない飲み物を選んでください。水がベストですが、飲みやすさを考えると、ハーブティー・緑茶・コーヒー(ブラックに限る)などもよい選択だと思います。
※1:Subjective thirst moderates changes in speed of responding associated with water consumption
脳トレで脳に刺激を与える
睡眠・食事・運動で脳のベースを整えると同時に、ぜひ脳トレにも取り組んでいきましょう。「パズルを解く」「軽い運動をする」といった脳へ刺激を与える取り組みは、脳機能の維持に対して、非常に効果を発揮してくれます。
脳トレをすると、脳が刺激を受けますよね。その新しい刺激に対応するために、脳は神経伝達回路を強化しようと動きだすんです。そうなると、脳の血流もよくなり、栄養素や酸素がしっかりと脳へ届きます。
いつも同じことばかり繰り返していると、考えなくても対応できるため、脳の活動は低下します。そういった状況を改善する最高の刺激が、脳トレなわけです。
以下に、主な脳トレの効果をまとめておきます。
- 認知症の予防や改善が期待できる
- 記憶力がよくなる
- ストレスや不安が解消される
- コミュニケーションが増える
取り組む脳トレについては、「計算クイズに挑戦」「絵を描く」「散歩をする」など、基本的に自分の好きなもので構いません。ただし、特定の認知機能に不安があるなら、その認知機能に、より効果の期待できる脳トレを選ぶほうが効率は断然アップします。
認知機能ごとのオススメ脳トレについては、別記事でくわしく紹介しているので、よかったら参考にしてください。脳トレのメリットに関する別記事も、以下に紹介しておきます。
コミュニケーションで脳を活性化
他人とのコミュニケーションは、脳に強い刺激を与えてくれます。たかが会話と思うかもしれませんが、会話は「理解力」「判断力」「語彙力」などが求められる高度な作業です。ときには相手の反応をみながら、相手を思いやる気配りも必要になるでしょう。
こうした複雑な作業の積み重ねで成立しているコミュニケーションの機会が増えれば、自然と脳は活性化していきます。
少々むずかしい話をしましたが、もちろん人とのコミュニケーションは基本的に楽しいものです。家族や気のおけない友人と過ごす時間は、ストレス解消にも大いに役立ってくれます。誰でもよいので、できれば毎日人と直接話す機会を設けてください。
また脳への刺激という意味では、知らない場所で新たな人たちと交流するのも、非常にオススメです。友達と違い、適度な緊張感があるので、より深く考えて行動しようという意識が働きます。
もし機会があれば、趣味のサークルや資格の勉強会などに参加してみてください。地域の集まりや子どもの学校に関する活動、ボランティア、その気になれば新しい出会いの場はいくらでもみつかります。
リラクセーションとストレス軽減
脳の健全な活動には、リラクセーションによるストレス対策が欠かせません。
長期間にわたるストレスは、脳の司令塔とでもいうべき「前頭前野」の働きを著しく低下させます。ストレスが過剰にかかると、脳はノルアドレナリンやドーパミンといった、脳を興奮させる神経伝達物質を分泌して、対応しようとするのです。
人前でのスピーチのようなイベント時には、こういう神経伝達物質は役立ちます。しかし、あくまでもそれは、一時的な場合です。慢性的にこういった神経伝達物質が放出されると、前頭前野の働きが徐々に弱っていきます。
前頭前野は感情や衝動的な欲望の抑制をコントロールしているので、前頭前野の働きが弱まると、自分の感情や欲望を押さえられなくなります。
こういう状況に陥らないためにも、日頃からストレス対策には、真剣に向き合っておかなければなりません。
具体的な対策法として、瞑想は非常にオススメです。静かに座り自分の心とじっくりと向き合ううちに、余計な雑念がスーッと消えていきます。
また、趣味の時間を増やすのもいいですね。好きな音楽を聴く・読書をする・ガーデニングをするなど、楽しい時間はストレスを吹き飛ばしてくれます。
◆瞑想(メディテーション)の効果については、コチラの記事でお読みいただけます
音楽を楽しむ
前述のリラクセーションのなかでも、個人的にとくにオススメな音楽についてお話しします。むずかしい理屈はともかく、音楽には人の心を動かすパワーがあると思うのです。厚生労働省の「若者を支えるメンタルヘルスサイト」にも、同様の内容が書かれていました。
「音楽」は、ごく自然に、人のこころと体を癒してくれます。
アップテンポの音楽は、エネルギーや活力を与え、優しくスローな曲は不安や緊張をやわらげます。思い出の詰まった曲を聞くと、思わず泣いてしまうことがあるように、言葉にできない感情を表現するきっかけを、音楽がつくってくれることもあります。
引用元サイト:音楽を聞いたり、歌を歌う – こころと体のセルフケア | 厚生労働省
人によって音楽に対する興味や感受性は異なりますが、もしあなたが音楽好きなら、ぜひ音楽をじっくりと聴く時間をつくってください。できれば、読書や運転中のながら聴きではなく、音楽に集中しましょう。
そうすれば、今まで気づかなかった美しいメロディや歌詞が、あなたの脳に大きな刺激と楽しさを与えてくれるはずです。
また、音楽を聴くだけでなく、自分で音楽を演奏するのも非常にオススメです。ピアノやギターのような楽器演奏は、運動能力・記憶力・感情表現など、脳のさまざまな領域を活性化してくれます。
もちろん、好きな曲を自分で歌ってみるのも、いいですね。楽器と同様の効果が得られ、なおかつ呼吸法も学べます。深く長い呼吸は、脳のリラクセーションにもよい影響を与えてくれるでしょう。
定期的なブレイクタイム
仕事・勉強・家事、それに今回紹介した脳トレ。なにをするにも、あまり長時間やりすぎると、効率が著しく低下します。ぜひ、適度なブレイクタイム(休憩)を取ってください。
適切な休憩の長さに決まりはありませんが、あまり長すぎるのも逆効果になります。私がオススメするのは、25分作業して5分休む「ポモドーロテクニック」です。
人間の集中力は、45分くらいが限界といわれています。本当に集中が必要な作業なら、15分しか保たないのが人間の集中力なのです。ポモドーロテクニックは、25分作業して5分休むというサイクルを4回繰り返したら、15分から30分程度の長めの休憩を取ります。
自分で作業時間をコントロールするなら、たしかに25分くらいだと、ちょうどいい感じがしますね。疲れて集中力が切れてきても、たった25分と思うと、意外と乗り切れるものです。
なお、休憩中はスマホもできるだけ触らずに、席を立ってストレッチをしたり、コーヒーを飲んだりしてしっかり脳を休めてください。そうでないと、脳のリセット機能がうまく働かず、こまめに休憩をする意味が薄れてしまいますので。
◆ポモドーロテクニックの効果については、コチラの記事でもお読みいただけます
健康的な環境の整備
ここまで、脳にいい習慣をいくつか紹介してきましたが、健康的な環境の整備ができていないと思うような効果は期待できません。ここでいう環境とは、物理的な環境だけでなく、精神的な環境も含みます。
まず物理的な環境ですが、人間は物理的な環境に大きく影響を受ける生物です。明るい場所に居ると気持ちは前向きになるし、暗い場所にこもっていたら、どうしてもネガティブな思考になりやすいもの。
温度も大いに関係しますね。暖かいとなんとなくウキウキするけど、寒くて震えているような状態だとなにもする気が起きない、なんて人も多いのではないでしょうか。
明るさや温度だけでなく、音の問題や座りやすい椅子、整理整頓なども、重要な要素です。とくに整理整頓は、脳の働きに大きな影響を与えます。
誰だって部屋が散らかっていたら、集中力が奪われるものです。脳にきちんと働いてもらうためにも、できるだけ整理整頓を心がけてください。
さらに、精神的な環境を整えることも重要です。いつもマイナスな言葉を使っていれば、思考も後ろ向きになります。自分を否定することなく、感謝の気持ちをもって、自然体で過ごせるようにしたいですね。
まとめ
「脳にいい習慣」を身につけると、私たちの思考力や記憶力といった、脳の働きがどんどんよくなっていきます。「週に2〜3回の運動」「良質な睡眠」「バランスのよい食事」など、今回紹介した「脳にいい習慣」はどれも重要なものばかりです。
いちどにすべてをやる必要はないので、気になる項目からぜひ取り組んでみてください。数か月、1年と経つうちに、今よりも間違いなく脳が活性しているはずです。