記事の監修
株式会社瞬読 代表取締役山中恵美子
大学卒業後、関西テレビ放送株式会社に勤務。2009年学習塾を開講し3万人の生徒が卒業。
学習効果を上げる方法として速読を取り入れる。これが後の「瞬読」となり生徒が次々と難関校に合格。
2018年瞬読のみの講座が開講し、現在受講生は2,600名を超える。
著書『瞬読』は10万部超えのベストセラーに。その他、TV・ラジオなどメディアにも多数登場し、全国に瞬読を広めている。
あなたは、音読と聞いてどのようなイメージを思い浮かべますか。おそらく、授業中に教科書を読まされた、あの風景を思い出すのではないでしょうか。
だから多くの人は、音読はつまらないものと思い込んでいます。しかしやりかたさえ間違わなければ、読解力アップなど、音読は実に有効な脳トレの役割を果たしてくれます。
今回紹介する音読のメリットや音読のコツを理解したら、ぜひ音読に挑戦してみてください。今まで気づかなかった音読の脳トレ効果を、ヒシヒシと実感していただけるはずです。
目次
音読が脳へ与える4つのメリット
なにはともあれ、まずは音読のメリットを理解して、音読に対するマイナスイメージを払拭してしまいましょう。
- 読解力が向上する
- 暗記効率がアップ
- 認知症予防に有効
- 自制心や集中力が鍛えられる
それでは、ひとつずつ解説していきます。
読解力が向上する
音読は、読解力の向上に大変役立ちます。試しに、なにか好きな本の1ページを、声に出して10回くらい繰り返してみてください。黙って読むよりも、内容がするりと頭に入ってくると思います。
音読でなぜ読解力がアップするのかというと、声に出すことで、じっくりと内容を確認しながら読めるからです。集中力がないと、黙読をしても、内容がまったく頭に入ってきません。ところが音読をすると、イヤでも文章に集中するので、その結果より理解が深まるのです。
ただし、音読は読解力がアップする反面、読むのに時間がかかります。だから、いったん内容が理解できたら、そのあとは音読をしなくても大丈夫です。
黙読でスラスラ読める人も、ムリに音読をする必要はありません。この辺は、自分のタイプを見極めて、臨機応変に対応してください。
暗記効率がアップ
暗記といえば、何回もブツブツつぶやきながら覚える姿をイメージする人も多いと思います。なぜ暗記をする際に音読をする人が多いのかというと、答えは単純、音読をすると覚えやすいからです。
黙読と音読の違いを端的にいうと、以下のようになります。
- 黙読:目からの情報のみ
-
音読:目・耳・口の3つをフル活用
別記事でも紹介しているとおり、脳は①「強い刺激を与える」②「繰り返しインプットする」という2つの条件によって、より深く記憶するようにできています。
黙読は、視覚による情報しか入り口がありません。その点音読なら、視覚と聴覚のサンドイッチ効果が期待できます。さらに口頭でアウトプットもしているので、いうなれば、インプットとアウトプットを同時におこなっているようなもの。
つまり、音読をすれば、黙読よりも強い刺激を脳へ与えられるわけです。しかも暗記したい箇所を何回もブツブツ繰り返せば、さらに記憶への定着度が深まります。
◆暗記のしくみや方法については、コチラの記事でお読みいただけます
認知症予防に有効
認知症予防の観点からみると、音読には以下のようなメリットが考えられます。
1.目と耳から情報が入ってくるので脳がより刺激を受ける
2.音読でじっくりと読む間に心がリラックスしてくる
3.大きな声で音読すると気持ちが晴れ晴れとする
4.口周りの筋肉が鍛えられて誤飲の心配が減る
1については先ほどお話ししたとおり、視覚と聴覚のサンドイッチ効果のおかげで、脳がより強い刺激を受けます。また、声に出して文章を読むと、なぜか妙に落ち着いてくるものです。
自分の部屋にひとりでいると、動画をみたりSNSをしたりと、声を出す機会がほとんどありません。黙っている時間が多いと、自分では気づかないうちにストレスがたまります。そこで音読をすれば、そういったストレスが解消されて、気分もスッキリするというわけです。
音読が誤飲の予防になるというのは、NHK健康チャンネルのサイトをみるまで、正直気がつきませんでした。そのサイトでは、老年医学を専門とする東京大学の飯島勝矢教授が、音読と口の動きの関係についてデータを交えて解説してくれています。
興味のあるかたは、ぜひチェックしてみてください。
※参考:音読の効果(認知機能・口くう機能の改善)とやり方について | NHK健康チャンネル
自制心や集中力が鍛えられる
音読というと、暗記への活用ばかりがクローズアップされがちです。しかし音読には、自制心や集中力アップという副産物的メリットも期待できます。
音読は、脳の前頭前野を活性化してくれます。前頭前野は、思考や感情をコントロールする司令塔のような役割をもつ部位です。前頭前野がしっかり機能しないと、ちょっとしたことでイライラしたり、すぐにやる気を失ったりと、感情を適切にコントロールできません。
しかし音読により前頭前野が活性化すれば、徐々に自制心を取り戻し、感情をうまくコントロールできるようになってきます。もちろん自制心がきちんと働くようになると、自然とものごとに集中できるし、やる気も出てくるでしょう。
◆集中力のしくみについては、コチラの記事でお読みいただけます
脳トレ効果を最大限発揮する音読のコツ
音読のメリットを理解しても、ただ惰性で音読をしていれば、思うように脳トレ効果は享受できません。せっかく音読をするなら、最大限脳トレ効果を発揮できるように、音読のコツをしっかりと押さえておきましょう。
- 1日15分の音読をできるだけ毎日続ける
- なるべく速く読む
- 同じ時間に音読をすると効果を感じやすい
- 題材は自由に選んでOK
上記はすべて、重要なコツばかり。ぜひ、しっかりと頭に入れておいてください。
1日15分の音読をできるだけ毎日続ける
音読に限らず、脳トレは、数日で結果の出るものではありません。長期間継続して、少しずつ脳を鍛えていくのが、脳トレとの正しいお付き合いのしかたです。
音読の1回あたりにかける時間ですが、まずは1日15分程度を目安にすると、ストレスなく継続できるでしょう。もちろん、受験生のように暗記をゴリゴリ進めたい人は、2時間でも3時間でも好きなだけ取り組んでOKです。(当然、効率は悪くなりますけど)
ただ、任天堂の脳トレシリーズで有名な東北大学教授「川島隆太先生」によると、脳トレを何時間もおこなうのはあまりオススメできないそうです。
実際、任天堂の脳トレゲームは、1日最大でも40分までしかプレイできないように設定されていました。(最新Nintendo Switchバージョンをやったことはないのですが、今も40分に設定されているのでしょうか……)
取り急ぎ暗記の必要性がない場合は、前述のとおり1日15分、最大でも1時間程度に収めるのが無難だと思います。
なるべく速く読む
同じ音読でも、読む速度によって、脳への効果が変わってきます。脳の活性化を目指す脳トレとしての音読なら、できるだけ速く読んだほうが効果は高いです。
通常音読をする際には、いきなり読むのではなく、該当箇所にいちど目を通して内容をざっと確認しますよね。そして実際の音読では、文章をみながらの音読と、本から目を離して記憶を頼りにおこなう音読を交互に繰り返すはずです。
本を読みながらおこなう音読はともかく、記憶を頼りに音読しているときになるべく速い速度で音読をすると、それだけ脳に負担がかかり脳トレ効果はより高くなります。
前述の川島隆太教授も、月刊誌「致知」の対談で、できるだけ速く読む音読を勧めていました。
僕はこれまで素読が脳の機能を高める実証データをたくさん取ってきましたが、そこで分かったことの一つはできるだけ速く読むトレーニングの効果です。速く読むことで頭の回転速度が上がります。例えば、早口言葉のようなものを毎日やっていると、脳がつくり替えられるということが見えてきたんですね。
※引用:脳トレの川島隆太さんが実証データ「速音読で、脳の回転速度が速くなる」
具体的な音読スピードについては、多少個人差はあるものの、普段自分が話す速度よりも速く読めるように意識すればまずは十分だと思います。
同じ時間に音読をすると効果を感じやすい
音読は、できるだけ同じ時間帯におこなってください。音読の効果は体調やその日の精神状態に大きく影響を受けますが、時間を固定することで比較がしやすくなり、音読の脳トレ効果を感じやすくなります。
音読にオススメの時間帯は、ズバリ早朝です。たっぷりと睡眠を取ってリフレッシュした脳は、負荷の高い暗記系の音読にも、十分対応できるでしょう。しかも早朝なら、集中力を阻害する、仕事の連絡やSNSの通知もきません。
朝はどうしても眠いという人は、できれば午前中、それもムリなら就寝2時間前を目安に音読してみてください。脳は睡眠中に記憶を整理するので、寝る直前にインプットした内容はより深く記憶されます。
◆読書に最適なゴールデンタイムについては、コチラの記事でお読みいただけます
題材は自由に選んでOK
音読の題材は、学生であれば、必然的に教科書や参考書がメインの題材になるでしょう。社会人なら、仕事や人生に役立つビジネス実用書が多くなると思います。
読む本は、基本的にどのような分野のものでもOKです。つまらない題材は続かないので、小説やエッセイなど、好きなジャンルの本を選んでいただいてまったく問題ありません。
ただし脳トレの観点でいうと、内容がむずかしすぎる本と、読みにくい本はやはり避けるべきです。受験や資格試験が控えている人は、難易度に関わらず音読が必要になってくるでしょう。
しかしそれ以外の人が、内容や表現のむずかしい本を選んでしまうと、負荷がかかりすぎて「できるだけ速く何回も読む」という音読の基本ルールを守れません。ある程度音読に慣れるまでは、できるだけやさしくてテンポのよい本を選んでください。
スタート前に読んでおきたい音読関連オススメ本
音読の基本的なポイントがわかったところで、最後に音読関連のオススメ本を3冊紹介しておきます。いきなり音読をするよりも、こういった本を読んでからのほうが、効率よく音読ができるはずです。まずは、どれか1冊、目を通してみてください。
「素読のすすめ」川島隆太・斎藤孝共著
最初にオススメするのは、今回の記事でも何度か引用させてもらった川島隆太教授と、明治大学斎藤孝教授の対談本です。
おふたりとも音読(本書では素読と表現)の重要性を提唱していて、川島教授は「1日10〜15分、音読をおこなうと抑制力や創造力・論理的な思考力などが伸びる」と述べています。
しかし、音読といっても、ゆっくりなスピードではあまり効果がでません。一方、できるだけ速く音読をすると脳に負荷がかかり、前頭前野の神経ネットワークが拡大します。
本書では、こういった音読と脳の関係や音読のメリットなど、音読に関する基本的な知識がわかりやすく解説されています。音読効果にまだ疑問をおもちのかたは、ぜひ本書に目を通しておきましょう。音読に対するイメージが、大きく変化すると思いますよ。
「脳を鍛える『音読・漢字』60日」川島隆太著
前述の川島隆太教授による、音読の実践ドリル本です。音読のよさがわかりチャレンジしようと思っても、いざスタートの段階になるとなにをしていいのかがわからない。そのような人も少なくないはずです。
そういう人は、こういった音読ドリルを利用すれば、アレコレ頭を悩ます心配がありません。また「素早く読む」ことを想定した題材選びがされているので、2日3日と続けていくうちに、少しずつ速く読めるようになってくるはずです。
題材も夏目漱石や松本清張など、歴史的名作から現代文学まで幅広くチョイスされているので、飽きずに継続できると思います。音読の実践第一弾として、オススメの1冊です。
「『毎日音読』で人生を変える」寺田理恵子著
元フジテレビアナウンサー寺田理恵子さんが、自分の音読体験をもとに、音読の凄さを指南してくれる本。14年間にもおよぶブランクを経て、再び声を使う仕事に復帰する際に、自分を助けてくれたのが音読だったそうです。
元アナウンサーらしく、音読の一般的なやりかた以外にも、声をよくするレッスンや滑舌がよくなるレッスンもあります。
じつは自分の声が嫌いで、話す行為に苦手意識をもっている人は少なくありません。でも、声の出し方を学び、滑舌よく話ができれば、きっと音読が楽しくなるはずです。自分の声や話し方に少しでもコンプレックスがあるなら、ぜひこの本を読んでみてください。
まとめ
普通の人にとって、音読は受験生が暗記をするためにするもの、といった認識しかないはずです。しかし今回お伝えしたように、音読には強力な脳トレ効果があり、読解力や記憶力アップなどさまざまな能力の向上が期待できます。
音読のコツをしっかりと押さえて、音読脳トレにぜひチャレンジしてみてください。