記事の監修
株式会社瞬読 代表取締役山中恵美子
大学卒業後、関西テレビ放送株式会社に勤務。2009年学習塾を開講し3万人の生徒が卒業。
学習効果を上げる方法として速読を取り入れる。これが後の「瞬読」となり生徒が次々と難関校に合格。
2018年瞬読のみの講座が開講し、現在受講生は2,600名を超える。
著書『瞬読』は10万部超えのベストセラーに。その他、TV・ラジオなどメディアにも多数登場し、全国に瞬読を広めている。
ある程度年齢を重ねて高齢者と呼ばれる年齢になると、物忘れが気になる人も段々と増えてきます。今までスラッと口に出てきた内容が、なかなか思い出せなくなると、本当に気分が落ち込んでしまいますよね。
「自分は認知症になりかけているのでは……」そういった不安をおもちのかた、またはご家族に高齢者がいるかたも、ぜひ脳トレを取り入れてみてください。
もちろん個人差はありますが、脳トレが認知症予防にいいという研究データもありますし、試してみる価値は十分にあると思います。なによりも、脳トレは単純に楽しいんです。
今回は、脳トレの基本的な知識とオススメの脳トレについて、わかりやすく解説していきます。また、身内の高齢者に脳トレを勧める際の注意点についても、お話ししていこうと思っています。
目次
脳トレが認知症予防にいいって本当?
まず結論からいえば、脳トレが認知症予防に有効だという研究データもあれば、効果はないというデータも存在します。つまり現時点では、脳トレの認知症予防効果についての、明確な結論は出ていないのです。
しかし以下の記事でも紹介しましたが、2019年にロンドンで発表された「効果ありデータ」は19,000人とサンプル数も多く、信頼性が非常に高いです。
個人的な意見になりますが、認知症に効果ありという信頼できるデータが多数ある以上、気軽にチャレンジしてみればよいのでは、と私は考えています
◆脳トレの研究データについてはコチラの記事でもお読みいただけます
脳は使えば使うほど機能が向上する
認知機能といっても、「記憶力」や「判断力」そのほかにも「計算力」「言語化力」など、こまかくみるとたくさんの能力に分類されます。そのどれもが大事なものばかりで、ひとつでも機能が低下すると、満足のいく生活レベルを送れなくなってしまうでしょう。
こういった機能をすべて向上させていくには、とにかく脳を使って各機能を鍛えていくのが一番です。
残念ながら人間の脳は、記憶の回路で発生する電気信号が、加齢とともに弱くなっていきます。だから、弱った電気信号を少しでも強くするために脳トレをして、脳の血流を改善していくわけです。
もちろん、一度認知症が発症すれば、いくら脳トレをしても完治はしません。ただし、脳トレで進行を遅らせることは、十分に可能です。
なので、できるだけ脳が元気なうちに、脳をどんどん使う習慣をつくってしまいましょう。脳トレをはじめる時期は、早ければ早いほど効果が期待できますので。
自分の頭で考えると脳は衰えない
自分の脳で考える努力を続ければ、脳の衰えは最小限で済みます。一番よくないのは、周りの意見に依存して、自分で考える行為を放棄してしまうことです。
たしかに、歳を取ってくると、なにごとに対しても億劫になってくるものです。また、自分の子どもが成長してくると、むずかしい判断は自分ではなく、子どもに任せる状況が多くなってきます。
でも、ここで「自分の頭を使って考える習慣」を放棄してしまうと、脳は一気に衰えてしまうでしょう。これは、日常生活でも同様です。
テレビやラジオなどの情報を一方的に受け取る環境が当たり前になると、自分で考える機会が極端に減ってしまいます。
ぜひ、読書や脳トレの時間を増やして、自分で考える習慣を取り戻してください。「脳は使わないと衰える」私たちは、この事実を決して忘れないようにしたいものです。
頭と体をバランスよく鍛えるのがポイント
認知症予防となると、どうしても頭を使うことばかりに目がいきがちです。しかし、脳と体は神経を通じて、密接に連結しています。
そのため、体の機能が衰えると、脳の働きも連動して衰えていきます。だから、頭と体をバランスよく鍛えていく意識が、とても大事なのです。
とはいえ、脳機能の維持が目的なら、別にマラソンや激しい筋トレは必要ありません。時間のあるときに、腕と足をグルグル回す・足踏みをする、その程度で十分です。もちろん掃除や買い物だって、脳にとっては立派な刺激になります。
大事なのは、運動量ではなく習慣化です。最初は、庭に出てみるだけでもいいんです。慣れてくれば、「家の周り」「町内」「1時間のウォーキング」と、徐々に運動量は増えていきますから。
体を鍛えてやろうなどと気負わずに、ごく普通の生活を維持するところから、スタートしてみてください。
高齢者が脳トレに取り組むメリット
オススメの脳トレを紹介する前に、高齢者が脳トレに取り組むメリットを明確にしておきたいと思います。メリットを知らずにスタートすると、途中で飽きてしまう可能性が高いからです。今回解説するメリットは、以下の5つです。
- 認知症リスクの低減
- 記憶力の改善
- 頭と体の両方がレベルアップ
- 抑うつ・不安の緩和
- コミュニケーション機会の増加
それでは、ひとつずつみていきましょう。
認知症リスクの低減
日本の認知症患者数は2020年度時点で602万人ほどおり、2060年には850万人を突破すると予測※されています。もし認知症のリスクを少しでも減らしたいと思うのであれば、できるだけ早く脳トレに取り組んでください。
認知症は、ようするに脳の認知能力が極端に低下している状態です。認知機能の低下が深刻なレベルにまで進行すれば、いくら脳トレをしてもあまり効果は期待できません。ところが認知症の予防としてなら、脳トレに取り組む価値は十分にあります。
前述のとおり、脳トレが認知症の予防や改善に効果があるというデータは、数多く発表されています。機能低下のレベルがごく軽度であれば、認知機能の悪化を食い止めてくれるだけでなく、ある程度の機能回復も期待できるでしょう。
ただし、認知症の予防が目的なら、気になる症状に適した脳トレを選ぶ必要があります。記憶力を改善したいのに、計算クイズをしてもあまり意味がありませんよね。反対に、計算力を鍛えるのに、間違い探しをやっても思うような効果は得られないでしょう。
別記事にて、認知症の症状別に、オススメの脳トレを紹介しています。自分の気になる症状が明確な人は、まずは該当する脳トレからスタートしてください。
※参考:3 高齢者の健康・福祉|平成29年版高齢社会白書(概要版) – 内閣府
◆認知症の症状別脳トレについては、コチラの記事でお読みいただけます
記憶力の改善
認知症といえば、一般的に記憶力の低下をイメージする人が多いと思います。「人の顔がわからない」「今日やったことを忘れてしまう」といった症状が進行すれば、独力で通常の生活をおこなうことはほぼ100%不可能でしょう。
しかし、ここまで深刻な状況になる前に脳トレへ取り組めば、記憶力の低下はあくまでも年齢なりの落ち込みで済む可能性が高いです。
人間の脳内では、千数百億個もの神経細胞が互いに結合して、巨大な神経ネットワーク(ニューロンネットワークとよぶ)を構築しています。なにか脳へ情報がインプットされれば、その情報は電気信号として、ニューロンネットワーク内に伝達されていくわけです。
ところが前述のとおり、記憶の回路で発生する電気信号は、加齢とともに弱くなっていきます。そこで脳トレの出番なわけです。脳トレで新しい刺激を脳に与えると、この電気信号が徐々に強さを取り戻してくれるでしょう。
神経衰弱のようなメモリーゲームや、間違い探しなど、記憶力改善に役立ってくれる脳トレは数多くあります。記憶力改善の方法については、別記事で詳しく紹介しているので、そちらを参照してください。
◆記憶力を上げるそのほかの方法については、コチラの記事でお読みいただけます
頭と体の両方がレベルアップ
脳トレには、大きく「頭を使うもの」と「体を使うもの」の二種類があります。この二種類の脳トレをうまく組み合わせれば、頭と体の両方をバランスよくレベルアップすることも可能です。
まず頭を使う脳トレですが、「記憶力を鍛えるトレーニング」「数字や文字を記憶するトレーニング」「論理的思考力を鍛えるトレーニング」など、こちらはすぐにイメージできると思います。
一方で、体を動かすトレーニングはあくまでも運動と認識している人が多く、脳トレという意識はあまりもてないかもしれません。
しかし体を動かすと、全身の血流がよくなります。とくにウォーキングやリズム体操のように下半身を中心に動かせば、太ももとふくらはぎのポンプ機能が活性化して、より血流が促進されるでしょう。
そうすると、当然脳に供給される血液量も増えます。つまり、適度な運動を習慣にすれば、血液中に含まれる脳の栄養素「ブドウ糖」と「酸素」の供給量も増え、脳がより活性化しやすくなるのです。
時間がないときには、末梢神経が集まる手や指をぐるぐる回すだけでも、十分脳トレ効果はあります。できる範囲でよいので、ぜひ積極的に体を動かしていきましょう。
◆頭と体両方の脳トレ方法については、コチラの記事でお読みいただけます
抑うつ・不安の緩和
脳トレとうつ病の関係については、まだまだ未知数の面が多く、脳トレをやれば必ずうつ病や不安が解消されるとはいいきれません。とはいえ、脳トレに抑うつ効果があるという大学の研究結果も数多くあり、試してみる価値は十分にあると思います。
うつ病に対する脳トレの研究結果例は最後の章で紹介するとして、ここでは運動を活用した認知機能トレーニング「コグニサイズ※」をご紹介しておきましょう。
コグニサイズは、国立研究開発法人国立長寿医療研究センターが開発した、頭と体を同時に使い認知機能の衰えを予防するトレーニング法です。
コグニサイズの手引を読んでみると、うつ病を含む35%の要因は、コグニサイズで改善が可能であると書かれています。もちろん、必ずしもコグニサイズにこだわる必要はありません。頭と体の両面から好きな脳トレに取り組めば、同様の効果が期待できるはずです。
なお、具体的な脳トレについては、このあと詳しく紹介していきます。
※参考:国立研究開発法人国立長寿医療研究センター コグニサイズ
コミュニケーション機会の増加
年齢を重ねるごとに友人と会う機会が減ってしまい、なんともいえない寂しさを感じている人も多いのではないでしょうか。普段仕事や家事に忙しくて、なかなか人とゆっくり会う時間が取れない人は、ぜひ脳トレに取り組んでみてください。
脳トレをはじめると、同じ脳トレをやっている仲間とコミュニケーションを取る機会が、劇的に増えます。たとえば料理が好きなら、友達や家族と一緒に料理パーティーはどうでしょうか。美味しいものを食べながら会話をすれば、自然と笑みがこぼれてくるはずです。
絵や楽器演奏などを趣味にしている人は、スクールに通ってみるのもいいですね。同じ趣味の人とワイワイ話をすれば、脳のストレスなど一発で吹き飛んでいくでしょう。
また、友達や恋人と一緒に、郊外の公園で散歩するのも楽しそうです。外出するのが億劫な日は、オンラインゲームで世界中の同好者とバトルするのもよいかも……
そう、コミュニケーションの観点からいえば、脳トレの種類はあまり重要ではありません。脳トレを介して、誰かと触れ合うこと自体に価値があるのですから。
◆コミュニケーションの重要性については、コチラの記事でお読みいただけます
高齢者にオススメの頭脳系脳トレ9選
脳トレは大きく、主に頭を使う「頭脳系」と、体を動かす「作業系」にわけられます。まずは、いわゆる多くの人が脳トレとイメージするであろう、頭脳系のオススメ脳トレを9つ紹介します。
クロスワードパズル
脳トレの定番といえば、やはりクロスワードパズルでしょう。クロスワードパズルは、タテ・ヨコ別に書かれたヒントをもとに、正しい言葉をマスに当てはめていくゲームです。
書かれているのはあくまでもヒントなので、なかなか答えが出てこないときは、本当にイライラ(よい意味で)するものです。考えに考え抜いて、やっと答えがわかったときの爽快感は、なかなかほかの脳トレでは味わえない楽しさだと思います。
またクロスワードパズルは、雑誌も多数発行されているし、ネットやアプリを探せばいくらでも新しい題材がみつかります。未経験のかたは、まずはいちど、チャレンジしてみてくださいね。もしかしたら、その楽しさにハマってしまうかもしれませんよ。
ジグゾーパズル
ご存知のように、バラバラのピースを1枚の絵に組み立てていくのが、ジグゾーパズルです。このジグゾーパズルを脳トレとして考えると、大きく3つの効果が期待できます。
■ 左脳と右脳の連動
■ トライ&エラー&改善のサイクル
■ 最後までやり抜く忍耐力
なかでもとくに大事なのが、やはり左脳と右脳の連動です。バラバラになったピースを少しずつ組み立てていくには、まず左脳による正確な分析が欠かせません。しかし、分析だけではうまく組み立てられないのが、ジグゾーパズルのおもしろいところです。
「このピースを組み合わせたら、ここにはまりそうだな」そういった「右脳の直感力」がなければ、時間ばかりがかかってしまい、おそらく途中でイヤになってしまうでしょう。
私たちの日常生活では、どうしても言語や分析・計算といった、左脳ばかりが使われがちです。逆に、直感・空間認識力・想像力が得意な右脳を使う機会は、どんどん減っています。
ところがジグゾーパズルをすると、とくに意識することなく、左右両方の脳がバランスよく鍛えられるんです。普段左脳寄りの生活をしている自覚のある人は、ぜひジグゾーパズルに挑戦してみてください。
◆右脳活用についてはコチラの記事でもお読みいただけます
計算問題
頭を使うという意味では、計算問題もかなりオススメです。計算機の普及もあり、普段自分で計算をする機会が、驚くほど少なくなりました。だからたまに、自分の頭のなかで計算をすると、脳は思い切り動き出します。
もちろん、微分積分のような複雑な計算は必要ありません。計算問題の初心者なら、「56 + 5 = ◯」のようなごく簡単な問題で十分楽しめると思います。
とはいえ、これも個人差が大きいジャンルです。途中でネタ切れにならないよう、各レベル別の問題を多めに用意しておきましょう。
漢字クイズ
計算はちょっと苦手だという人なら、漢字クイズはどうでしょうか。なんでもスマホで検索してしまう若者世代と違い、高齢者は漢字に対してより慣れ親しんでいます。問題のバリエーションも多いですから、きっと楽しく脳トレができるはずです。
オススメの漢字クイズとしては、「読み方当てクイズ」や「穴埋めクイズ」などがあります。読み方クイズは、文字どおり、むずかしい漢字の読み方を当てるクイズです。単純ですが、「あー、これなんて読むんだっけ?」と、脳がビシビシ鍛えられること請け合いですよ。
ちなみに以下の漢字を、あなたは読めますか?
- 啄木鳥
- 陽炎
- 諂う
- 牛蒡
⇓
答え:1キツツキ、2かげろう、3へつらう、4ごぼう
普段目にすることの少ない漢字は、まったく読み方がわからないですね……
間違い探し
高齢者の脳トレとしては、間違い探しも非常にオススメです。なんといっても、間違い探しをすると、ワーキングメモリが鍛えられます。
間違い探しというのは、いうなれば「こまかい観察を繰り返すゲーム」です。2枚の絵を見比べながら、脳に情報を一時保管しておいて、また別の場所を観察する。その繰り返しのなかで、違和感を探していくのが、間違い探しなのです。
間違い探しでは、2枚の絵をいちどに見比べるので、全体をフワッと把握する「空間認識能力」が自然と鍛えられます。また、相違点をじっくりと探す過程で、観察力や集中力も同時に身につくはずです。
なおさいわいなことに、間違い探しは、アプリで簡単に問題が手に入ります。余裕のある人は、時間制限つきゲームを選ぶと、より脳トレとしての効果が高まるでしょう。
◆ワーキングメモリについてはコチラの記事でもお読みいただけます
将棋
今回紹介する脳トレのなかで、将棋だけが、誰かと対戦するスタイルになっています。こういった対戦ゲームのよいところは、なんといっても、「相手に勝ちたい」という向上心が生まれるところでしょう。
あまり過度に対抗しすぎるのは問題ですが、ちょっとしたライバル心は、脳の司令塔とよばれる「前頭葉」や「海馬」に適度な刺激を与えてくれます。
将棋は、制限時間をオーバーすれば即負けです。だから、常に時間配分を考えつつ、何手も先を予測して打つ手を決めていかなければなりません。
もちろん、私たちアマチュアは、そこまでシビアな環境でゲームをする必要はないです。ごく一般的に、30秒〜1分間隔でゲームを進めていくだけでも、集中力や想像力は十分鍛えられます。
最近では藤井聡太プロの活躍で、将棋に興味をもつ人が激増しており、対戦相手探しに苦労することはないでしょう。どうしても相手がいなければ、ひとりで遊べるアプリもたくさんあります。まずは、気軽にアプリをダウンロードしてみてはいかがでしょうか。
日記
高齢者とよばれる年齢になり、人の名前が思い出せないようなことが続くと、どうしても認知症への不安を感じてしまうものです。なかでも、時間や場所がわからなくなる「見当障害」を恐れている人は、少なくないと思います。
今まで親しくしていた人の顔や、今日の日付がわからなくなる状況を想像したら、本当に不安になりますよね。見当障害を回避するには、日記をつけるのがオススメです。
日記をつけるためには、その日に起きたできごとや交流のあった人について、じっくりと思い返す必要があります。もちろん日記なので、自然と日付や曜日について意識するようになり、見当障害の予防に大きく役立ってくれるでしょう。
また忙しい現代人は、とくに脳の働きに問題がなくても、つい曜日や季節感を忘れがちです。最初は、ほんの数行でも構いません。ぜひ、毎日のできごとを記録してみてください。脳トレとしてだけでなく、あとから読み返すと、きっと「よい思い出の記録」になってくれると思いますよ。
写真
記念撮影は別として、写真を撮る際には、ただ闇雲にシャッターを押すわけじゃないですよね。多くの人は、「これはいい!」と心を動かされる場面に遭遇したから、思わず撮影してしまったのではないでしょうか。
そうなると、その想いをできるだけよい形で残そうという意識が働き、構図や色合いなども気になってきます。この「ワクワクしながら考える行為」こそが、まさに脳トレの基本だと思うんです。
もちろん、なにも考えずに、すぐによい構図が思い浮かぶわけがありません。最適な構図を瞬間的に引き出すためには、普段から雑誌や動画をみて、頭のなかにいくつも構図をストックしておく必要があります。こういった好奇心は、脳にとって本当に大事です。
また、写真撮影を習慣化すれば、自然と外出する機会が増えます。被写体を求めて歩く機会が増えれば、それだけ足腰が強くなりますから、そういう意味でも写真撮影は非常にオススメです。
速読トレーニング
先ほど、料理が最高の脳トレだと紹介しましたが、速読トレーニングも負けないくらい脳を鍛えてくれます。
なかでも私の指導する右脳速読では、普段使わない右脳をフル活用していきます。そのため、右脳のもつ「ひらめき」「創造力」「全体像把握」といった能力が、大きくアップしていくわけです。
ちなみに速読といえば、多くの人は「目を高速で動かすイメージ」をもっているみたいですね。しかし、右脳速読では、目をグルグル動かすようなことはしません。ずっと目を動かしていたら、すぐに目が疲れてしまいます。
その代わりに、イメージ化が得意な右脳で、読んだ文章を映像化していきます。右脳速読のしくみについては、別記事で詳しく紹介していますので、よかったらそちらの記事を読んでみてください。
◆右脳速読についてはコチラの記事でもお読みいただけます
高齢者にオススメの作業系脳トレ5選
体を使う脳トレは、あまり脳トレというイメージがないかもしれません。ところが、適度な運動が脳機能を改善してくれるという研究データは、本当に数多くあるんですよ。今回は、誰でも気軽にできる作業系の脳トレを、5つほど紹介していきます。
ウォーキング・体操
前述のとおり、脳と体は密接に連動しています。だから、体を動かすことだって、立派な脳トレに成りうるんです。
もちろん、年齢を考慮すれば、おのずとやれる運動は限られてきます。ムリをしないという意味では、やはり定番のウォーキングや体操がもっともオススメです。
適度な運動により心肺機能が強くなると、全身の血流が改善されます。もちろん脳の血流もよくなり、栄養と酸素がしっかりと脳へ届くわけです。
また、普段いかない場所を選んでウォーキングすれば、脳は新鮮な刺激を受けます。毎日とはいいませんが、週に1回くらいは自然のなかに飛び出してみてください。本当にストレスが、スーッと消えていきますよ。
ウォーキングや体操なら、道具もいらないし、準備にお金がほとんどかかりません。また、いつでも好きなときに取り組めるので、途中でやめてしまう可能性がグッと下がります。
なお、比較的体力に自信のあるかたなら、ゴルフや山登りでも構いません。やって楽しい運動が一番ですから。ムリをしない程度に、どんどん体を動かしていきましょう。
◆リズム体操については、コチラの記事でお読みいただけます
ヨガ
ヨガは、心身の健康を維持するための効果的な手段として、日本でも広く普及しています。ヨガと聞けば、詳しいことを知らなくとも、あの独特なポーズをイメージする人は多いでしょう。
正直、普段体をあまり動かさない高齢者(とくに男性)には、あのポーズを完全にマネするのはかなり大変です。でも、安心してください。
ヨガのインストラクターみたいな美しいポーズはムリでも、続けてさえいれば体の歪みが矯正され、自然と体も柔らかくなってくるはずです。そうなれば、デスクワークや立ち仕事でガチガチになった体も、少しずつ楽になってくるでしょう。
またヨガで大切なのは、ポーズだけでなく、その独特な呼吸法です。ゆっくり深く呼吸することで、副交感神経が優位になり、気持ちが落ち着きます。体を心の両面をいちどにケアできるところが、ヨガの素晴らしさなんですよね。
最近は、地方でもヨガ教室が簡単にみつかります。スクールの雰囲気もわかるので、興味のある人は、いちど見学してみるとよいでしょう。
◆ヨガについては、コチラの記事でもお読みいただけます
左右非対称運動
先ほどヨガを紹介しましたが、もう少し難易度の低いものがいいのであれば、左右非対称運動をオススメします。左右非対称運動といっても大げさなものではなく、ようは左右で違う動きをしましょうという話です。
別記事でも紹介したように、家事を左手(利き腕が右手の場合)でやるのもいいですね。ぎごちない左手でも、繰り返せばある程度スムーズに動かせるようになります。これは、脳が左手主導の神経伝達回路を、新しく構築してくれた結果によるものです。
利き手と反対側を主導して動かすなら、内容はなんでも構いません。個人的には、ピアノやギターといった楽器演奏はオススメですね。単に左手を動かすだけでなく、右半身との連携(右脳と左脳の連携)が強化されます。
もちろん、左手でスマホを操作するのだって、立派な脳トレです。自分のできることから、ぜひ気軽にチャレンジしてみてください。
◆利き手と逆の手を使った作業については、コチラの記事でもお読みいただけます
料理
手先を動かし、レシピや献立を考える料理は、脳トレにピッタリです。ひと言で料理といっても、料理が完成するまでには、じつにたくさんのステップをこなしていかなければなりません。
メニューを決めて、材料を選ぶ。実際に買い物へいき、食材を丹念に調理していきます。味を整えたら、いよいよ食事のスタートです。でも、食べたら終わりではありませんよ。食後には、後片付けやまた次の食事の計画などが待っています。
美味しい料理をつくろうと思えば、材料の切り方ひとつ取っても、食材に適した切り方が決まっています。季節や体調に応じて、調味料の加減を絶妙に調整していく姿は、まさに脳トレそのものです。
また、自炊をすれば、味の濃い外食に頼らなくても済みます。健康の基本である食事が整えば、当然脳にもよい影響が現れてくるはずです。本当に料理は、最高の脳トレだと思います。
塗り絵
誰でも気軽にできる脳トレとなれば、塗り絵などは非常にオススメできます。言ってしまえば、ただ色を塗るだけですから、できなくてイライラすることもありません。元絵と色鉛筆があればとりあえずスタートできるので、費用の面でも安心です。
塗り絵はその手軽さに対して、非常にメリットの多い脳トレです。たとえば、すぐに思いつくだけでも、以下のような能力の向上が期待できます。
■ 集中力
■ 記憶力
■ 完遂力
■ 色彩感覚
■ 手先の動き
集中力や完遂力はすぐに理解できるとして、もしかすると、塗り絵と記憶力の関連性がピンとこない人もいるかもしれません。
でも、考えてみてください。バラの花が描かれた塗り絵なら、おそらくほとんどの人が赤を選びますよね。それは、頭のなかに、赤いバラをみた記憶がしっかりと残っているからでしょう。このように塗り絵には、記憶をさかのぼり、整理してくれる働きがあるのです。
また、塗り絵をする際には指先をこまかく動かすので、末端の血流がよくなり、脳にもよい影響をおよぼしてくれます。
もちろん、どのような色を塗ればいいのか、塗り絵に正解はありません。自分の好きな色を、自由に塗ってみてください(先ほどの赤いバラもあくまでも一例にすぎません)。きっと、ストレスが吹き飛んでいくはずです。
高齢者に脳トレをおこなう際の注意点
自分自身が好きで脳トレをやるケースと違い、身内に脳トレを勧める際には、脳の衰えに不安を感じている気持ちへ寄り添う配慮が必要です。せっかく芽生えた脳トレへの興味を削いでしまうことのないように、以下の3点は必ず知っておいてください。
決して無理強いはしない
まず、当たり前の話ですが、無理強いは絶対にダメです。いくらよかれと思っても、脳トレをやる本人にその気がなければ、まだ脳トレをするタイミングではありません。
たしかに、本人が脳トレの必要性や楽しさに、気づいていないケースも考えられます。その場合でも、まずは一緒にやってみるなどして、あくまでもさりげなく自然に脳トレを知ってもらうべきです。
また、すでに脳トレに取り組んでいる人でも、なんらかの理由でたまたま気が乗らないときもあるでしょう。そういう場合も、相手の気持ちを尊重してあげてください。
ケガのリハビリとは性質が違いますから、少しくらいやらない日があっても、全然問題ありません。とにかく、無理強いをしてやる気を削ぐのだけは、絶対に避けるようにしましょう。
プライドを傷つけるのは絶対にNG
前述の「無理強いをしない」とも共通する話ですが、高齢者のプライドを傷つけるのも絶対に避けたいですね。
ある程度の年齢になると、デイケアセンターの利用なども増えてきます。そうなると、レクリエーションの一環として、ゲームやクイズをする機会も出てくるでしょう。
そこでよい結果を出せないと、プライドが傷ついて、今後脳トレを拒否する可能性があります。これは自宅でも同じです。将棋のように対戦相手がいるゲームの場合、負けてしまうと、相手との関係性までおかしくなるかもしれません。
いずれにしても、高齢者は自分の衰えに敏感です。できない自分を意識させないような配慮は、欠かさないようにしたいですね。
やはり楽しいが一番
生活に必須ではない脳トレだからこそ、やはり楽しさがないと継続できません。脳トレの種類を自分で選べる場合は別として、デイケアセンターでの脳トレには少々配慮が必要です。
ひと言で高齢者といっても、脳や体の状態は人それぞれ違います。認知症が進みかけている人と、体に不調があっても脳の働きは正常な人では、脳トレの種類も難易度もまったく変わってくるでしょう。
したがって、いろいろな状況の人に対応できるように、少なくとも「初級・中級・上級」3種類のレベル別題材は用意しておきたいところです。そうすれば、レベルが合わずに脳トレが嫌いになる最悪のケースにまでは、まず発展しません。
また、上級者向け題材があると、初級・中級を使っている利用者の、モチベーションにもつながります。「もう少し慣れたら、もっとむずかしいのに挑戦してみたい」こう思ってもらえたら、その脳トレは大成功だといえるのではないでしょうか
高齢者に脳トレをオススメする科学的根拠
ここまで脳トレについて、さまざまな情報をお伝えしてきました。しかしいまだに、脳トレを疑問視する人がいるのも、紛れのない事実です。
そこで最後に、高齢者に脳トレがオススメな科学的根拠を、もう少し紹介しておきます。脳トレを過信しすぎてはいけませんが、こういったデータをみれば、きっと「よし!やってみよう」と前向きな気持になれるはずです。
脳トレと認知機能の関係
「脳トレ」とは、思考力・記憶力・集中力といった認知機能を鍛えるための、さまざまな活動やゲームを指します。その効果については数多くの科学的な研究データがあり、とくに高齢者の認知機能維持や回復に対する効果が注目されています。
たとえば、2015年10月、サウジアラビアのキングサウド大学医学部では、Lumosityを使用した認知機能回復に関する研究※がおこなわれました。私どもの別記事でも、オススメの脳トレアプリとして、これまで何度もLumosityを紹介してきましたよね。
このLumosityによるエクササイズを「1日約15分・週7日・3週間」おこなった結果、注意力や運動速度など、さまざまな認知領域で改善が認められたそうです。
もちろんこういった効果については、当然個人差もあるし、必ず再現されるとは限りません。でも、疑って脳機能の衰えをただ心配するより、まずはやってみて、少しでも効果が感じられればラッキーである。そう考えたほうが、よほど建設的だと私は思うのです。
みなさんは、どう感じますか?
※参考:Brain Training Games Enhance Cognitive Function in Healthy Subjects – PMC
◆オススメの脳トレアプリ「Lumosity」については、コチラの記事でお読みいただけます
脳トレが高齢者の生活の質をレベルアップしてくれる
「脳トレが高齢者の生活レベルを向上させる」という点についても、多くの研究データが存在します。
ハーバード大学メディカルスクールのサイト※1には、定期的な運動が「記憶」「集中力」「問題解決」といった認知機能を向上させてくれるという記述がありました。
もちろん運動だけではなく、絵画や楽器演奏、新しい言語の習得といったアクティビティが、脳機能によい影響を与えるとも述べています。
個人的に、音楽の脳トレ効果には大きな可能性を感じており、調べていくうちに音楽と認知機能に関する研究データをいくつか発見しました。今回は、オックスフォード・アカデミーに掲載されている2014年の研究※2をご紹介します。
この実験では、89名の認知症患者に、「歌を歌う」「歌を聴く」「発声練習」「リズムトレーニング」などを10週間おこないました。通常の認知症ケアに比べて、音楽を使ったケアを受けた患者の多くに、気分の向上、遠隔記憶の改善が見られたそうです。
また、注意力や遂行力といった一般的な認知機能の改善にも、多少ながら改善の傾向が見受けられました。これらはほんの一例ですが、ほかにも高齢者の脳に対する脳トレ効果を示す研究結果は数多くあります。
※1:Train your brain – Harvard Health
◆音楽が脳に与える影響については、コチラの記事でお読みいただけます
脳トレがうつ状態や不安を軽減してくれる可能性
最後に、ストレスの多い現代人がもっとも気になるであろう、「脳トレとうつ状態の関係」に関するデータを紹介します。
パースにあるカーティン大学のパトリック・クラーク博士は、オーストラリアではじめて「うつ病に対する脳トレの治療効果」に関する研究※に取り組んだ人として有名です。
パトリック博士は、脳トレでネガティブな思考パターンを修正できれば、ストレス耐性がつき、不眠症のような症状が改善できると考えました。
そこで実際に脳トレによる実験をおこなったところ、感情や注意力をコントロールする脳の部位の活性化が記録されたのです。もちろん、脳トレによる修正具合には個人差があり、大きく影響を受ける人もいれば、まったく反応しない人もいます。
しかし、うつ病やストレスで苦しんでいる人の思考パターンがネガティブなのは、誰がみても明らかです。そういう思考パターンを、脳トレで少しでも改善できる可能性があるなら、取り組む価値は大いにあるでしょう。
まとめ
誰でも高齢者になれば、脳の衰えに対して不安を感じています。脳の衰え、とくに認知症を個人レベルで治療するのは、ムリです。それは、医療関係者にお任せするしかありません。
しかしできるだけ自分の頭で考え、脳を使う機会を増やしていけば、脳機能を向上させることは十分可能です。
そのための方法として、今回「脳トレ」をご紹介しました。自分に合う脳トレがあれば、それをきっかけとして、どんどんいろいろな脳トレにチャレンジしていただければと思います。
なお、究極の脳トレとでもいうべき「右脳速読」の詳細を確認したいかたは、下記のリンクからZoom体験会にご参加ください。