記事の監修
株式会社瞬読 代表取締役山中恵美子
大学卒業後、関西テレビ放送株式会社に勤務。2009年学習塾を開講し3万人の生徒が卒業。
学習効果を上げる方法として速読を取り入れる。これが後の「瞬読」となり生徒が次々と難関校に合格。
2018年瞬読のみの講座が開講し、現在受講生は2,600名を超える。
著書『瞬読』は10万部超えのベストセラーに。その他、TV・ラジオなどメディアにも多数登場し、全国に瞬読を広めている。
私たちの脳は毎日24時間、休むことなく働いています。記憶や感情のコントロール、そして身体の動きまで、すべての行動はこの脳がコントロールしているのです。そのため、脳をいかによい状態に維持できるかで、生活のクオリティが大きく変わってきます。
この記事では、「食事・運動・睡眠」という3つの観点から、脳にいいことについて掘り下げていきます。この3点を改善できれば、あなたの脳の働きがよくなり、生活レベルがよりよく変化していくのは間違いありません。
目次
脳にいいことその1:食事が脳に与える影響
なんといっても、食事はすべての基本です。食べたもので私たちの体はつくられていますから、「なにをどのように食べるか」が非常に大きな意味をもっています。もちろん、脳も体の一部なので、口にする食べものや飲みものの影響を非常に受けます。
脳によい食材や正しい食事法について、しっかりと頭に入れておきましょう。
脳にいいオススメの食材
誤解のないようにお断りしておきますが、これだけ食べておけばいいという万能スーパー食材は存在しません。三大栄養素(たんぱく質・脂質・炭水化物)を中心に、ミネラルやビタミンをバランスよく摂取するのが、食事の基本です。
体によい食材はそれこそ数多くあるし、好みの問題もあるでしょう。今回はひとつの参考例として、ハーバード大学医学大学院管轄ハーバード・ヘルス・パブリッシングのサイトに掲載されている「脳にいいオススメの食材※」を紹介します。
- 緑の葉物野菜(ケール・ほうれん草・ブロッコリーなど)
- 脂肪分の多い魚(サケ・タラ・ツナ缶など)
- ベリー類(イチゴ・ラズベリーなど)
- カフェイン(紅茶・コーヒーなど)
- ナッツ類(くるみなど)
ケールやブロッコリーといった緑黄色野菜には、ビタミンKや葉酸、ベータカロチンなどが豊富に含まれており、「認知機能の低下を遅らせる効果がある」という研究データもあるそうです。
魚に多く含まれるオメガ3脂肪酸(不飽和脂肪酸)は、脳によい栄養素として有名ですよね。少なくとも週に2回は魚を食べるように、ハーバード・ヘルス・パブリッシングのサイトでは提言しています。
カフェインは短期的な集中力を高めてくれるので、午前中に飲むのがとくにオススメです。ナッツ類には大量のオメガ3脂肪酸が含まれているので、魚類が苦手な人はこちらを積極的に食べてください。
※参考:Foods linked to better brainpower – Harvard Health
◆脳によい食材については、コチラの記事でもお読みいただけます
脳が老化しやすい人の典型的な食事とは
先ほど脳にいい食材を紹介しましたが、もちろん脳にあまりよい影響を与えない食材も数多く存在します。ハーバード大学栄養精神科医ウマ・ナイドゥ博士は、米大手放送局CNBCのメディアに、脳のために避けるべき5つの食品を寄稿※しています。
- 加工オイル
- 精製した糖分
- 加工食品
- 人工甘味料
- 揚げ物
スーパーでよく売られている大豆油やキャノーラ油を摂りすぎると、オメガ6脂肪酸の過剰摂取を引き起こします。調理に使う油は、できるだけオリーブオイルやココナッツオイルなどを選ぶほうが無難です。
過剰な糖分は、記憶障害を引き起こす可能性が高まります。お菓子やジュースだけでなく、白米や麺類、パンにも大量の糖分が含まれているので、こうした隠れた糖分には注意してください。
また、お菓子のような加工食品を多量に摂取すると、ほとんど食べない人に比べて、軽度のうつになる確率がアップするという研究が2022年に発表されています。
さらに人工甘味料は不安を増幅し、揚げ物は記憶力や認知力低下の要因になるという研究結果もあるそうです。英語で書かれていますが、脳の衰えに不安のあるかたは、上記記事を一読してみることをオススメします。
バランスがよいとは具体的にどういう食生活を指すのか
前述のとおり、たんぱく質・脂質・炭水化物を中心に、ミネラルやビタミンをバランスよく摂取するのが、バランスのよい食事の基本的な考え方です。具体的な割合については、その人が支持する食事法や志向などにより、少しずつ変わってきます。
今回は、農林水産省が2020年に発表した、バランスのよい食事に関するパンフレット※の内容を軸に紹介します。
パンフレットを読むと、たんぱく質「13〜20%」、脂質「20〜30%」、炭水化物「50〜65%」という割合を推奨していました。(ミネラルやビタミンのバランスについては、残念ながら表記はありませんでした)
また、食事の回数についても、できるだけ朝・昼・晩の1日3食が望ましいと書かれています。ただ、誰もがゆとりをもって、バランスの取れた食事を3食食べられるわけではありませんよね。忙しく料理する余裕のない人もいるし、金銭的負担も考える必要があります。
そういった問題点を解消するコツについても、このパンフレットには書かれているので、ぜひ参考にしていただければと思います。
※参考:考える やってみる みんなで広げる ちょうどよいバランスの食生活
◆バランスのよい食事については、コチラの記事でもお読みいただけます
脳にいいことその2:運動が脳に与える影響
食事と双璧をなす重要ポイントといえば、やはり運動でしょう。運動をまったくしない人と、運動を習慣化している人では、脳の働きが大きく変わってくる可能性もあります。
適切な運動方法とその頻度
適切な運動は、心身の健康を維持し、脳の機能を高めてくれます。基本的に、運動の内容はどれでも構いません。継続という意味でも、好きな運動を自由に選んでください。ただし、運動の強度と頻度については、最低ラインを守らないと、あまり効果は期待できません。
諸説ありますが、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)の提唱する以下の内容※が、ひとつの基準になるかと思います。
- 週に中強度の運動を150分、もしくは強めの運動を75分
- 週2日以上の筋力トレーニング
- 片足立ちのようなバランス運動を週に3日(65歳以上)
なおCDCでは、「体を捻ったり回したりする」「テレビをみながら片足立ちをする」「エレベーターではなく階段を使う」など、運動にカウントできる日常的な動作例を紹介しています。
しっかりと運動の時間を確保できればベストですが、どうしても時間を取れない場合は、まずこういった日常生活のなかでできる活動を増やしていきましょう。
※参考:Physical Activity Boosts Brain Health | DNPAO | CDC.
運動と脳の血流の関係
UTサウスウェスタン大学が、1年間有酸素運動を継続した19名を追跡調査※したところ、首周りの血管が柔らかくなり、脳の血流の増加が見受けられたそうです。もちろん、個人差もあるし、血流の増加が脳機能を必ず改善してくれるとは言い切れません。
しかし、ストレッチだけをおこなった人には血流の増加はみられなかったことを考えると、少なくとも「運動が血流改善に効果的であるのは間違いない」と考えて差し支えないでしょう。
血流が増加すれば、脳に送られる血液中の酸素や栄養量も増えますので、運動をして悪いことはひとつもありません。ぜひ、積極的に運動を習慣化していきたいところです。
では、どのくらい運動をすれば、血流改善に効果的なのでしょうか。血流改善にもっとも効果的な運動強度は、最大心拍数の約70%といわれています。ただ漠然と運動するのではなく、こまめに心拍数を測り、できるだけ70%をキープできるように意識してみてください。
もちろん、運動習慣の有無や体調にも大きく関わってきます。70%が厳しいと感じる場合は決して無理をせず、まずは50%の運動ができるように頑張ってみましょう。
※参考:Exercise boosts blood flow to the brain, study finds: Newsroom – UT Southwestern, Dallas, Texas
運動で脳がクリアになる理由
ウォーキングやダンスをすると、妙に頭がスッキリしますよね。悩みを抱えている人が、散歩中にふと解決策を思いついたなどという話もよく耳にします。
このように運動で脳がクリアになる経験をしている人は数多くいますが、その理由については案外知られていません。運動で脳がクリアになる主な理由としては、以下の3点が考えられます。
- エンドルフィン分泌量の増加
- BDNF(脳由来神経因子)の増加
- 血流の改善
運動はストレスホルモンのレベルを下げ、反対に「幸せホルモン」とよばれるエンドルフィンの分泌を促進します。エンドルフィンには、高揚感や幸福感をもたらす作用があるので、分泌量が増えれば気分も明るくなり、リラックス感をもたらしてくれるわけです。
BDNF(脳由来神経因子)は、神経細胞の成長や維持に大きく関わるタンパク物質です。記憶をコントロールする「海馬」に数多く存在しており、BDNFが増加すれば学習効率が大きく向上します。
「血流改善によって、脳に供給される酸素と栄養素が増え、脳が活性化する」というのは、先ほど「運動と脳の血流の関係」でもお伝えしたとおりです。
◆高齢者でもできる運動については、コチラの記事でお読みいただけます
脳にいいことその3:睡眠が脳に与える影響
これまで、ほかの記事でも、たびたび睡眠の重要性をお話ししてきました。睡眠が不足すると、脳の働きは著しく低下します。睡眠不足を自覚している人は、ぜひ睡眠について認識をあらためていきましょう。
良質な睡眠が脳を整理してくれる
人間の脳は、睡眠中に記憶を整理しています。といっても、寝ている間中、ずっと整理をしているわけではなく、記憶の整理がおこなわれるのはレム催眠の間だけです。ノンレム催眠中は、脳がほぼ完全に眠っている状態なので、頭に浮かんだ内容(夢)は記憶に残りません。
一方レム睡眠になると、体はリラックスしているものの、記憶を担う海馬などは普通通り活動を続けています。
ただし、レム睡眠が発生するのは、90分周期でひと晩に約4〜5回のみ。つまり、睡眠時間が少ないとレム睡眠の回数が減ってしまい、記憶を整理しきれない可能性が出てきます。レム睡眠の発生はコントロールできないとしても、やはり8時間以上の睡眠は確保したいところです。
◆睡眠と脳の関係については、コチラの記事でもお読みいただけます
睡眠不足が脳に深刻なダメージを与える
睡眠には、大きく「記憶の整理」と「疲労回復」の役割があります。睡眠が不足すると、記憶の整理が十分にできないというのは、先ほど説明したとおりです。
ここでは、症状がダイレクトに表れる「疲労回復」について、みていきましょう。まず、睡眠不足により十分な疲労回復ができないと、以下のような悪影響が考えられます。
- 認知機能低下
- 感情の乱れ
- さまざまな病気を引き起こす
極端な寝不足の日は、なんだか頭がぼーっとしますよね。目もしょぼしょぼするし、集中力も明らかに低下しており、勉強や仕事のパフォーマンスは著しく低下します。
さらに睡眠不足が続くと、怒りを抑えられなかったり急に悲しくなったりと、感情のコントロールがうまくできなくなる人も多いです。ストレスにも耐性が低くなり、こういった状況が続けば、うつになる可能性は大幅に高くなります。
また、睡眠不足は生活習慣病の原因になっているともいわれています。厚生労働省の睡眠不足に関するサイト※をみると、睡眠不足が睡眠障害レベルへ進行すると、糖尿病の発症リスクが1.5〜2倍にアップすると書かれていました。
このような悪影響を受けないためにも、最優先事項として、十分な睡眠時間を確保していきたいものです。
※参考:睡眠と生活習慣病との深い関係 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
睡眠の質を高める方法
睡眠不足が、さまざまな悪影響を引き起こすことがわかりました。これからはできるだけ8時間は寝るようにしようと、思ったかたもたくさんいらっしゃると思います。
しかしいくら長時間寝ても、睡眠が浅く、途中で何回も目が覚めるようでは、脳はきちんと休めません。以下の項目に注意して、できるだけ深い睡眠が取れるように、生活習慣を整えてください。
- 寝る時間をできるだけ一定にする
- 適切な睡眠環境を整える
- 就寝直前のアルコール・タバコ・食事を避ける
- 就寝前はデジタルデバイスの使用を控える
- ゆっくりと湯船に浸かる
- 適度な運動を習慣にする
- 朝起きたら日光を浴びて神経を切り替える
上記は、どれも大切な習慣ばかりです。できれば全項目をクリアしてもらいたいところですが、あまり気負いすぎるとプレッシャーになり、かえって睡眠の妨げになりかねません。
「寝具をよいものに変える」「外部の光をできるだけ遮断する」「横になったらスマホはみない」など、まずは睡眠環境を整えることからはじめてみましょう。
◆睡眠の質を上げる方法については、コチラの記事でもお読みいただけます
まとめ
今回は、「食事・運動・睡眠」という、生活のベースとなる観点から、睡眠について解説しました。脳は、人間の思考や動作を司る、非常に重要な臓器です。脳の働き具合によって、私たちの生活は大きく変化します。脳にいいことを習慣化して、ぜひ生活のクオリティを高めていきましょう。