記事の監修
株式会社瞬読 代表取締役山中恵美子
大学卒業後、関西テレビ放送株式会社に勤務。2009年学習塾を開講し3万人の生徒が卒業。
学習効果を上げる方法として速読を取り入れる。これが後の「瞬読」となり生徒が次々と難関校に合格。
2018年瞬読のみの講座が開講し、現在受講生は2,600名を超える。
著書『瞬読』は10万部超えのベストセラーに。その他、TV・ラジオなどメディアにも多数登場し、全国に瞬読を広めている。
高齢化が驚異的なスピードで進行する日本に住んでいると、やはり気になるのは、認知症です。認知症が進めば、自分ひとりで日常生活を営むのはむずかしくなってきます。
今回の記事では、認知症リスクを下げる働きのある予防トレーニング例を「身体編」と「頭脳編」に分けて、ご紹介します。認知症のリスクをなるべく抑えるためにも、気になるトレーニングがあればぜひ取り組んでみてください。
目次
認知症予防にトレーニングが必要な理由とは
認知症の原因は、病気や生活習慣の乱れ、刺激のない生活など、さまざまな要因が絡み合っているのが一般的です。認知予防トレーニングを紹介する前に、まずは認知症を予防するに当たって押さえておくべき基本的な知識を解説します。
そもそも認知症の予防は可能か?
認知症の発症を完全にストップするという意味でいえば、正直なところ、予防はむずかしいでしょう。しかし、身体と脳を適切に鍛えていけば、認知症の発症時期や進行度合いを遅らせることは十分に可能です。
具体的な改善ポイントについては、次項「WHOのガイドラインを参考にする」でお伝えしますが、基本的に「生活習慣をあらためて、身体と頭の両方をバランスよく鍛える」と考えておけば間違いありません。
今回は、生活習慣の改善について詳しく解説はしないので、別記事をご参照いただければと思います。
◆生活習慣の改善については、コチラの記事でお読みいただけます
WHOのガイドラインを参考にする
じつは認知症予防に対して、WHO(世界保健機関)が、「認知機能低下および認知症
のリスク低減」というガイドライン※を発行しています。このガイドラインでは、12の予防アプローチが提唱されており、認知症予防を考える人にとって非常に参考になるはずです。
具体的な予防アプローチは、以下の12点となります。
- 身体活動
- 禁煙
- 栄養バランスの取れた食事
- アルコールの制限
- 認知トレーニング
- 社会活動
- 体重管理
- 高血圧の管理
- 糖尿病の管理
- 脂質異常症の管理
- うつ病対策
- 難聴の管理
該当する項目がある人は、ぜひ積極的に該当項目の改善に取り組みましょう。ただし、アルコール依存や高血圧、うつ病といった医療の知識が必要な分野については、必ず専門的知識のある人と相談しながら慎重に進めてください。
当記事では、身体活動と認知トレーニングについて、具体的なオススメの方法を紹介していきます。
※参考:WHOガイドライン「認知機能低下および認知症のリスク低減」
身体と頭の両方をバランスよく鍛える
認知症予防には、頭(脳)だけでなく、身体のトレーニングも重要です。よく「運動は認知症と関係ないのでは?」と思っている人がいます。しかし、運動をすれば心肺機能が鍛えられ、全身の血流がよくなりますよね。
そうなると、当然脳の血流もよくなり、脳へ大量の酸素と栄養が届けられます。頭脳系のトレーニングで脳機能の働きを鍛えるのも重要ですが、まずは脳そのものを元気にしてあげることが大切なのです。
のちほど、身体トレーニングとしてウォーキングや水泳などを紹介しますが、運動の種類よりも強度がポイントになります。心拍機能と血流改善が主な目的なので、軽く息が弾むくらいの軽めの強度がよいでしょう。
クロスワードパズルや間違い探しといった頭脳系トレーニングは、少し頑張らないと答えがわからないというレベルがもっとも効果を発揮します。
トレーニングの適切な強度に関しては、別記事でも解説しているので、よかったらそちらも読んでみてください。
◆脳トレの適切な難易度については、コチラの記事でもお読みいただけます
効果的な認知症予防トレーニング【身体編】
定期的な身体トレーニングは、高血圧や糖尿病といった認知症を引き起こす恐れのある病気を遠ざけてくれます。今回は、4つのトレーニングを紹介しますが、もしほかに興味のある運動があればそちらに取り組んでいただいてもまったく問題ありません。
軽めのウォーキング
軽めのウォーキングは、認知症予防におけるもっとも手軽で効果的な方法のひとつです。日々の軽いウォーキングは心血管系の働きを向上させてくれるし、なにより適度な筋肉がつき、少しくらい激しい作業をしても疲れにくくなります。
ER of Texas(テキサス救急外来病院)のサイト※では、30分軽めのウォーキングをおこなった際のメリットを8つ紹介しています。
- 認知機能の向上
- 認知機能低下リスクの軽減
- 創造性の向上
- メンタルの向上
- 集中力の強化
- ストレス解消
- 良質な睡眠
- 脳細胞の結合性の強化
このリストを見れば、ウォーキングが単なる運動ではなく、認知機能やメンタルも同時に鍛えてくれる非常に効率のよいトレーニングであることが一目瞭然です。
ヨガや水泳より取り組むまでのハードルが低いので、はじめてトレーニングをする人にはまずウォーキングをオススメします。
※参考:8 Ways Walking Can Boost Your Brain Health.
ヨガ
普段私は、メンタルケアの方法として、よくマインドフルネス瞑想を勧めています。自分の心とじっくり向き合える点と合わせて、座ってできるので取り組むハードルが低いと感じるからです。
一方ヨガは、体の固さを理由に、敬遠する人も少なくありません。たしかに雑誌や動画で見る柔らかい身体の動きを見たら、怖気づいてしまうのも当然でしょう。でも安心してください。身体の動きは、あくまでもヨガの一面でしかありません。
それよりも、身体の動きと呼吸や瞑想を通して、安らかな精神状態を作り出すのがヨガ本来の目的になります。だから、教科書通りのポーズができなくても、まったく問題ありません。
慣れれば、心の安定と同時に柔軟性や体力も鍛えられるヨガは、非常に効率的です。幸い、日本におけるヨガの知名度は高く、地方でも講座がたくさん開催されています。近場でヨガのレッスンが受けられるかどうか、いちど調べてみてはいかがでしょうか。
◆ヨガのメリットについては、コチラの記事でもお読みいただけます
水泳
水泳は、認知症予防においても大きな効果が期待できる運動のひとつです。泳ぎ方によって鍛えられる部位は少しずつ異なりますが、基本的に全身運動なので、どの泳ぎ方を選んでも心肺機能が格段に向上します。
全身の血流も改善するため、肩こりや腰痛なども軽減するし、ストレス軽減・睡眠の質の向上・ダイエット効果も期待できます。
また、水泳はバランス感覚を養い、認知症を招く「転倒→寝たきり→認知機能低下」という負のスパイラルの予防にも効果的です。
さらに、水中での活動は、関節への負担が少ないのも嬉しいポイントです。体重が重くてウォーキングでは膝に負担がかかってしまう人でも、水泳なら無理なく運動ができます。
コグニサイズ
コグニサイズ※は、「コグニション(認知機能)」と「エクササイズ(運動)」を組み合わせた、新しいタイプのトレーニングです。
考案したのは国立長寿医療研究センターという国の機関であり、認知機能低下の予防を目的につくられているトレーニングなので、信頼性は非常に高いといえるでしょう。
具体的には、踏み台昇降やステップなどをしながら、しりとりや計算問題などを解いていきます。運動の種類や認知トレーニングの内容は、好みのものを選んでいただいて構いません。
ただし、以下3つのポイントはできるだけ守るように意識してください。
- 毎日おこなう
- 10分以上続けられる適切な強度でおこなう
- 複数のトレーニングを組み合わせる
もしかすると、最初から10分続けるのはむずかしいかもしれません。でも、10分間を目安にしておけば、慣れとともに必ずできるようになります。もちろん、運動をともなうトレーニングなので、無理は絶対に禁物です。
コグニサイズ継続のポイントに関しては、以下の資料にわかりやすくまとめられているので、ぜひ参考にしてください。
効果的な認知症予防トレーニング【頭脳編】
今度は身体ではなく、主に頭脳を鍛えるタイプのトレーニングを4つ紹介します。同じ頭脳を鍛えるトレーニングでも、負荷のかかる認知機能は少しずつ異なります。4つのトレーニング以外にも脳トレは数多くあるので、興味のある方は以下のサイトでご確認ください。
◆認知機能別オススメ脳トレについては、コチラの記事でお読みいただけます
クロスワードパズル
脳トレと聞けば、クロスワードパズルをイメージする人も多いのではないでしょうか。クロスワードパズルとは、該当するヒントから答えを導き出して、タテ・ヨコのマス目を埋めていくクイズです。
ヒントから答えを導き出すには、過去の記憶を遡って記憶の扉を開けまくる必要があります。いくら考えても、知らない言葉は出てきませんからね。「うーん、あれなんだっけ……」と頭を使う過程で、長期記憶力が思い切り鍛えられます。
もし答えがわからなくても、まったく問題ありません。「うわー、全然わからなかった。くやしいなあ……」という気持ちがある分、新しく覚えた言葉は鮮明に記憶へ残ります。
この流れが、記憶力のみならず、集中力や言語能力といった認知機能をしっかりと鍛えてくれるのです。
◆クロスワードパズルについては、コチラの記事でもお読みいただけます
間違い探し
間違い探しゲームは、視覚的知覚・記憶力・注意力などが鍛えられる、認知症の予防に最適なトレーニングのひとつです。ご存知のように、間違い探しゲームは、ふたつのよく似た画像の中から、微妙な違いを見つけ出さなければなりません。
通常3〜10個ほどの間違いがちりばめられていて、そのうちの2〜3個はじっくりと見てもすぐには気づかない高難易度の間違いが織り込まれています。
こういった難易度の高い間違い探しゲームを何回もやっていると、徐々に直感力が高まってきます。画像を見比べて、なんとなく違和感をおぼえる。このひらめきが、あなたのリスク回避能力を磨き、実生活においても大いに役立ってくれるはずです。
また、目を皿のようにして違いを見つけようとすれば、自然と集中力が高まってきます。違いを見つけるには、片方の画像を基準として覚えておかなければならないので、記憶力も向上するでしょう。
このように、間違い探しには、認知機能改善のメリットが盛り沢山です。間違い探しのアプリは数多くリリースされているので、題材探しにも事欠きません。なにより、やっていて楽しいので、まずはどれかお好みのアプリをダウンロードしてみてはいかがでしょうか。
◆間違い探しについては、コチラの記事でもお読みいただけます
将棋
将棋は、戦略的思考と記憶力が要求される日本の伝統的なボードゲームであり、認知症予防に有効な方法として注目されています。
当たり前ですが、将棋には対戦相手が必要です。プレイヤーは常に相手の動きを考えながら、何手も先まで予測して打つ手を考えなければなりません。相手の打ち方は何通りもあるので、どの方法がきても対応できるように、対応策を縦横無尽に張り巡らせます。
こういった思考の広がりが、脳の前頭葉を刺激し、問題解決能力や計画能力を向上させてくれるんですね。
さらに、将棋がうまくなりたかったら、うまい人の手筋(過去の研究からまとめられた有効な指し方)をある程度覚えておく必要があります。手筋を知っているほど勝率がアップするので、一生懸命手筋のストックを増やすうちに、自然と記憶力も向上するでしょう。
最近では、必ずしも実際に対局する必要はなく、アプリを使えば自宅でひとりで気軽に楽しめるのも嬉しいポイントです。
◆将棋については、コチラの記事でもお読みいただけます
料理
料理は、認知症予防にとても効果的です。もし私がなにか認知症予防のトレーニングを選ぶとしたら、料理を選ぶでしょう。
なんといっても、料理はマルチタスクの連続です。レシピの選定から食材の準備、調理法の実行に至るまで、「計画立案」「問題解決」「手順の記憶」といった多岐にわたる認知スキルが求められます。
また、料理は五感をフル活用します。普段の生活で、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚を同時に使う機会があるでしょうか。私の知る限り、五感を同時にフル稼働させる作業は、料理しかありません。
それに、なんといっても、美味しいものを食べるのは楽しいですよね。さらに大好きな家族や友人と一緒に食事を囲む機会があれば、セロトニンやオキシトシンといった幸せホルモンが分泌され、脳が活性化します。
◆料理については、コチラの記事でもお読みいただけます
まとめ
今回の記事では、認知症リスクを下げる働きのある予防トレーニングを「身体編」と「頭脳編」に分けて、ご紹介しました。
もちろん、8つのトレーニングすべてに取り組む必要はありません。どのトレーニングを選んでも構いませんが、できれば身体編と頭脳編からひとつずつ取り組むと、予防効果は高まります。