記事の監修
株式会社瞬読 代表取締役山中恵美子
大学卒業後、関西テレビ放送株式会社に勤務。2009年学習塾を開講し3万人の生徒が卒業。
学習効果を上げる方法として速読を取り入れる。これが後の「瞬読」となり生徒が次々と難関校に合格。
2018年瞬読のみの講座が開講し、現在受講生は2,600名を超える。
著書『瞬読』は10万部超えのベストセラーに。その他、TV・ラジオなどメディアにも多数登場し、全国に瞬読を広めている。
もしあなたが、「自分には無理だよ」とか「なんでもいい」といったマイナスな言葉をよく使っているとしたら……
認知症になりやすい傾向が、一般的な人より強いかもしれません。逆をいえば、前向きな言葉を普段からたくさん発している人は、認知症になりにくいということです。
当記事では、認知症になりやすい人の口癖と性格の傾向を探り、日常生活でできる簡単な予防策をご紹介します。認知症は、遠い他人の問題だけではありません。今から意識を変え、予防の一歩を踏み出しましょう。
目次
認知症になりやすい人の口癖とは?
冒頭でもお伝えしたように、認知症になりやすい人は、無意識のうちにマイナスな言葉を多く使っています。しかしほとんどの人は、自分でそういったマイナスな言葉を多用している自覚がありません。
典型的なマイナスの口癖を6つ紹介しますので、ご自身に当てはまるかどうかチェックしてみてください。
「どうせ自分なんて……」
「どうせ自分なんて……」という口癖は、自己肯定感の低下を表しており、行動を阻害する大きな要因になっています。個人差はあるものの、こういった言葉が癖になっている人は、過去になんらかの大きな失敗体験をしているものです。
- 一生懸命勉強したのに、希望する学校に合格できなかった
- 足が遅くて友達からバカにされた
- 好きな人に振られてばかりだった
- 出来のいい兄弟ばかりが可愛がられていた
など、手痛い失敗や経験が心のトゲとなり、自分に対して否定的な見方しかできなくなっています。だから、「どうせ自分なんて」とバリアを張り、また辛い思いをしないように自分を守っているわけです。
たしかに、自分を卑下して積極的に行動しなければ、傷つくことは減るでしょう。しかし、チャレンジのない人生は、自己成長を促す刺激が圧倒的に不足しています。
ほかの口癖とも共通する話ですが、できるだけ早く「自分の口癖が自分の成長を阻害している」と気づくことが、非常に重要です。
「そんなことをしてもムダだよ」
「そんなことをしてもムダだよ」という口癖も、前述の「どうせ自分なんて……」とバックグラウンドが非常に似ています。
おそらく過去にいくつもの大きな失敗をしていて、自分のなかに「なにをやってもうまくいかない」という思考回路ができあがってしまっているのでしょう。
いったん自分の心に、無力感や敗北感が刻まれてしまうと、どうしても積極的な取り組みや新しい試みを避ける傾向が強くなるものです。
何十年もこうした思考パターンで過ごしていると、必然的に思考が内向きになり、認知症の可能性がアップします。
認知症の予防には、新しい挑戦や学び続ける姿勢が重要です。もしまた「ムダだ」と感じる瞬間が訪れたときは、それをチャンスと捉え、ぜひなにか新しいことにチャレンジしてみてください。
「なんでもいい」
「なんでもいい」という口癖は、一見、興味や関心の薄い投げやりな態度に見えます。しかし「なんでもいい」が口癖になっている人は、じつは優しくて相手を思いやる気持ちをもっているケースが多いものです。
相手に判断を委ねることでうまく関係を保てるよう、無意識のうちにこの言葉を発している人が多いのではないでしょうか。こういった気持ちがベースにある場合、認知症の心配をする必要はありません。
とはいえ、いわれた相手からすれば、他人任せと感じてしまうことも正直多いです。誤解を生まないためにも、少しずつこの口癖を減らす努力は必要かもしれませんね。
一方、優しさではなく、ただ面倒だから適当に返事しているパターンもあります。このパターンに当てはまるひとは、要注意です。自分で考えることを放棄するのが当たり前になってくると、重要な決断を自分で下せなくなります。
そうやっていつも誰かに依存するようになれば、年齢とともに脳の働きが少しずつ衰えてしまい、認知症リスクは高くなる可能性があります。
「昔は◯◯だった……」
「昔は◯◯だった……」という口癖は、過去に対する強い郷愁や現在の変化への不満を示していることが多いです。このような過去志向の考え方は、新しい環境や変化に対する適応力を著しく鈍らせ、認知機能にも影響を与える可能性があります。
高齢になれば、体力的な衰えもあり、どうしても過去の思い出に目が向きがちです。もちろん、過去のよい思い出は人生の宝物でしょう。しかし、過度な過去への執着は、成長の妨げになる場合があります。
認知症の予防には、現在と将来にフォーカスを当て、新しい経験や学びに積極的に取り組む気持ちが大切です。今を生きる楽しさ、新しい知識や技術を習得する喜びをぜひ忘れないでください。
「かったるい」
「かったるい」という言葉を頻繁に使う場合、無気力や意欲の低下を示している可能性が高いです。仕事や家事が忙しくて一時的に出るなら、とくに問題はありません。状況が落ち着き疲れが取れれば、「かったるい」というマイナスな言葉も口に出てこないでしょう。
しかし、日常的に「かったるい」が口癖になっているようなら、少々注意が必要です。やる気の衰えにより、社会的活動や新しい経験への参加が減少し、少しずつ認知機能の衰えにつながる可能性があります。
もし、自分がこの言葉を多用していると気づいたなら、とにかく行動してみることです。かったるくても、義務だと思って人と会い、なにかをはじめてみましょう。
たとえば、毎日散歩をすると決めたら、とにかく外に出てください。歩きだして疲れてきたら、すぐに戻っても大丈夫。極端な話、庭を1周するだけでもいいんです。そうやって小さな成功体験を積み重ねていけば、少しずつ距離は伸びていきます。
かったるいと思ったら、とりあえず動いてみる。これが、怠惰な気持ちを解決する一番の方法だと思います。
認知症になりやすい人の性格
口癖と性格には、強い相関関係があります。ネガティブな性格であれば、当然発する言葉はマイナスな内容になるはずです。マイナスな言葉ばかり使っていれば、さらに性格はネガティブになっていきます。
認知症を予防するには、こういったマイナスの口癖をできるだけ減らさなければなりません。そのためにも、自分が認知症になりやすい人の性格に当てはまるかどうか、しっかりと把握しておきましょう。
人と接するのが苦手
「人と接するのが苦手」と感じている人は、案外多いもの。人と接するのが苦手な人は、当然人と会う機会が極端に少ないです。そうなると、外部からの刺激がほとんどない状態が当たり前になり、いつも自分の頭のなかだけで思考が繰り返されます。
人間の脳は、適度な刺激がないと、少しずつ衰えていきます。いつも同じ思考をループしていると、脳を使う必要がないからでしょうね。
国立長寿医療研究センターのMCIハンドブック※には、「人との会話が多いほど、認知症になる可能性が低くなる」と明記されています。
また、同居人以外との交流が週に1回未満の人は、それ以上の人に比べて、認知症発症や早期死亡リスクが高くなるという研究結果もあります。
もちろん、無理やり週に何回も社会活動に参加する必要はありません。対面ではなく、電話やメールといった非対面交流でも、認知症リスクは低下するそうです。
どういった形でもよいので、まずは週1回以上を目標に、友人知人とのコミュニケーションを意識してみてください。
※参考:国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター MCIハンドブック
批判的
批判的な性格が認知症リスクを高めるという研究結果※が、2014年東フィンランド大学の研究チームによって発表されました。
事前の試験で皮肉屋的傾向が高く出た622人を、8年後に追跡調査した結果、46人が認知症になっていたそうです。もちろん、これはあくまでもひとつの例に過ぎず、すべての皮肉っぽい思考をもつ人に当てはまるとは限りません。
なにより、フェイク情報の多い現代において、ある程度批判的思考を身につけていないと、騙されてしまうリスクがあります。
しかし疑い深くいつも批判している人より、オープンで楽観的な人のほうが、認知症リスクは低いと考えておくほうが無難でしょう。基本的に楽観的でありながら、情報をただ鵜呑みにはしない。そういったバランス感覚が、これからは重要になってくるのかもしれません。
◆批判的思考(クリティカルシンキング)については、コチラの記事でお読みいただけます
イライラしやすい
イライラしやすい性格も、認知症を引き起こす大きな原因となる可能性があります。イライラしている人は、他人に対して攻撃的な態度を取ることが多く、他人から敬遠されてしまいがちです。
その結果、社会的活動が減ってしまい、その刺激の少なさから認知症になりやすいという負のスパイラルに入ってしまいます。
前述の通り、他人との繋がりは適度な刺激を脳に与えて、脳の働きを活性してくれます。認知症予防という観点からいえば、やはり他人から嫌われるようなイライラしやすい性格は、できるだけ抑えていく意識が必要です。
イライラは性格的なものだけでなく、不安やトラブルに晒されていることで引き起こされているケースが多いです。早急な問題解決と並行して、深呼吸や瞑想といったリラクゼーションで、ぜひ自分の心を労ってあげてください。
◆オススメの呼吸法については、コチラの記事でお読みいただけます
心配性
心配性な性格の人は、「◯◯したらどうしよう……」「今回も失敗するのではないか……」と常に不安を抱えているものです。そのため、抱え込んだ不安によって生まれるストレスで、認知症リスクが高くなる傾向にあります。
当たり前の話ですが、認知症のリスクを低減するためには、心配事を効果的に管理し、積極的に対処することが重要です。
日々の生活で実践できる方法として、私はジャーナリングをオススメします。ジャーナリングとは、頭に浮かんだことをノートに書き出す整理法です。頭のなかの混乱した思考も、書き出すことで、なにがどのくらい重要(あるいは不安)なのかが明確になります。
こういった効果から、ジャーナリングは「書く瞑想」と呼ばれているくらいです。前述のリラクゼーションと併用して、心配で押しつぶされそうな心の負担を、少しずつ解放してあげましょう。
◆ジャーナリングについては、コチラの記事でもお読みいただけます
認知症予防のためにできること
最後に、認知症予防のためにできることとして、3つのアイデアをご紹介します。もし興味のあるものがあれば、ぜひ取り組んでみてください。
生活習慣を整える
健全な生活習慣は、認知症予防において重要な役割を果たします。整えるべきは、以下の3点です。
- 十分な睡眠
- バランスの取れた食事
- 定期的な運動
日本人は、世界でも睡眠時間の短い人種として知られています。睡眠が休息と記憶の定着をもたらしてくれることを考えれば、やはり最低でも7時間以上の睡眠は確保したいところです。
また、栄養素の乏しい偏った食事は、活性酸素を除去するシステムに悪影響を及ぼします。アルツハイマー病患者の脳を調べると、神経細胞の間に酸化したタンパク質が大量に見られるそうです。
緑黄色野菜やグレープフルーツ、トマト、アーモンドといった抗酸化作用のある食品を、適量摂取するように意識してみてください。
運動に関しては、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)が、指針を発表しています。別記事で具体的な数値を紹介しているので、そちらの記事をご確認ください。
◆睡眠・食事・運動の効能については、コチラの記事でもお読みいただけます
ストレスを上手にコントロールする
「イライラしやすい」では、ストレス管理の方法として、呼吸法に関する記事へのリンクをご紹介しました。ここでは、瞑想のなかでもとくにオススメなマインドフルネス瞑想について、簡単に紹介します。
マインドフルネス瞑想は、心と体の状態を整え、ストレスを効果的に管理する瞑想法のひとつです。この瞑想法では、今この瞬間に集中し、内なる自分の感情や感覚と静かに向き合っていきます。
今の自分をただ受け入れられるようになると、過去や未来の後悔や不安から距離を置くことが可能です。過去の後悔は変えられないし、まだ起きていない未来を過度に憂いても意味がありませんからね。
そういったメリットに気づいたグーグルやP&Gといった有名企業が、従業員の精神的なウェルネスと生産性向上のために、マインドフルネス瞑想の研修を導入しています。
向き不向きはあるかもしれませんが、少しでも興味のあるかたは、ぜひいちど試してみてください。きっと、心が楽になるはずです。
◆マインドフルネス瞑想については、コチラの記事でもお読みいただけます
脳トレで思考力を鍛える
積極的に認知症の予防をしていきたいなら、脳トレが非常にオススメです。まず、生活習慣を整えて、脳の働きを正常化していきましょう。
同時にストレスをしっかりと管理しつつ、脳トレで適切な刺激を脳に与えれば、脳の働きは間違いなく活性化します。
脳トレは、大きく頭を使う「頭脳系」と体を動かす「作業系」に分類されます。頭脳系脳トレとしては、パズル・ナンプレ・間違い探し・計算ゲームなどが有名でしょうか。
作業系としては、将棋・料理・絵画のように、体と頭の両方を使う脳トレがいいですね。
なお、ウォーキングやヨガ、水泳といった運動も、立派な脳トレです。適度な運動は、脳の血流を改善し、酸素や栄養をたっぷりと脳に届けてくれる働きがあります。
また頭脳系・作業系という分類とは別に、記憶力低下や言語障害といった、改善したい認知機能別に脳トレを選ぶのも全然アリです。認知機能別のオススメ脳トレについては、以下のリンクからご確認ください。
◆認知機能別のオススメ脳トレについては、コチラの記事でお読みいただけます
まとめ
今回ご紹介したように、認知症になりやすい人の口癖には、マイナス思考が根底にあるという共通点が見受けられます。認知症を予防するなら、まずはこういったマイナスの口癖をストップするのが先決です。
そのうえで、「生活習慣を整える」「ストレスを上手にコントロールする」「脳トレで思考力を鍛える」といった取り組みをはじめれば、認知症に対する不安に悩まされることもだいぶ少なくなるのではないかと思います。