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洞察力を鍛える6つの方法

洞察力を鍛える6つの方法

記事の監修

株式会社瞬読 代表取締役山中恵美子

大学卒業後、関西テレビ放送株式会社に勤務。2009年学習塾を開講し3万人の生徒が卒業。
学習効果を上げる方法として速読を取り入れる。これが後の「瞬読」となり生徒が次々と難関校に合格。
2018年瞬読のみの講座が開講し、現在受講生は2,600名を超える。
著書『瞬読』は10万部超えのベストセラーに。その他、TV・ラジオなどメディアにも多数登場し、全国に瞬読を広めている。

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日本人は、なかなか本音を表に出さない民族であるといわれています。その真偽のほどは別にして、日々さまざまな人と接する機会の多いビジネスパーソンにとって、洞察力の重要性に異論を唱える人はいないでしょう。

しかし、洞察力とは実際どのような能力なのか、どうやって洞察力を鍛えればよいのか、そこまで理解している人はそれほど多くありません。そこで今回は、洞察力を身につけるために必要な知識をしっかりと解説していきます。

目次

洞察力とは何か?

洞察力とは何か?

洞察力とは何か、なぜ洞察力が重要なのか、まずは洞察力の概要についてしっかりと理解していきましょう。

洞察力の基本的な定義

洞察力をひと言でいうと、「ものごとの裏側に隠された本質的な部分を見抜く能力」と定義できます。よく混同される言葉に「観察力」がありますが、両者はまったく異なる能力です。

観察力は、「周囲の人やものごとの状態をそのまま把握する力」であり、見るものはあくまでも表面的な情報だけになります。たとえば、部下がむずかしい顔でPCの前に座っている状況を見て、部下が仕事で行き詰まっていることに気づく、それが観察力です。

洞察力のある人は、さらに「なぜ部下が行き詰まっているのか」を考えます。そして、「理解できていないところがあるようだから、いちど前任者からレクチャーを受けたほうがよいのではないか」と仮説を立てるわけです。

もちろん、その仮説が正しいかどうか、その時点ではわかりません。しかし、部下にレクチャーの必要性をさりげなく打診することで、必ず状況は動き出します。このように、表面的な状況の裏側まで深く考察する力が、洞察力なのです。

なぜ洞察力が重要なのか

洞察力が重要な理由として、大きく以下の3点が挙げられます。

洞察力が重要な3つの理由
  • 意思決定の質が高まる
  • 問題解決能力がアップ
  • 良好な人間関係が手に入る

洞察力が高ければ、表面上だけでなく、ものごとの裏側に隠れた本質的な原因に気づけます。だから、情報に惑わされることなく、高い確率で最適な答えを導き出せるのです。

それに、ビジネスをしていれば、必ずなんらかのトラブルに遭遇します。そういったときでも、冷静に状況を観察して、トラブルの本質を探し出せるのは、優れた洞察力があってこそ。

また、洞察力が高い人は、総じてコミュニケーションが上手です。人間誰しも、とくにビジネスシーンにおいては、なかなか本心を明かしてはくれません。しかし、相手の意図を汲み取り行動してあげれば、相手はあなたに対して好意を抱いてくれます。

このように、高い洞察力は間違いなくあなたのビジネスキャリアを好転させてくれるでしょう。

洞察力と他の認知スキルとの関連性

洞察力はたしかに重要なスキルですが、他のスキルとの関連性を見落としてしまうと、思うような効果は期待できません。

洞察力が効果的に機能するには、鋭い観察力をもっていることが大前提となります。ものごとの本質を見極めるために、まずは観察力によって判断材料を数多く集める必要があるからです。

表面的な変化に気づけないようでは、そもそも洞察力どころではありませんので。

また、コミュニケーションスキルも洞察力には欠かせない能力です。先ほど、「優れた洞察力で良好な人間関係が手に入る」と説明しました。しかし、これは、「良好な人間関係を築ける能力が高いから、洞察力を発揮できる」とも言い換えられます。

相手に不安を与えず、さりげなく本音を引き出すコミュニケーション力がなければ、洞察力はうまく機能しません。

ほかには、クリティカルシンキング(批判的思考)も、高い洞察力には必須といえるでしょう。「本当にそうなのか?」「ほかに解決策があるのではないか?」と目に見える情報をいったん疑ってみる思考が、深い洞察力のスタート地点です。

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鋭い洞察力を身につけるメリット

鋭い洞察力を身につけるメリット

「なぜ洞察力が重要なのか」でもお伝えしたように、鋭い洞察力が身につくと、生活、とくにビジネスにおいて多大なメリットがあります。今回は、前述の3点を深堀りしながら、あらたにもうひとつメリットを解説していきます。

意思決定のクオリティがアップする

洞察力の向上は、意思決定のクオリティを大きく向上させます。洞察力がある人は、情報を深く分析し、その情報の背後に隠れた意味やパターンを読み取れるので、判断ミスが極端に少ないのです。

反対に、思慮の浅い人は、表面上の情報だけを見て、安易に判断を下します。そのため、しばらく経ってようやく、「あれっ……こんなはずじゃなかったのに」と、判断ミスに気づくわけです。

言い換えると、洞察力の高い人は、想像力に優れているともいえます。ものごとには、たいてい複数の選択肢があるものです。それぞれの選択におけるリスクとメリットを正確に予測できる(しようとする)ので、大きなトラブルに巻き込まれることもありません。

もちろん、世の中に絶対はないでしょう。しかし、ものごとの本質を捉え未来を正確に予測しようとする人と、安易に判断を下す人では、前者の結果がよくなるのは当然です。

問題解決スキルが向上する

洞察力を鍛えると、問題解決スキルが格段に向上します。これは、洞察力によって問題の核心を見抜けるようになり、効果的な解決策を導き出せる確率が高くなるからです。

なにかトラブルが起きた場合、もっとも目につく問題が必ずしも重要とは限りません。たとえば、販売する商品の納期が遅れてしまったトラブルがあったとします。直接的な原因は担当者の発注ミスですが、発注者に注意しただけだと、この問題はまた起こる可能性があります。

ここで深い洞察力があれば、発注の裁量を個人に任せていることに、根本的な原因があると気づくでしょう。そうなると、問題の解決策も「発注者への注意」から「発注を共有して納期間際にリマインドしてくれるシステムの構築」に変化します。

このように、深い洞察力を身につけると、本当の意味での問題解決スキルが向上します。もちろん、間違った洞察にならないよう、問題の核心が正しいかどうかの検証は徹底的におこなってください。

人間関係がよくなる

洞察力が人間関係によい影響を与えてくれるのは、他人の感情や意図を深く理解し、適切な反応ができるようになるからです。

誰だって、自分を理解してくれて、親身になって寄り添ってくれたら、その人のことが好きになりますよね。でも、とってつけたような言葉をかけても、「この人はなにか下心があるのではないか」と勘ぐられてしまい逆効果です。

その点、洞察力の優れた人の「相手を理解しようとする態度」は、相手にそういった不信感を与えません。だから、好意をもってもらえるし、信用してもらえるのです。

もちろん、いくら洞察力があっても、他人の心の奥底まではわからないでしょう。でも、それでいいのです。深い部分まで汲み取って、最善の対応をしようという姿勢が、人間関係をよくしてくれるのですから。

斬新なアイデアが生まれやすい

深い洞察力をもつ人は、斬新なアイデアを生み出す能力にも長けているものです。ものごとの裏側に隠れた本質部分まで考察するので、ほかの人が気づかないこまかいポイントにも気づきます。

つまり、表面しか見えていない人と比べて、洞察力の優れた人はアイデアの素材をたくさんもっているわけです。ひとつの材料しかない人と、アイデアの素をいくつももっている人では、生まれてくる発想の斬新さや深さが違って当然でしょう。

また、深い洞察力をもつ人は、表面的な関連性にとどまらず、深いレベルでのつながりや発展性を常に考えています。「◯◯と△△を組み合わせたら✕✕になるのではないか」といったように、どんどん新しいアイデアが生まれてくるのも洞察力が鋭いからこそ。

こういった創造性は、とくにビジネスの世界で非常に高く評価されます。仕事で結果を出したい人は、ぜひ洞察力に磨きをかけていきましょう。

洞察力が高い人の特徴

洞察力が高い人の特徴

洞察力を高めたいなら、すでに洞察力が高い人のマネをするのが一番の近道です。数多い特徴のなかから、今回は4つピックアップして解説します。

優れた観察力がある

前述のとおり、洞察力と観察力はセットで考えるべき能力です。深い洞察力をもつ人は、とにかく周りをよく見ています。そして、普通の人なら気にしないような変化にも敏感です。

たとえば、部下の顔色が少し悪ければ、いち早く気づいて声をかけるでしょう。部下が「ちょっと忙しく疲れているだけです」と答えるのを聞き、共有スケジュールや進捗情報を確認します。それと同時に、同じプロジェクトで動いているメンバーの様子を伺うのも忘れません。

こうやってこまかく周りを観察しているからこそ、十分な判断材料が集まり、「時間のある社員をサポートにつける」「スケジュール調整をおこなう」「新しい機材の導入」といった対応策を導けるのです。

深い共感力で相手の立場を踏まえた対応ができる

洞察力が高い人には、「深い共感力で相手の立場を踏まえた対応ができる」という特徴があります。

人にはそれぞれ違った考え方があり、誰もが自分の意思に基づいて行動しているものです。なので、もしかすると他人の考えや行動が、自分の考えとは相容れないと感じることもあるでしょう。でも、その人にとってはそれが正しい考えであり、行動なのです。

洞察力の高い人は、深い共感力でいったん相手を受け入れます。反論する際でも、「なるほど。たしかに◯◯という考え方もできるよね。それもいい案だけど、自分は△△だと思うんだけど、どうだろうか?」と、決して相手を否定しません。

だから、相手も心を開いて、次々と思っていることを話してくれます。こういった、優れた洞察力を備えた人の「相手の立場を尊重する姿勢」は、ぜひマネしたいところです。

多角的な視点でものごとを考える

観察力で集めた材料を基に導いた仮説の精度が高ければ、「あの人は優れた洞察力をもっている」と評価されます。しかし、神様でもない限り、仮説が100%的中することなど、まずあり得ません。

洞察力に優れた人は、多角的視点から判断材料を見て、必ず複数の仮説を立てます。いったん考えられる仮説をいくつか考えて、そこから再度状況を判断して、仮説を絞り込んでいくわけです。

一方、洞察力が不足している人は、思い込みが激しく、ひとつの視点からしかものごとを見ていません。だから導き出す仮説もひとつしかなく、仮説が外れることもよくあります。

よく、コップに半分入っている水に対して、「半分しか入っていない」「半分も入っている」という視点の話になりますよね。

納期がタイトで部下が疲れているように見えても、「まだ半分しか進んでいない」なのか、それとも「半分も終わったぞ」と考えているかで、対応の仕方は変わってくるはずです。多角的視点があると、仮説の数が増えて、より適切な判断を下せます。

幅広い知識と経験をもつ

ものごとの本質的な部分を見抜くには、観察で得た判断材料を過去の知識や経験を結びつけて、より精度の高い仮説を立てる必要があります。いくら材料が揃っていても、自分のなかに判断する基準がなければ、仮説は立てられません。

洞察力の優れた人は、専門分野の知識だけでなく、幅広い知識と経験を備えています。自分の仕事に関する勉強もしますが、関係のない分野のインプットも欠かしません。

趣味・旅行・ボランティア・資格取得など、いろいろな場所に顔を出し、多角的な視点に触れる時間をしっかりと確保しています。

対して、洞察力の浅い人は、とにかく勉強不足です。仕事が終われば毎晩ビールを飲んでゲームばかりしている人と、地道に勉強と実践を重ねている人を比べれば、洞察力に大きな差がついても当然といえるでしょう。

洞察力を阻害する要因

洞察力を阻害する要因

洞察力を高めるためには、阻害する要因を排除するのが一番確実です。私たちの洞察力を鈍らせる、代表的な5つの要因について解説します。

洞察力を鈍らせる最大の要因「固定観念」

洞察力を鈍らせる最大の要因は、間違いなく「固定観念」でしょう。固定観念を辞書で調べてみると、「いつも頭から離れないで、その人の思考を拘束するような考え」と定義づけされていました。※引用元:デジタル大辞泉

つまり、固定観念とは、先入観や偏見と非常に似た思考パターンといえます。偏った考え方をしている人は、ものごとを一方的な視点からしか見ていません。

しかし、世の中には、本当にさまざまな考え方や価値観が存在しています。100人いれば、文字通り100通りの価値観があるわけです。それなのに、常に偏った視点でものごとを見ていたら、本質的な部分を見落としてしまうのは当然といえるでしょう。

でも、安心してください。後述する洞察力を鍛える方法に取り組めば、自然と固定観念は薄れていきますので。

情報過多は迷いを生む

デジタル時代の到来により、私たちはかつてないほど大量の情報にアクセスできるようになりました。しかし、多すぎる情報は、選択の困難さや決断の遅延を引き起こします。情報が多すぎて、なにが本当に重要なのかを確認する時間が必要になるからです。

一方で情報が少ないと、とにかく思考がシンプルです。選択の幅が絞られる分だけ、迷いが減り、洞察力が正確に機能してくれます。2択と10択なら、2択のほうが迷う量が圧倒的に少ないのは当然の話でしょう。

情報過多の自覚がある人は、情報のフィルタリングを意識してみるのもよい方法です。自分が信頼できる情報源だけに絞り込み、ほかの情報は意図的に除外します。もちろん、情報に偏りが出ないように、バランスを意識するのも重要なポイントです。

正直なところ、公的といわれるテレビのニュースも、発信するテレビ局の思想がかなり反映されています。では識者のSNSなら大丈夫かといえば、こちらも発信者のポジショントークが多く、安易に信用するのは危険です。

ストレスは思考をマイナス方向に引っ張る

過度なストレスは、私たちの洞察力を大きく低下させます。ストレス状態が続く脳は、いわば「戦うか逃げるか」という生存本能に集中している状態です。そのため、ものごとをじっくりと観察し、複雑な思考をおこなうことが困難になります。

ストレスがMAXのときは、誰だって前向きで楽しい気持ちにはなれませんよね。そうなれば、当然ものごとをマイナスな視点で見てしまうでしょう。しかしやっかいなことに、デキる人ほどそういう自分のマイナスなメンタルになかなか気づきません。明らかに冷静な思考を失っているのに、自分では普段と変わらずに鋭い洞察力を発揮していると思い込んでいます。

ストレスによる洞察力の低下を防ぐためには、ストレス管理能力が必要です。リラクゼーション技法・適度な運動・十分な睡眠・バランスの取れた食生活など、どれか気になるものから順番に取り組んでみてください。ひとつ改善されるだけでも、マイナス思考は大幅に改善されるはずです。

◆リラクゼーション(瞑想)については、コチラの記事でお読みいただけます

短時間睡眠は洞察力を根こそぎ奪い取る

脳と体の大切な休息時間である睡眠は、私たちのパフォーマンスと大きく関係しています。短時間睡眠は、洞察力のみならず、すべての能力を低下させる大きな原因です。それなのに、日本人の平均睡眠時間は、世界でもトップクラスの短さとなっています。

スマートウェアラブル業界の大手Zepp Health Corporationが発表した「2021年世界睡眠ホワイトペーパー※」によると、日本の平均睡眠時間は6時間44分で、世界ワースト2位でした。1位のベルギーは7時間30分なので、日本はベルギーよりも45分以上睡眠時間が短いわけです。

6時間ならまだよいほうで、なかには毎日4〜5時間しか寝ていない人もいます。10〜20代なら、少しくらい睡眠時間が短くても、体力でカバーできるでしょう。

しかし、ある程度の年齢になると、睡眠不足は、脳のパフォーマンスを著しく低下させます。直射日光の入らない静かな部屋で、できれば8時間以上の睡眠を心がけてください。

※参考:2021年世界睡眠ホワイトペーパー【完全版】 | PR TODAY | つながるオウンドメディア構築サービス

◆睡眠が脳へ与える影響については、コチラの記事でお読みいただけます

体力不足により周囲への関心が薄くなる

体力不足も、洞察力が低下する大きな要因のひとつです。忙しい現代人は、圧倒的に運動量が不足しています。移動も電車や車に乗っている時間がほとんどだし、デスクワーク中心の人なら、1日の大半を座って過ごしているはずです。

そういった状態が続くと、体の機能がどんどん低下してしまい、「肩が凝って頭が痛い」「お腹の調子が悪い」「足がパンパンでつらい」といった症状が表面化してきます。

たとえ具体的な症状が出ていないとしても、確実に体は弱っているので、じっくりと状況を観察しようとはとても思えないでしょう。

だから、鋭い洞察力を維持するためには、体力をしっかりと保つことが大切になってきます。そのためには、良質な睡眠を最低でも7時間は取りたいし、バランスのいい食事や適度な運動も不可欠です。生活習慣が整えば、体力がつき、自然と洞察力も向上します。

具体的な生活習慣の改善法については、別記事で詳しく解説しています。ぜひそちらの記事も読んでみてください。

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洞察力を鍛える方法

洞察力を鍛える方法

洞察力は、決してもって生まれた才能ではありません。意識してトレーニングすれば、少しずつ洞察力が鍛えられていきます。この章では、洞察力を鍛えるオススメの方法を、8つ紹介します。

いろいろなことを観察して仮説を立ててみる

ここまで何回もお伝えしたように、優れた洞察力を手に入れるには、幅広く周囲を観察する能力が必要です。観察をして、得られた情報を基に仮説を立ててみる。洞察力は、こういった作業の繰り返しで、少しずつレベルアップします。

したがって、最初に鍛えるべきはやはり観察力です。といっても、やることは非常にシンプルです。とにかく、周囲の人やものをじっくりと見てください。

同じ部署で働いている人でも、それぞれ表情や話し方、仕草は異なります。嬉しさを表現するときでも、声を出して大笑いする人もいれば、控えめにニコッとする人もいるはずです。

そういった個人の特性がわかってくれば、より正確な仮説を立てられるようになってくるでしょう。

とはいえ、あまり露骨に観察していると、相手もあまりよい気持ちはしません。せっかく努力しているのに、嫌われてしまえばまったくの逆効果です。あくまでもさりげなく、失礼のないように心がけましょう。

質問力を上げる

先ほど、「仮説検証をするにはまず観察力が重要」という話をしました。しかし、ものごとをただ観察するだけでは、入手できる情報量に限界があります。

そこで重要になってくるのが、「質問力」です。わからないことやむずかしいことがあれば、知っていそうな人に聞くのが一番簡単で、かつ確実です。洞察力をアップしたいなら、ぜひ質問力を高めていきましょう。

質問には、大きく以下の2種類があります。

  1. クローズドクエスチョン:「Yes」「No」の二択で答えられる質問
  2. オープンクエスチョン:範囲を限定せず自由に回答してもらえる質問

情報を仕入れるという意味でいえば、より重要なのはオープンクエスチョンです。「業績アップに社員教育は必要でしょうか?」というクローズドクエスチョンは、基本的に「Yes」「No」しか得られる情報がありません。

でも、そのあとに、「具体的にどういった社員教育をおこなったらよいのでしょうか?」と質問できれば、大量の情報が手に入ります。

とはいえ、両者に優劣はありません。知りたい内容に応じて、クローズドクエスチョンとオープンクエスチョンを適切に使い分けるセンスが重要なのです。

メリットとデメリットの両面から考える

すべてのものごとには、メリットとデメリットがあります。どれだけよいものに見えても、一方的にメリットだけが存在することはなく、必ずマイナス面もあるものです。このことがわかっていないと、つい自分の思い込みで偏った判断をしてしまいます。

洞察力とは「ものごとの裏側に隠された本質的な部分を見抜く能力」なわけですから、メリット・デメリット両面から捉える客観的な視点が求められます。

私たちは、どうしても「うまくいくこと」ばかりイメージしがちです。しかし、現実には、予期せぬトラブルがびっくりするほど発生しますよね。メリットしか見ていない人は、デメリットに対する準備ができていないので、大きなダメージを受けやすいです。

一方、メリットとデメリットをバランスよく見据えている人は、デメリットに対する備えができています。「ものごとには必ずメリットとデメリットの両面がある」ことを、ぜひ忘れないようにしてください。

インプット量を増やす

洞察力を高めたいなら、インプット量を増やす意識をもってください。観察した内容を基に精度の高い仮説を立てるためには、ベースとなる知識や経験が必須です。

いくら観察をしても、その観察を組み立てる知識が不足していれば、間違った仮説を導いてしまう可能性が高くなります。

ビジネスシーンであれば、まずは自社に関する知識と業界の専門知識を学ぶのが先決でしょう。関連書籍を読み、必要があればセミナーやワークショップに参加してみるのもオススメです。

もちろん、多様化の現代社会では、仕事の知識だけあっても対応はむずかしいと思われます。すべてに対応することは不可能だとしても、新しい知識のインプットはできるだけ心がけるべきです。

さまざまなジャンルの本を読むのもいいし、映画を観るのもいいでしょう。語学や資格のスクールに通ってみるのも、新しい視点を手に入れるよいきっかけになってくれそうです。

クリティカルシンキングを取り入れる

クリティカルシンキング(批判的思考)は、洞察力を高める上で非常に有効です。クリティカルシンキングとは、ものごとを批判的に捉え、正当性を確認する思考法のこと。


  • なぜそうなるのか?
  • 本当に正しいのか?
  • ほかに方法はないのか?

批判的といっても、決してものごとを否定するのが目的ではありません。上記のように疑問を投げかけ、思い込みを外して前提条件を疑い、より正しい結論を導き出すのが目的です。

クリティカルシンキングが素晴らしいのは、なんといっても自然と多角的な視点が身につくところでしょう。

私たちが考えている以上に、先入観は洞察力の妨げになっているものです。こうあるべきという思い込みがあると、無意識のうちにその思い込み通りの結論を出そうと考えてしまいます。

もちろん、ほとんどの人は、自分が先入観をもっているとは想像もしていません。常に、自分は公平に判断していると思い込んでいるものなのです。しかし、クリティカルシンキングを学ぶと、いかに自分が思い込みでものごとを見ているかがわかります。

幸い、クリティカルシンキングに関する書籍や動画はたくさんあるので、まずはそういった媒体に目を通してみてはいかがでしょうか。

ロジカルシンキングでクリティカルシンキングを補完する

先ほど、クリティカルシンキング(批判的思考)について解説をしました。深い洞察力には、「なぜそうなるのか?」「ほかにやり方はないのか?」といった、クリティカルシンキングが欠かせません。

ただし、クリティカルシンキングだけでは、半分の側面しか見ていないことになります。クリティカルシンキングでものごとの前提条件が正しいかどうかを確認できたら、今度はロジカルシンキング(論理的思考)を意識してみましょう。

  1. クリティカルシンキング:ものごとを批判的に捉え、正当性を確認する思考法
  2. ロジカルシンキング:ものごとを筋道立てて矛盾のないように結論を導く思考法

いくら批判的思考で正しい材料を揃えても、判断材料をうまく結びつけられなければ、意味がありません。反対に、ふたつの思考を上手に組み合わせれば、間違った固定観念や情報に惑わされなくなります。

異文化交流など多角的視点に触れる機会をもつ

多角的視点を学ぶという意味では、異文化との交流もオススメです。世の中には、いろいろな国があり、それぞれ日本とはまったく異なる文化があります。

普段、島国である日本に住む私たちは、どうしても日本の文化を中心にものごとを考えてしまいがちです。しかし、「日本の常識は世界の非常識」という言葉があるくらい、日本の文化や考え方は非常に独特です。そして、多くの日本人はそのことに気づいていません。

コロナ禍が落ち着きを見せている今なら、海外旅行もいいでしょう。旅行が大変なら、国際的な交流会や語学学校もオススメです。海外の動画や書籍にチャレンジしてみるのもおもしろいかもしれませんね。

いずれにせよ、異文化との交流は、自分の考え方を柔軟にし、新たなアイデアや解決策を考え出すのに役立ってくれます。ぜひ、チャレンジしてみてください。

思考法を専門家から習う

先ほど紹介したロジカルシンキングやクリティカルシンキングなど、具体的な思考法を専門家から学ぶと、洞察力は飛躍的に向上します。

もちろん、こういった思考法は独学でも習得が可能です。しかし、指導者からきちんと段階を追って指導を受けると、むずかしい思考法でも体系的に最短距離で身につきます。

自分で試行錯誤するのも、「印象深いできごとはより深く記憶に残る」という脳の働きを考えれば、決してムダではありません。でも、洞察力の向上が目的なら、専門家から思考法を教えてもらうほうが、やはり効率的でしょう。

また、専門家の指導には、素人がやりがちな間違いや思い込みを修正してもらえるというメリットもあります。多少お金はかかるかもしれませんが、結果を考えれば専門家に習う価値は大いにあるのではないでしょうか。

洞察力を鍛える際に注意すべきポイント

洞察力を鍛える際に注意すべきポイント

洞察力を鍛えるためにさまざまな方法に取り組んでも、ポイントを外すと思うような効果は得られません。そこで最後に、洞察力を鍛える際に注意すべきポイントを5つ解説します。

過度の自己批判に陥らないようにする

深い洞察力を身につけるには、過度の自己批判に陥らないように、注意しなければなりません。誰でもミスはするし、間違った判断で相手を怒らせてしまうことだってあるでしょう。でも、それはあなただけに起こっていることではなく、すべての人が経験していることなのです。

あなたの洞察が間違っていてなにかトラブルが起きたとしても、そのたびに「自分はダメだ」と自己批判を繰り返していたら、どんどん自信を失ってしまいます。

もちろん、適度な自己批判は、自分を成長させてくれます。ミスをしても、まったく気にせずに、何回もミスを繰り返すよりはずっと有益です。でも、決して自分を責めすぎないでください。

大切なのは、ミスをしたときに、そのミスを学びの機会と捉えることです。落ち込むのではなく、「次はこうしよう」と考えられるようになれば、あなたの洞察力は確実にレベルアップするでしょう。

他人の意見に踊らされない

もし他人の意見に流されることが多いと自覚しているなら、自分の意見についていちど考え直すタイミングかもしれません。他人の意見に頼りすぎると、自分の判断力が鈍ります。他人の考えに従って失敗しても、その人は責任を取ってくれないですよね。

だから、鋭い洞察力をもって最良の決断を下すには、やはり自分の確固たる判断基準が必要になってきます。

もちろん、自分がよいと思った第三者の意見は、大いに参考にすべきでしょう。自分の考え方に固執しすぎると、客観的な判断が下せませんので。ただ、自分がよいと思っても、その意見や情報が正しいとは限りません。

他人の意見はバイアス(固定観念)がかかっていることも多く、客観性に欠ける可能性があるというのは常に意識をしておくべきです。そのためには、必ず情報の信憑性を確かめるクセをつけてください。情報の裏を取る重要性については、次項で解説します。

情報の裏を必ず取る

前述の通り、人の意見やネット上の情報を鵜呑みにするのは、非常に危険です。たしかに親しい友人からよい情報を聞けば、信じてしまうのが人情でしょう。検索して、知りたい情報がヒットすれば、じっくりと読み込んでしまうはずです。

しかし残念ながら、そういった情報が正しいという保証はどこにもありません。情報の裏を取らず無条件に信じてしまえば、間違った判断を下す大きな要因となってしまいます。

洞察力のベースとなる情報がそもそも間違っていたら、正しい判断を下せるわけがありませんよね。そういった状況を回避するには、必ず情報の信憑性を確認することです。

たとえば、ニュースの情報も、他の媒体ではどのように報道されているか、複数の信頼できるソースで比較してみてください。とくに海外の情報は、要注意です。日本のメディアと海外のメディアで、大きく論点が異なっているケースも少なくありません。

「大なり小なり、情報には発信者の思惑が組み込まれている」という事実に、私たちはしっかりと向き合う必要があります。

◆裏を取る方法「クリティカルシンキング」については、コチラの記事でお読みいただけます

直感との正しい付き合い方を身につける

どんなに洞察力の鋭い人でも、100%正確に状況を分析するのは不可能です。しかし、鋭い洞察力をもつ人は、致命的な判断ミスをほとんどしません。

情報収集能力の高さや正確な分析能力と同時に、直感との付き合い方が非常にうまいのも大きな理由のひとつです。

直感とは、頭で考える前に感じる「なんとなく◯◯そうだ」という感覚のこと。知り合いや友人から新しい人を紹介されたときに、この人はなんとなく信頼できないと感じたことがあるでしょう。

出会ったばかりで、その人となりがよくわからないのに、ネガティブな印象を受けてしまう。これは、まさにあなたの直感によるものです。

多くの人は、根拠がないという理由で直感を軽視しがちです。ですが、直感を軽視してはいけません。なぜならこうしたネガティブな直感は、これまでの経験から判断して、脳が「危険だから注意せよ!」と警告を出している状態だからです。(よい意味での直感もあります)

もちろん、直感を過信するのも危険です。直感を信じると同時に、先ほどお伝えした通り、必ずその裏付けを取るように心がけてください。

◆直感を引き出す方法については、コチラの記事でお読みいただけます

洞察力をコミュニケーションに活かす

せっかく深く鋭い洞察力があっても、それを実生活に活かせなければ、あまり意味がありません。洞察力を身につけたらどのような場面で活用していくか、その点をイメージしておくことは非常に重要です。

洞察力がもっとも役立つのは、やはり対人関係でしょう。ものごとの本質や相手の感情を的確に見抜けるようになれば、他人とのコミュニケーションがスムーズになります。

たとえば、大きなプレゼンを控えた同僚が資料作成中に深刻そうな顔をしていたら、「あっ、おそらく資料づくりがうまくいっていないのだな」と推測できます。「資料づくりは順調?」と声をかけてあげれば、「じつは……」と相談されるかもしれません。

そこで、さりげなくアドバイスができると、相手から感謝されるし、あなたの信頼度が大きくアップします。

これはあくまでも一例ですが、ぜひ周囲にいる人の表情や態度にもっと注意を払ってみてください。言葉だけでなく、表情や態度から、じつにたくさんの情報が得られることに気づくはずです。

自分に関心を向けてサポートしてくれる人がいたら、相手は好意をもってくれます。あなたになにかあれば、今度はきっとあなたを助けてくれるでしょう。

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まとめ

ここまでお話ししたように、ビジネス、いや日常生活においても、ものごとの本質を見極める洞察力は欠かせない重要な能力です。

もし、今の自分に洞察力が足りていないと感じているなら、今回紹介した洞察力を鍛える方法に取り組んでみてください。そうすれば、必ず結果はついてくるはずです。