記事の監修
株式会社瞬読 代表取締役山中恵美子
大学卒業後、関西テレビ放送株式会社に勤務。2009年学習塾を開講し3万人の生徒が卒業。
学習効果を上げる方法として速読を取り入れる。これが後の「瞬読」となり生徒が次々と難関校に合格。
2018年瞬読のみの講座が開講し、現在受講生は2,600名を超える。
著書『瞬読』は10万部超えのベストセラーに。その他、TV・ラジオなどメディアにも多数登場し、全国に瞬読を広めている。
近年、SNSやチャットといったツールが一般的になり、文字によるコミュニケーションが激増しました。そこで俄然注目されるようになったのが、「読解力」です。
文字を主体にしたコミュニケーションの場合、読解力がないと変な誤解が生まれやすく、人間関係が壊れてしまう危険性もあります。そこで今回は、読解力に関する基本的な知識と、読解力が向上する方法について、解説していきます。
目次
読解力の基礎知識
読解力といっても、具体的にどういう能力を指すのか、いまいちハッキリしないという人も少なくないはずです。読解力向上の方法を紹介する前に、まずは読解力についてしっかりと学んでおきましょう。
読解力とは具体的にどういう能力なのか
読解力とは、文字通り、「読んだ内容を正確に理解する能力」です。とはいえ、この説明だけでは、イマイチ内容がわかりにくいと思います。
そこで、OECD加盟国を中心に定期的に実施される、国際的な学習テスト「PISA」を調べてみたところ、読解力は以下のように定義されていました。
自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力。
※引用:1 PISA調査における読解力の定義,特徴等:文部科学省
PISA読解力テストで測定する能力を見ると、さらに読解力に必要な要素が明確になります。
- 情報を探し出す
- 理解する
- 評価し、熟考する
つまり、ただ読んだ文章を理解するだけでは足らず、「その内容の真偽をきちんと評価して、しっかりと自分で考えられる」ところまでできて、はじめて読解力があるといえるわけです。
日本人の読解能力は低下しているの?
日本人の読解力は低下していると、よく言われます。実際のところ、15歳児を対象におこなわれる「OECD生徒の学習到達度調査(PISA)」では、回を重ねるごとに読解力の順位は低下し続けていました。
ところが最新の調査PISA2022※では、PISA2018の11位から、一気に2位まで上昇しています。つまり、日本人の子どもの読解力は、世界のレベルと比べて決して低くはないということです。
もちろん、この結果はあくまでも試験上のことだけであり、実際はさまざまな問題を抱えています。しかし少なくとも、日本人はある程度しっかりとした読解力の基礎を身につけていると判断しても構わないでしょう。
なお、成人については、2022〜2023年にかけておこなわれた国際成人力調査の結果が、おそらく2〜3年後に発表されるはずです。10年前の第1回調査で1位だった読解力が、どのような結果になっているのか、発表が待たれるところです。
※参考:文部科学省・国立教育政策研究所「PISA2022のポイント」
自分の読解力を評価する
読解力の重要性を理解しても、自分の読解力レベルがわからないと、改善の必要性を判断できないですよね。では、どうやって自分の読解力を確認すればよいのでしょうか。
基礎的な読解力については、「リーディングスキルテスト」の受験をオススメします。小学生から大人まで、全国で20万人以上が受験しているテストなので、信頼性が非常に高いです。
主語・述語・修飾語といった文構造だけでなく、同義文の判定や推論の組み立てについても、分析してもらえます。
もう少し気軽に確認できる方法としては、家族・友人・同僚から、自分の読解力についてフィードバックをもらう方法もオススメです。
もちろん、テストのようなこまかい分析は期待できません。しかし、「読解力があるからお願いした資料もきっちりつくってもらえる」「時々変なことを言うときがある」など、普段の状況を知っている人からの評価は非常に参考になります。
読解力が重要な理由
読解力を身につけると、仕事や日常生活において、さまざまなメリットをもたらしてくれます。この章では、読解力が重要な理由を4つ紹介します。
情報収集のスピードが速くなる
読解力を高めると、情報収集のスピードが劇的に向上します。多くの人は、なにか知りたいことがあると、インターネットで検索するでしょう。(今はAIも台頭してきましたが)
検索上位の記事を中心に、いろいろなテキスト媒体を読み込むはずです。もちろん、ネット上の記事だけでなく、書籍を調べる人も多いでしょう。いずれにせよ、膨大な文章を読み、必要な情報をピックアップするには、かなりの時間がかかります。
しかし、読解力のある人は、文章をサッと読んで必要かどうかを判断できるので、情報収集にムダがありません。こうしたメリットは、とくにビジネスの場において威力を発揮します。情報を素早く集めて、顧客や上司に提案できれば、ライバルより一歩も二歩もリードできるはずです。
重要なポイントを的確に理解できる
先ほど、情報収集のスピードについてお話ししました。情報収集が素早くできるのは、優れた読解力により、重要なポイントを的確に理解できるからです。
現代社会は情報が簡単に手に入る時代であり、少し検索すればほぼなんでも答えが見つかります。しかし、目にする情報すべてが、等しく重要なわけではありません。
本にしても、本当に重要な箇所は数%という話をよく聞きます。たしかに、多くの本では、理解しやすくするための前フリや例・繰り返しが多用されていて、じつはなくても成立するパートが多いです。
読解力の乏しい人は、こういったオマケ的な部分も含めて、全部じっくりと読もうとします。すべて読めば取りこぼしは減るかもしれませんが、とにかく時間がかかり過ぎです。
一方で読解力があれば、文脈を素早く把握し、重要なキーワードや概念を効率よくピックアップできます。そういう意味で言うと、全文をザッと読みながら重要な箇所をイメージとして記憶していく右脳速読法は、非常にオススメです。
◆右脳速読法については、コチラの記事でお読みいただけます
情報の真偽を見抜く力がつく
読解力が高まると、目にした情報の真偽を見抜く能力も同時に養われます。この能力は、現代社会において、非常に重要です。なぜなら、インターネット上には正確な情報以上に、大量の誤情報や偏見に満ちた内容が氾濫しているからです。
いくら読解力があっても、間違った情報を信用してしまえば、かえって情報収集能力のスピードの速さが仇になってしまいかねません。でも、安心してください。高い読解力をもつ人々は、テキストを深く分析し、その情報源の信頼性や論理的な一貫性を客観的に評価できます。
なお、情報の真偽を見抜くという意味では、後述する「批判的視点で文章を読む」思考法(クリティカルシンキングという)は非常に有効です。
「本当に内容が正しいのか?」
「そもそも前提が違っているのではないか?」
「ほかにも選択肢はないのか?」
上記のように、批判的視点で文章を読めるようになれば、間違った情報に踊らされるリスクを大幅に軽減できます。
コミュニケーション力がアップする
読解力の向上は、コミュニケーション能力の向上に対して、ダイレクトに好影響を与えます。文章を読む過程で身につく洞察力や理解力は、言葉によるコミュニケーションの基礎をつくってくれるからです。
高い読解力をもつ人は、書かれている言葉の背後にある意図や感情を正確に捉えます。もちろん、会話によるコミュニケーションにおいても同様の能力を発揮できるので、相手の気持ちに寄り添った対応ができるのです。
ときには自分の主張をハッキリと伝えることも重要でしょう。しかし、多くの人は「自分を理解してもらいたい」と切望しているものです。だから、ほんの少し聞き役に回るだけで、相手から好意を抱いてもらえます。
もし、読解力を鍛えてコミュニケーションに活かしたいと思っているなら、小説がオススメです。文章で登場人物の心理描写や発言を表現する小説では、どうしても情報量に限界があります。しかし、小説を大量に読み込むうちに、不足する情報を自分で補って考えるクセがつきます。
そうなると、言葉の裏側に隠れた相手の気持ちや考え方を、少しずつ予測できるようになってくるはずです。こうした経験は、実際の会話の場においても、必ず役に立ちます。
読解力を向上させる9つの方法
もし、自分の読解力に不安を感じているなら、今回紹介する9つの方法を試してみてください。どれか1〜2個習慣化するだけでも、読解力はぐんとアップするはずです。
◆読解力を向上させる方法については、コチラの記事でもお読みいただけます
異なるジャンルの本を読み、語彙と表現力を増やす
好きな本を読むのは楽しいですが、読解力を向上させたいなら、さまざまなジャンルの本を読んでみてください。あまり馴染のない分野の本を読むと、以下のようなメリットがあります。
- 新しい知識が手に入る
- 幅広い語彙が身につく
- 創造力の向上
まず、多ジャンルにまたがる読書は、新しい知識を私たちに与えてくれます。「普段あまり読まないジャンルの本を読む」と決めないと、こういった新しい知識に触れる機会は、なかなかありません。
また、どのようなジャンルにも、それぞれ独自の専門用語や表現方法があるものです。多ジャンルの読書によって、知識だけでなく、幅広い語彙力が身につきます。
さらに、こうやって身につけた知識や新しい視点の影響を受け、今まで考えもつかないアイデアが生まれやすくなります。興味のないジャンルの本を無理に読む必要はありませんが、少しでも面白そうと思ったら、ぜひ積極的にトライしてみてください。
辞書を活用する
読解力の基本は、やはり語彙力です。どんなに頭の切れる人でも、言葉の意味を知らなければ、内容を正確に理解するのはむずかしいでしょう。一方で、言葉のストックの豊富な人は、知らない言葉に引っかかることもなく、スムーズに読書が進みます。
もし、意味のわからない言葉で読書が止まってしまうことが多いなら、ぜひ辞書を活用してください。辞書には言葉の意味だけでなく、用法、類語との違いなどがしっかりと書かれています。
なお、新聞や公文書のように堅い表現が多い媒体を読む場合は、「記者ハンドブック」がオススメです。公的な文章(とくに新聞)独自の表記方法を詳しく解説している本なので、理解しにくい表現があったら、その都度チェックしてみるとよいでしょう。
文章作成のルールを知っておく
文章作成のルールを知っておくと、読解力を高めるうえで非常に役立ちます。たとえば、重要なルールのひとつである「主語と述語の距離」を考えてみましょう。
「彼は、私の営業方針が間違っていると、激しく批判した。」という文章の意味は理解できます。しかし、主語の間に別の主語が入っているので、少々わかりにくいですよね。
この文章を「私の営業方針が間違っていると、彼は激しく批判した。」とすれば、批判した人が誰なのか間違える余地はありません。
これは、あくまでも一例であり、ほかにも押さえておくべき文章のルールは数多くあります。
- 逆接・順接の接続詞(しかし、だからなど)をしっかりと見極める
- できるだけ文章は短くする
- 一文一義が基本
- 主語と述語のねじれに注意する
- 修飾語と被修飾語はできるだけ近くに置く
- 代名詞の代わりに名詞(固有名詞)を使う
- むずかしい専門用語を多用しない
- 二重否定(〜なわけではないなど)は使わない
- 漢字とかなの適正な配分を意識する
- 曖昧な表現ではなく数字や根拠を提示する
- 文章は能動態が基本(できるだけ受動態は使わない)
上記のような文章作成のルールを知っていると、実際に読書をした際に、文章の意図や構造をしっかり捉えられるようになります。ぜひ試してみてください。
◆基本的な文章構成ルールについては、コチラの記事でお読みいただけます
わからない点があれば繰り返し読み返す
文章を読んでいて「ここ、どういう意味だろう?」と感じたら、その部分を繰り返し読み返すことが大切です。本の内容はこれまでに読んだ部分の理解を前提に進むので、わからない箇所を放置すると、後半部分の理解が浅くなってしまう可能性があります。
もし複雑な説明につまずいたなら、「◯◯とは わかりやすく」などと入力して、簡単に説明しているサイトで確認するのもひとつの方法です。AIに噛み砕いて説明してもらうのもいいかもしれません。言葉の意味がわからないときは、できるだけ辞書を引きましょう。
そのうえで、何回か読み返せば、必ず内容を理解できるはずです。何度も読み返すのは面倒に感じるかもしれませんが、わからない箇所はわかるまで確認するのが基本です。
もちろん、詳細箇所にこだわりすぎるのもよくありません。まずは最後まで読んでから、あらためて読み返してみたら、スッと理解できたというケースも少なくないからです。このあたりのバランスについては、読書量を重ねて、少しずつ慣れていくしかないでしょう。
アクティブリーディングを意識する
アクティブリーディングを意識すると、読解力は一気に向上します。アクティブリーディングとは、文字通り、積極的に理解しようと意識しながら読む読書法です。
読解力の低い人は、なにも考えずに、とりあえず頭から読みはじめます。一方、読解力の高い人は、「自分がこの本で知りたい内容」を明確にしてから読書に取りかかるのです。
そのためには、まず目次を必ず読みます。目次は、書いてある内容の位置関係を示した、地図のようなものです。見出しがしっかりしていれば、目次を見るだけでも、おおよその内容は理解できてしまうでしょう。
読み方にしても、本当に正しいことが書かれているか、チェックを怠りません。読後の要約を前提に読書を進めていくため、重要な箇所にマーキングするのもよい方法です。当然わからない箇所があれば、辞書を活用して、正確な意味の理解を心がけます。
こういった意識のある人と、ただ頭から読んでいる人を比較すれば、理解度が天と地ほど違ってくるのは当然の結果です。なお、前述のマーキングや要約については、このあと詳しく解説します。
批判的視点で文章を読む
批判的視点(クリティカルシンキング)で文章を読むと聞けば、なにかアラ探しのようなマイナスイメージを感じる人もいるはずです。
しかし、クリティカルシンキングは、批判をして相手を打ち負かすのが目的ではありません。情報を盲目的に信用せず、あくまでも情報の真偽をきちんと確認しようというのが、クリティカルシンキングの目的になります。
書籍の内容はすべて正しいと思いがちですが、じつは著者の個人的思想がかなり介入しているケースも少なくないのです。データで正当性を謳っている場合でも、頭から信用してはいけません。データの扱い方次第では、真逆の方向に論理を導くことも可能だからです。
たとえば、同じ50%という統計結果でも、「50%だから危険」と「50%もあるから問題ない」という表現では、読み手の受ける印象がまるで違います。
こういった書き手のバイアスを排除して、正しく読み解くためにも、ぜひクリティカルシンキングを意識してみてください。
◆クリティカルシンキングについては、コチラの記事でもお読みいただけます
論理的思考でほころびを探す
クリティカルシンキングで情報の前提を確認したら、同時に論理的思考でほころびを探しましょう。匿名のネット上の情報はともかく、書籍のような出版社がバックについている媒体は、おおむね論理性に大きな破綻はないものです。パッと見てすぐにわかるほど論理が破綻していたら、いわゆるトンデモ本に認定されてしまいますからね。
とはいえ、公的な資料でもない限り、文章には必ず著者のバイアスがかかっています。たとえば、投資を勧める立場の人が書く本は、基本的に投資のよい面が大きくクローズアップされているでしょう。
論理的に考えれば、株の成功率は50:50であり、負けるリスクも非常に大きいのが投資の本質なはずです。でも、株のリスクを前面に押し出してしまえば、株は怖いものという認識が広まり、本が売れなくなってしまいます。
これは少々極端な例ですが、発信者がどういう立場で情報を発信しているかを考えると、論理的なほころびにつまずくことは少なくなるはずです。
重要なポイントに注釈とマーキングをする
重要なポイントに注釈とマーキングをするのも、読解力の改善にとても有効な方法だと思います。マーキングは意味がないという人もいますが、重要な箇所をチェックしておけば、あとから読み直す際のトリガーになってくれるでしょう。
目印がなければ、またひと通り読み返すことになるため(1回目よりは頭に入っていると思いますが)、時間を大きくロスする可能性が高いです。
注釈にしても、理解の補助として、大いに意味があると考えます。わかりにくい表現を自分の言葉に置き換えたり、関連情報を補足したりすれば、あとから繰り返し読む際に、大きな助けになってくれるはずです。
ただし、あまりにもマーキングが多すぎると、結局どこが重要なのか、わからなくなってしまいます。時間もかかりますので、マーキングは最低限度に抑えておくほうが無難です。
読んだ本を自分なりに要約してみる
要約ノートの作成も、読解力アップに大きく役立ってくれます。要約するには、重要なポイントを自分なりの言葉でうまくまとめる必要があるため、注意深く内容を理解しようという意識が働くからです。
慣れないうちは、前述の注釈やマーキングを上手に活用して、重要な箇所を目視できるようにするとよいでしょう。
もちろん、マーキングした箇所を丸ごと写しても意味がありません。大意を汲み取ったら、自分なりの言葉でうまくコンパクトにまとめていきます。
最初はうまくいかないかもしれませんが、慣れてくると読んでいる最中に、「つまり◯◯ということだな」と要約できるようになってくるはずです。
また、せっかく要約ノートをつくるのならば、その内容をSNSや読書感想サイトなどで、発表してみるのもいいかもしれません。他人に説明するとなれば、より注意深く読む習慣が身につきますので。
◆具体的な要約のポイントについては、コチラの記事でお読みいただけます
読解力と他のスキルの関係
読解力は決して単独で存在するスキルではなく、創造性やコミュニケーション力といった、ほかの能力と密接に関係しています。具体的に、読解力がどのようにほかのスキルと関係しているのか、今回は4つの能力を例に説明していきます。
創造性を高める読解力の役割
読解力は、創造性を高めるうえで大切な役割を果たします。創造性といっても、なにもないところからまったく新しいアイデアを生み出すのは不可能です。そもそも、情報社会の現代では、ひと通りの情報が誰でも簡単に手に入ります。
ゼロからつくり出すというよりも、既存のアイデアをいかにうまく組み合わせて、新しいものを創出するかが重要なのです。そういう意味で、情報の仕入れ方が非常に重要なポイントになってきます。
ネットですぐに確認できる動画がもてはやされる昨今ですが、情報収集に読書は欠かせません。主な理由は5つあります。
- 周辺情報も含めて網羅的に収集できる
- 新しい視点に出会える
- 復習がしやすい
- ビジュアルから受ける余計な先入観の影響が少ない
- ある程度の信頼性や権威性が担保されている
動画情報は、歴史が浅い分、情報の信頼性に疑問符がつく場合も多いです。その点、長年読み続けられている名著なら、情報の信頼性はまず問題ないと考えてよいでしょう。
また書籍は読み返しが容易なので、重要な部分だけを繰り返し読み、使える情報に落とし込みやすいです。優れた読解力で文章の奥深い部分まで理解できると、そこから得た知識やアイデアを発展させて、より豊かな発想を育てることができます。
コミュニケーション力との相互作用
読解力とコミュニケーション力は、互いに深く関係しています。読解力を高めることで、コミュニケーション力も向上し、高いコミュニケーション力によってさらに読解力が深まるのです。以下、その相互作用について簡単に説明します。
- 相手の意図を正確に理解できる
読解力があると、相手の言葉や文章の意図を深く理解できます。相手がなにを伝えたいのか、どのような気持ちで話しているのかを正確に把握できるため、誤解が生じにくくなり、スムーズなコミュニケーションが可能です。
- 自分の意見を的確に伝えられる
読解力が高いと、文章の構成や適切な表現方法を自然に学べます。その結果、自分の考えや意見を整理して伝える力も身につくのです。言いたいことを的確に伝えられれば、より効果的なコミュニケーションが取れるようになります。
- 意思の疎通を図る機会が増える
読解力が高い人は、相手の考えや感情に基づいた質の高いコミュニケーションが得意です。そのため、相手から好意をもってもらいやすく、意思の疎通を図る機会が増えるので、ますます関係がよくなります。
このように、読解力によって対人関係がよくなると、言葉の裏側にある気持ちや意図に敏感になります。そういう状態で読書をすると、さらに深いレベルで文章を読み解けるようになってくるのです。
問題解決能力への影響
読解力は、問題解決能力にも大きな影響を与えます。読解力とは、ようするに情報を正しく読み解く力です。問題解決をするには、まず問題点を正確に把握しなければなりません。読書で身につけた知識や論理的思考が、問題点の把握に非常に役立ってくれます。
読書の習慣がない人は、どうしても自分の先入観でものごとを判断する傾向が強いです。なぜなら、ほかの考え方を知らないからです。
その点、日頃から大量の本を読んでいる人は、さまざまな考え方や知識を身につけています。読書から得た高い読解力があれば、広い視点からより多くの解決策を見つけられるでしょう。
これから問題解決能力を高めたい人は、とくに論理的思考を意識した読書をオススメします。
◆問題解決に有効な論理的思考については、コチラの記事でお読みいただけます
記憶力と読解力の相乗効果
記憶力と読解力は、お互いに影響を与え合う関係にあります。まず、読解力が高いと、内容の理解が容易になり、その結果として記憶に残りやすくなります。一方で、むずかしい本を読んだとき、理解が曖昧なまま放置しておくと、すぐに忘れてしまうでしょう。
また、記憶力がよいと、過去に読んだ記憶を思い出しながら新しい文章を読めるので、より深い理解が可能です。
記憶力と読解力の相乗効果を活かすには、まず復習が重要になってきます。人間誰しも1回ですべてを記憶するのは不可能です。しっかりとした記憶として定着させるためにも、理解できるまで繰り返し読み返してください。
覚える際には、自分の言葉でまとめた内容を覚えた方が、より鮮明に記憶に残ります。鮮明な記憶は、記憶から引き出す際も、スムーズです。読解力を高める効率のよい記憶法については、別記事で詳しく解説しています。ぜひ、そちらの記事もご参照ください。
◆効率的な記憶法については、コチラの記事でお読みいただけます
読解力向上に役立つオススメの書籍
最後に、読解力向上に役立つオススメの書籍を3冊紹介します。
「読書する人だけがたどり着ける場所」齋藤孝
最初に紹介するのは、メディア露出も多い明治大学文学部教授「齋藤孝」さんによる、「読書する人だけがたどり着ける場所」です。
これまでにも、「読書力」や「読書の全技術」といった読書に関する書籍を出版していますが、当書も20万部を超えるベストセラーとなっています。
この本は、読書を通じて個人が教養を身につけ、より深みのある人間になる方法を提案しています。
「今の時代、ネットで情報が入るから読書は必要ない」という風潮も強いですが、ネットの情報は表面だけの情報が多く、非常に浅い知識になりがちです。
その点、読書は物事の本質を身につけられます。じっくりと文章に向き合うことで本の内容を疑似体験し、人生観や人間観を深め、人格の成長が期待できるからです。
読書において、このじっくりと本に向き合う姿勢(本書では構えと表現)は、非常に重要です。本からより深い情報を引き出す方法が知りたい人は、ぜひこの本を手にとってみてください。
「社会に出るあなたに伝えたい なぜ、読解力が必要なのか?」池上彰
「場にそぐわない発言や行動をしてしまう」「相手とのコミュニケーションがうまくいかない」といった人は、読解力が不足しているケースが多いです。この本は、社会に出る新しい世代に向けて、読解力の重要性や読書力の伸ばし方を丁寧に解説してくれています。
本書では読解力について、「論理的読解力」と「情緒的読解力」は異なる能力であり、両方身につけることが重要であると述べています。
今の時代は、どうしても論理的に文章を読み解く力が重視されがちです。しかし、文章の裏にある相手の意図や感情を読み取る「情緒的読解力」ができて、はじめて本当の読解力といえます。
SNSやネットで頻繁に起こる炎上騒ぎも、こうした情緒的読解力不足が大きな原因です。こうした不要なトラブルを起こさないためにも、著者は「読書量を増やして、他人の経験を自分も追体験してみる」ように勧めてくれています。
「全教科対応! 読める・わかる・解ける 超読解力」善方 威
「全教科対応! 読める・わかる・解ける 超読解力」は、善方 威氏によって書かれた読解力に関する本です。
本書は、受験を控えた学生がターゲットの本ですが、論理的な文章を読み書きする必要のあるすべての人に役立つ内容になっています。
著者は法律の文章に携わってきた経験が長く、難解な法律文書を図式や道具に当てはめてわかりやすく読み解く方法を編み出しました。そのノウハウをまとめたのが、本書なのです。
- すべての文章:「〇×△」
- 論説文:「二元論スペシャル」「言語の構造」
- 物語文:「成長の物語」「ラブラブスペシャル」
など、図式を活用した著者オリジナルの読解法が満載の1冊となっています。非常にわかりやすい説明となっており、小学生や中学生でも十分理解できるオススメ本です。
まとめ
読解力が不足すると、いい加減な情報に騙されたり、コミュニケーションがうまくいかなかったりします。今回紹介した「読解力を向上させる9つの方法」を参考に、しっかりと読解力をアップしていきましょう。