記事の監修
株式会社瞬読 代表取締役山中恵美子
大学卒業後、関西テレビ放送株式会社に勤務。2009年学習塾を開講し3万人の生徒が卒業。
学習効果を上げる方法として速読を取り入れる。これが後の「瞬読」となり生徒が次々と難関校に合格。
2018年瞬読のみの講座が開講し、現在受講生は2,600名を超える。
著書『瞬読』は10万部超えのベストセラーに。その他、TV・ラジオなどメディアにも多数登場し、全国に瞬読を広めている。
最近では、個人間だけでなく業務上のコミュニケーションも、LINEなどのSNSを利用することが多くなりました。ただこういったSNSでは、どうしても短い文章でのやりとりが多く、うまくコミュニケーションが取れないという悩みをよく耳にします。
でも、安心してください。読解力を鍛えれば、こういった問題に悩まされる心配もありません。
今回の記事では、読解力アップで得られるメリットや、読解力を鍛える方法などについて、わかりやすく解説していきます。自分の読解力に不安のある人は、ぜひ参考にしてください。
目次
読解力を鍛える前に知っておきたい読解力不足の原因とは
あとから読解力を鍛える7つの方法を紹介しますけれども、その前に読解力不足に陥る原因を明確にしておきましょう。原因がわかれば、7つの方法がどういう部分を改善してくれるのか、よく理解できるようになります。
日本人の読解力は大きく低下している
参考:文部科学省「OECD 生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント」
なにをおいてもまずは、日本人の読解力が低下している現状をしっかりと確認しましょう。経済協力開発機構 (OECD)では3年に1度、15歳の男女を対象に「学習到達度調査(PISA)をおこなっています。
PISAで調査する項目は、読解力・数学的リテラシー・科学的リテラシーの3項目。2018年におこなわれた最新の調査では、この3項目のうち「読解力」だけがランクを大きく落としてしまいました。
2012年にOECD加盟国中4位だった読解力は、2015年「8位」・2018年「11位」と、ついにトップ10から陥落してしまいます。
とはいえ、じつは読解力の試験のなかでも、「理解力」では依然高い点数を維持しているのです。今回点数を下げたのは、「情報を探し出す力」と「評価して熟考する力」のふたつです。
また同時に、根拠を提示して自分の考えを的確にまとめる力も苦手という結果が出ています。
もっとも、普段使い慣れていないデジタル機器での試験だったため、ランクが下がったという経緯も見逃せません。今回の試験で、日本の教育現場へのデジタル導入の遅れが浮き彫りになりました。
いずれにしても、書き手に「根拠を提示して自分の考えを的確にまとめる力」が足りず、読み手に「評価して熟考する力」がなければ、誤解を生みトラブルが増加するのも当たり前です。今の日本には、早急な読解力の改善が必要なのは間違いありません。
SNSによる短文のやりとりが増えた
メリットの項目でも触れたように、近年友人や知人との連絡は、LINEなどSNSを利用する人が増えてきました。 また社会人の業務連絡にかんしても、電話やメールではなく、SNSでサッと済ませてしまう方が合理的だと主張する人も増えています。
しかしSNSは、手軽にコミュニケーションが取れる反面、読解力がないとトラブルが起きやすいコミュニケーションツールです。
SNSの情報は、「流し読み」が基本になります。じっくり読むというよりは、必要な箇所にサッと目を通すだけ。そのため、長文は好まれず、どうしても短文にならざるを得ません。つまり現在のコミュニケーションに使われる文章の多くは、そもそも伝えるべき内容が薄く、言葉足らずなわけです。
それでも言葉に込められた相手の気持ちを推し量る読解力があれば、大きなトラブルにはなりません。しかし前述の通り、いかんせん読解力が低下しています。
2015年の総務省調査※によると、SNSでトラブルにあった人は全体で15.6%。この数字をみるとそれほど多くないように感じますが、これが20代以下になると、約3人に1人がトラブルに巻き込まれているそうです。
トラブルの内容としては、「自分は軽い冗談のつもりで書き込んだが、他人を傷つけてしまった(誤解)」、「自分の発言が自分の意図とは異なる意味で他人に受け取られてしまった(曲解)」などが挙げられていました。
現在の流れをみる限り、SNSでのコミュニケーションは、もはや避けられないと考えておくべきです。であれば、しっかりとコミュニケーションが取れる程度の読解力を、早急に身につける必要があるでしょう。
※参考:総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への人々の意識 に関する調査研究」
対面での会話が減っている
前述のとおり、私たちのコミュニケーションは、SNSなどを使った文字によるものへ大きくシフトしました。つまり、人と直接顔を合わせてじっくりと会話をする時間が、以前よりも大幅に減っているわけです。
そのため、普段なら決していわないようなキツイ言葉や、激しい表現を使う人が増えました。直接相手の反応がみえないから、自分の言葉で相手がどう感じるのかを想像できないんでしょうね。
こういった状況は、家族の関係性が変化したことで、さらに悪い方向へ進んでいるように感じます。昔は食事中や居間でくつろぐ時間に、家族といろいろ話ができました。今日のできごとや自分の考えを両親や兄弟に話すことで、自然と他人の反応を学べたのです。
ところが今や、家族が一緒にいても、各自がスマホで好きなことをしています。これでは、相手の気持ちを汲み取ることなど、できるわけがありません。(スマホについては親世代にも問題はありますね)
スマホによる便利な生活は手放せないとしても、私たちはもう少し対面でのコミュニケーションを増やすべきではないでしょうか。
情報の正当性や信頼性を確かめる訓練を受けていない
ほとんどの人は、情報(文章や会話)の正当性や信頼性を確認する訓練を受けていません。漢字の読み方や文章の構成は学校で習っても、内容が正しいかどうかチェックする方法を教えてもらっていないのです。だから前述のとおり、「情報を探し出す力」「評価して熟考する力」が、大きく低下してしまったのでしょう。
今やネットを調べれば、知りたいことの答えがすぐにみつかる時代です。しかし、ネットの記事にはソースが曖昧なものも多いし、そもそも間違っている情報もたくさんあります。
書き手の主義主張が強く反映されるという意味では、本も危ないですね。きちんと出版されているからといって、内容が正しいとは限りません。事実と主観(意見)は、まったく異なるものです。
本は売れるために、どうしてもインパクトのある主張が強調される傾向にあります。エビデンスとして提示されたデータも、見せ方次第でプラスマイナスどちらにも誘導が可能です。だから、事実と主観をみわける力がないと、簡単に事実と主観を混同してしまいます。
【社会人】読解力アップで得られる5つのメリット
読解力は、ある程度の期間をかけて身につけていくものです。メリットを理解していなばかりに途中で挫折することのないように、まずは読解力アップで得られるメリットを、しっかりと理解してしまいましょう。
- インプット量が激増
- 質の高い情報だけをインプットできる
- 誤解や曲解によるトラブルが減る
- 仕事の効率があがり周囲の評価もよくなる
- 成績が大幅にアップ
それでは、ひとつずつ解説します。
インプット量が激増
優れた読解力をもつ人は、本の内容を効率よく理解できます。途中で悩むことなくスムーズに読書ができれば、当然インプット量も増えるわけです。インプット量が多く、頭のなかにたくさんの情報を蓄積している人は、なにか大事な決断をする際にミスをする確率が少なくなります。
とはいえ、ネットで調べれば大抵のことはすぐにみつかる時代です。だから、「必要なときに調べれば十分でしょう」と考える人がいても、不思議ではありません。私もそういう側面があることは承知していますし、実際知識の価値が以前よりも下がっているのは間違いないでしょう。
しかしいくら時代が変わっても、頭のなかにたくさんの情報をもつ人は、やはり「地頭のよい人」という高い評価を受けるものです。
とくに結果をすぐに出す必要のあるビジネスパーソンの場合、判断材料となるさまざまな知識の有無で、ビジネスチャンスをつかめるかどうかが決まってきます。そう考えると、やはり読解力の有無は、大きな意味をもつといえるのではないでしょうか。
質の高い情報だけをインプットできる
読解力に長けていると、有益な情報とそうでないものを感覚的に選別できます。簡単に書いていますが、これは本当に大きなメリットだと思います。
前述のとおり、今や調べればほとんどの答えがみつかる時代です。しかし世の中には、有益な情報だけでなく、誰が書いたのかもよくわからないクズのような情報も溢れかえっています。
一見信頼できそうな情報にみえても、突っ込んで調べるとじつは確かなエビデンス(根拠)をみつけられないというケースが、それこそ日常茶飯事です。
こういった質の低い情報を避けるには、とにかく情報の真偽を読み取る読解力を鍛えるしかありません。質の低い情報は、大なり小なり「論理的破綻」があるものです。そういった綻びを鋭い読解力で発見できれば、もう質の低い記事に騙されることはなくなるでしょう。
誤解や曲解によるトラブルが減る
「誤解や曲解によるトラブルが減る」のも、読解力がある人の大きなメリットといえます。というのも私たちが使う日本語には、明確な意思表示をぼかした「あいまいな表現」が多く、誤解を生みやすいのです。
たとえば、「のちほどご連絡します」という文を考えてみましょう。もしあなたが2〜3日後を想定しているのに、相手が「のちほど=1〜2時間後」とイメージしていたら、連絡の遅さに間違いなく相手は気分を害したはずです。
しかしあなたに読解力があれば、「これは期限を明確にしたほうがいい」と気づき、相手に具体的な日時を提示したでしょう。「のちほど」の代わりに、「遅くても本日の17時までにはご連絡いたします」と具体的に数字を告げれば、ムダな誤解を防げます。
しかも最近は、SNSやメールなど、相手の感情が見えない「文章でのコミュニケーション」が大幅に増えています。誤解や曲解を少しでも減らすためにも、やはり読解力は鍛えておきたいですね。
仕事の効率があがり周囲の評価もよくなる
ビジネスの現場では、的確かつ円滑なコミュニケーションが欠かせません。打ち合わせや会議で上司や取引先が発言した内容を的確に理解できれば、相手の望む結果を提供できるので、自然とあなたの評価は高まります。
現代のビジネスパーソンは、非常に多忙です。いちいちこまかい部分まで説明しなければいけない相手よりも、少ない情報でも的確に理解してくれる人を重宝するのは当然でしょう。
また、仕事に必要な資料や文献を効率よく読みこなせれば、仕事のクオリティがあがり、あなたの仕事ぶりはさらに高く評価されるはずです。
もちろん、思い込みは危険なので、適切な間隔で確認と報告はきちんとおこなってください。読解力のある人は周囲から信頼されているので、そういった基本的なビジネスのルールさえ守れば、ますます仕事がやりやすくなっていくと思いますよ。
成績が大幅にアップ
ビジネスパーソンが読解力で仕事の効率がよくなるのと同様に、読解力があれば学生の成績も大きくアップする可能性があります。
というのも、最近の脱ゆとり教育の傾向にともない、テスト問題が以前よりも明らかにむずかしくなっているのです。「答え以前に問題文の意味がよく理解できない」そういった声もよく耳にします。そういう状況のなか、読んだ内容をスムーズに理解できる力があれば、成績がアップするのも当然でしょう。
前述のとおり、日本人学生の読解力は年々大きく低下し続けています。ということは、その他大勢の同級生と同じような生活をしていたら、あなたの読解力も衰えていくわけです。
そういった状況を回避するには、意図的に読解力を鍛える必要があります。なお、読解力の具体的な鍛え方については、このあと詳しく解説していきます。
【学生】読解力で受験の結果は大きく変わるって本当?
先ほど「成績が大幅にアップ」でも触れましたが、読解力アップで得られるメリットは、社会人だけのものではありません。むしろ、受験を控えた学生こそ、より多大な恩恵を受けるでしょう。
この章では、読解力向上が受験に与えるさまざまな影響について、くわしく解説していきます。
国語以外の教科でも読解力が問われる
読解力と聞けば、関係するのは国語の長文問題だけと、考えてしまう人が多いようです。たしかに、読解力をもっとも問われるのは、国語でしょう。しかしほかの教科を甘く考えると、問題の理解に時間を取られてしまい、時間内に解答できないという事態にも成りかねません。
実際大学入試を例にあげると、大学入学共通テストへ変更になってから、数学や社会の問題ページ数が10ページ以上増えました。これは、国語以外の教科でも、問題文の意図をしっかりと読み取る力が必要とされることを意味します。
ダイヤモンドオンラインの記事※を読んでいたら、2022年共通テストに出題された数学の問題が掲載されていました。この問題は単純な計算問題ではなく、まず会話形式の文章を読んで、必要な情報をピックアップしなければ解けない形式になっているのが大きな特徴です。
※参考:共通テスト「数学IA」が難しかった“本当の理由”【大学入試2022】 | 2020年代の教育 | ダイヤモンド・オンライン
こういった問題形式に慣れていなければ、この会話部分から必要な情報を探すだけでも、結構な負担を感じるでしょう。でも普段からこういった問題に触れ、読解力を鍛えておけば、どの教科でも時間的ゆとりをもって試験に臨めます。
受験にもっとも必要なのは「必要な情報を拾い上げる力」
受験においてもっとも必要なのは、必要な情報を拾い上げる力です。「この問題はなにを問うているのか」「判断に必要な情報はどこにあるのか」をサッと見極める読解力があれば、正解の確率は大幅にアップします。
そのためには、少なくとも以下の能力を、普段から鍛えておかなければなりません。
- 語彙数
- 要約力
- 論理性
- 速読力
普段の話し言葉と違い、受験の問題には少々難解な表現が多く用いられます。そういった文章をスラスラと読み解くには、いかに言葉を知っているかがポイントです。もしわからない言葉があれば、面倒臭がらずに、辞書で確認するクセをつけてください。
なお、必要な情報を素早く探すには、文書のポイントをサッとまとめる「要約力」と問題文の意図を正しく導く「論理性」が不可欠です。こういった能力は、一朝一夕で身につくものではないので、普段から大事なポイントを素早く探し、正しい結論を導き出す訓練をしておかなければなりません。
また、時間制限のある受験では、素早く問題を読む「速読力」も問われます。速読については、のちほど詳しく解説します。
◆速読のしくみについてもっと知りたい方はコチラの記事もどうぞ
結論と理由に注目して文章を読む
前述の要約力と論理性を身につけるには、結論と理由に注目して文章を読む意識が重要です。とくに国語の長文問題では、結論と理由をいかに素早く探し出せるかによって、解答スピードが大きく変わってきます。
当たり前ですが、受験問題には、論理が破綻している問題は出題されません。そのため、結論を導く要因(理由)が、必ずどこかに提示されています。こういった理由や結論を探す場合、ぜひ以下のような接続詞に注目してください。
- 順接:「したがって」「だから」
- 逆説:「しかし」「ところが」
- 言い換え:「すなわち」「つまり」
- 理由:「なぜなら」「というのも」
- 説明:「ただし」「じつは」
- 並列:「また」「ならびに」
- 変更:「ところで」「また」
数ある接続詞のなかでもとくに意識するのは、いうまでもなく「理由」と、結論を導く「順接」「逆説」「言い換え」です。理由や結論が登場する箇所には、ほぼ例外なくこういった特定の接続詞が使用されています。
こういったポイントを押さえておけば、たとえ本番で難解な問題が出ても、それほど焦らなくて済むはずです。
基本的な文章構造を理解しておく
ここまでお話ししてきたとおり、読解力があると、余裕をもって(時間的にも精神的にも)受験本番に対応できます。以前別記事でも、試験時間の余裕を確保できるメリットについて、紹介しました。
その時間的恩恵を受けるには、当たり前ですが、できるだけ文章を速く読まなければなりません。そのためには、後述する速読がもっとも効果的です。
ただ、速読ができなくても、基本的な文章構造さえ理解していれば、それだけでも読書スピードは格段に速くなります。とくに受験の場合、くだけた小説やコラムのような、特殊な論理展開は出題されません。本を丸々一冊読むわけではないので、「起承転結」のような構成もまず出ないでしょう。
よくあるのが、「序論・本論・結論」と、「結論・理由・事例・結論」のようなパターンです。最近は、文章の世界でもグローバル化が進み、海外のように「最初にまず結論を述べるスタイル」が好まれる傾向にあります。
ただ試験という性質上、「最初にテーマを提示して理由や事例で補足、最後に結論」という流れが、もっとも一般的なように思います。このへんは試験によっても異なりますので、あくまでも参考として頭に入れておいてください。
◆速読による試験時間の短縮についてはコチラの記事もどうぞ
これさえやれば大丈夫「読解力を鍛える7つの方法
読解力を鍛える方法はいくつもありますが、今回はとくに有効な以下7つの方法をご紹介します。
- 語彙力を増やす「多読する」
- 要約する能力「要約ノートをつくる」
- 書いてみてはじめてわかる「考えていることを文章にしてみる」
- 正当性と信頼性を見極める「批判的思考で文章を読む」
- 言葉の裏側に隠れた意図を読み取る「飛ばし読みをやめる」
- 脳トレで脳の働きを活性化させる
- 読解力を鍛える究極の方法「速読」
それではひとつずつみていきましょう。
1.語彙力を増やす「多読する」
読解力をアップさせるには、まずは知っている言葉を増やすことが重要です。同じ嫌いという意味の言葉でも、単純に「嫌う」と「忌み嫌う」では、その意味合いが違ってきますよね。これは少々極端な例ですが、言葉の選択に込められた相手の意図に意識を向けると、読解力はグンとアップします。
こういった繊細なニュアンスの違いを理解するには、できるだけたくさんの文章に触れる「多読」が1番有効です。
また日本語は、言葉や文章が額面どおりの意味ではない場合も少なくありません。
たとえば、相手の意見に「なるほどね」と返答した場合、じつは納得していないことがよくあります。「とりあえず否定はしないで波風を立てないようにしよう」という、裏の意図が働いていることも多いのです。
そういった曖昧な日本式文化がよいかどうかは別として、たくさんの文章を読み文章に隠された真意を読み取れるようになると、読解力が飛躍的にアップするのは間違いありません。
◆速読と語彙力についてはコチラの記事もどうぞ
2.要約する能力「要約ノートをつくる」
私は読解力について相談を受けると、読書の要約ノートをつくるようにオススメしています。要約ノートをつくる過程で、その本の重要なポイントをしっかりと読み取り、まとめる力が身につくからです。
要約ノートをつくる場合、まずあとから繰り返し読み返すことを前提に、簡潔にまとめるのがポイントです。できれば、全体を通してまとめるのではなく、章ごとにまとめた方がより読み返しやすいでしょう。
また、とくに心に残った文章は、ぜひそのまま書き写して何回も読み返してみてください。できれば、その文章に対する意見や感じたことを一緒に書き写しておけば、より効果的です。
こうした気づきを文章として残しておくと、読み返すうちにまた新たな気づきが生まれることも多く、きっと読解力の向上に役立つでしょう。
書き方は基本的に自由ですが、記憶に残るという意味では、やはりノートに手書きが1番です。ただし手書きの場合でも、PDF形式や画像に変換してスマホやタブレットで確認できるようにしておくと、いつでも読み返せるのでより便利だと思います。
3.書いてみてはじめてわかる「考えていることを文章にしてみる」
読解力が弱い人は、そもそも自分の考えを明確にまとめる能力が不足しています。思い浮かんだ内容をうまくまとめられないので、複数の考えが頭のなかで交錯してしまい、自分でも結局なにを考えているかがわからなくなってしまうのです。
そういうタイプの人は、ぜひ自分の考えを書き出すトレーニングに挑戦してみてください。自分の考えを書き出すと、自分の考えが客観的にみれるので、案外簡単に自分の考えを整理できます。
自分の考えをうまくまとめられるようになると、他人の文章であっても、文章の意図を正確に理解できるようになってくるでしょう。文書構成や論理展開、言葉の選び方の基本がわかってくるにつれて、相手のいいたいことが、自然と読み取れるようになるのだと思います。
4.正当性と信頼性を見極める「批判的思考で文章を読む」
前述のとおり、ほとんどの人は文章の正当性や信頼性を見極める指導など、今までに受けたことがないはずです。であれば、今からでも遅くありません。ぜひ批判的思考(クリティカル・シンキング)で、文章を読むトレーニングをしてみてください。
批判的思考と聞けば、文章のあらを探して人を責めるような、マイナスイメージを感じるかもしれません。しかし批判的思考の目的は、自分もしくは他人の意見を鵜呑みにせず、エビデンス(証拠)や正しい論理に基づいた文章かどうかを検証することにあります。
実際に、文部省の学習指導要領に関するページ※でも、クリティカル・シンキングの重要性が書かれています。繰り返しますが、批判的思考は相手を責めるためのものではなく、エビデンスにもとづく正しい文章を見抜くために必要な力です。
慣れるまでは大変かもしれませんが、ぜひ何度でも挑戦してみてください。
※参考:文部科学省 学習指導要領「生きる力」第2章 言語の役割を踏まえた言語活動の充実
5.言葉の裏側に隠れた意図を読み取る「飛ばし読みをやめる」
SNSやネットで情報を調べるのが当たり前の時代になると、重要そうなポイントだけを探して読む「飛ばし読み」と呼ばれる読書法がクローズアップされてきました。しかし飛ばし読みには大きなデメリットがあるので、個人的にはあまりオススメしていません。
飛ばし読みは、ようするに「大事な部分をかいつまんで読む方法」です。当然時間の短縮には、大きく役立つでしょう。
ですが、飛ばし読みをすると、その性質上どうしても理解が浅くなりがちです。さらに疲れているときなどは、ついうっかりと重要なポイントを読み飛ばしてしまう可能性があります。
重要なポイントを探し出すこと自体は、効率的な読書をするうえでとてもよいことです。しかし当然ながら、全体を読んでから重要なポイントを見極める方が、より多くの学びがあります。
全体を読みつつ重要なポイントをみつける読書法「速読」については、のちほどご紹介します。
6.脳トレで脳の働きを活性化させる
ここまで紹介した読解力アップのテクニックとは別に、読解力の源である脳そのものをグレードアップする方法として、「脳トレ」についても紹介しておきます。
脳トレの脳機能改善については、まだ明らかになっていない部分もたくさんあります。しかし、脳トレによって脳がよい刺激を受けるのは間違いありません。さいわい脳トレは楽しく誰でもできるものが多いので、気軽に取り組んでみればいいと思います。
脳トレには、クイズやパズルのような頭を使うものと、ウォーキングやヨガといった体を使うものがあります。頭を使う脳トレで脳が強い刺激を受けると、神経ネットワークが拡張され、新しい記憶の回路が構築されるそうです。
また適度に体を動かすと、全身の血流がよくなり、脳へ大量の血液が供給されます。脳の栄養源は血液中のブドウ糖なので、血流アップは脳の働きを大幅に改善してくれるはずです。
◆脳の活性化を促す方法については、コチラの記事でもお読みいただけます
7.読解力を鍛える究極の方法「速読」
速読は、読解力を鍛える究極の方法といっても過言ではないくらい、読解力に与える影響力が大きい読書法です。前述の飛ばし読みは、効率のよい読書法ではあるものの、デメリットも大きいとお話ししました。ところが速読をマスターすれば、短時間に1冊の本が読めてしまうので、わざわざ飛ばし読みをする必要がなくなります。
速読が読解力アップに有効な最大の理由は、速く読めることで同じ本を何度も読み返せるからです。
ウォータールー大学の研究※を調べてみると、以下の流れで計3回、合計19分間復習すれば、覚えた内容をほぼ忘れずに1カ月維持できると書かれています。
- 1回目:24時間以内に10分間
- 2回目:1週間以内に5分間
- 3回目:1カ月以内に2〜4分間
普通に読書をしたら、同じ本を読み返すのは決して簡単ではありません。とにかく時間がかかりますし、ゆっくり3回も読んだら、普通は飽きてしまいますからね。
その点速読ができれば、1カ月に3回どころか何十回も復習ができます。何度も読み返して記憶に定着させる、これが速読最大のメリットです。(さすがに何十回も読む必要はないですけど……)
※参考:Curve of Forgetting | Campus Wellness
◆速読法の違いについては、こちらの記事もどうぞ
この本を読んで読解力をアップしよう
読解力をアップさせるには、読解力に関する本を読み、知識を深めることも重要です。今回は、読解力についての書籍を3冊ご紹介します。気になる本があれば、ぜひ手にとってみてください。
「大人の読解力を鍛える」齋藤孝著
最初に紹介するのは、テレビや書籍で有名な明治大学教授「齋藤孝」さんの読解力本です。
真意の伝達を目的にした文章と違い、日常的に使われる言葉はゆるく縛りのないものがほとんど。さらにSNSが浸透した時代には、より短く簡潔なコミュニケーションが求められています。
すると表現の簡潔さゆえに、真意が伝わらないトラブルが多発してきました。これが今日本では、大きな問題になりつつあります。
この本は、単なる「文章を読んで内容を正確に理解する」だけでなく、日常生活で接するあらゆる情報から真意を正しく汲み取る能力について、深く考察してくれています。円滑なコミュニケーションをするためには、ぜひ読んでいただきたい1冊です。
「14歳からの読解力教室」犬塚美輪著
2冊目は東京大学で准教授をされている犬塚美輪さんの本になります。
犬塚さんもさきほどの齋藤孝さんと同じく、教育分野のプロフェッショナルです。教育のプロの視点から、子どもに向けて読解力をわかりやすく解説してくれています。
中学生キャラクターとの対話形式にして、イラストや図を多用しているので、それこそ読解力に悩みがある人でもサクサクと読めるでしょう。
個人的には「読解力を向上させる6つの方略」が、とても役に立ちました。
- 「これ・あれ」などの不明瞭な表現をわかりやすく言い直してみる
- 大事そうなところをみつける
- 文章の構造や接続詞などに注意して読む
など、読んでみると、なるほどと納得することばかり。当たり前の読書を、当たり前のようにできる方法が知りたい人は必見です。
「新しい文章力の教室」唐木元著
最後に紹介する本は、これまで紹介した2冊とは違い、よい文章を書くための本です。
月間6,370万PVを誇る超人気webメディア「ナタリー」の元編集長「唐木元」さんが、読者に完読してもらえる文章の書き方について詳しく解説してくれています。
書く力と読解力は一見関係ないように思えますが、よく考えてみればわかりやすい文章が書ける人は、文章を読解するポイントも同時に知っているわけです。
文章の構成から、読点のつけ方・漢字とひらがなのバランスまで、理解しやすい文章のポイントが満載です。相手に最後まできちんと読んでもらえる文章のコツを知りたい人は、ぜひ読んでみてください。
◆読書術についてはコチラの記事もどうぞ
まとめ
最近では媒体を問わず、いたるところで著名人の発言が炎上しているのをみかけます。これはもちろん発信者側にも問題はありますが、同時に受け取る側の読解力が低いのも大きく関係しているのではないでしょうか。
また読解力がある人とは話がスムーズに進むので、読解力があると認めてもらえれば、取引先や上司から信頼してもらいやすくなります。周囲の人から信頼されれば、当然ビジネスの成績アップにもつながっていくはずです。
不要なトラブルを避け、ビジネスで成果を出すためにも、できるだけ早く読解力を身につけていきましょう。
なお、読解力の向上には欠かせない速読ですが、速読の種類によって結果が大きく変わってきます。世界最速クラスの読書スピードが身につく、右脳速読法「瞬読」について詳しく知りたいかたは、ぜひZoom体験会にご参加ください。