記事の監修
株式会社瞬読 代表取締役山中恵美子
大学卒業後、関西テレビ放送株式会社に勤務。2009年学習塾を開講し3万人の生徒が卒業。
学習効果を上げる方法として速読を取り入れる。これが後の「瞬読」となり生徒が次々と難関校に合格。
2018年瞬読のみの講座が開講し、現在受講生は2,600名を超える。
著書『瞬読』は10万部超えのベストセラーに。その他、TV・ラジオなどメディアにも多数登場し、全国に瞬読を広めている。
近年、SNSのような短文でのコミュニケーションが、急激に増加してきました。そのため、ちょっとしたことで誤解が生まれやすくなり、さまざまなトラブルが頻発しています。
そういったトラブルを回避するには、言葉の真意を読み取る読解力が不可欠です。とはいえ、言葉でいうほど、読解力を鍛えるのは簡単ではありません。読解力を鍛えようと思ったら、まずはベースとなる「語彙力」を伸ばす必要があります。
ところが、忙しい現代人は読書よりもSNSや動画を好む傾向にあり、語彙力は年々低下しているそうです。これでは、ますます他人と円滑にコミュニケーションが取れなくなってしまうでしょう。
そこで今回は、速読に代表される、語彙力を伸ばすために有効な方法を7つほど紹介していきます。
目次
語彙力がある人のメリット
語彙力を伸ばす方法についてお話しする前に、まずは高い語彙力によってどんなメリットが生まれるか、その点を明確にしておきたいと思います。メリットがわかっていないと、語彙力アップへ真剣に取り組もうというモチベーションが起きないですからね。
ここでは、代表的なメリットを4つほど紹介しておきます。
言葉の意図を正確に理解できる
語彙力の高い人は、なんといっても「言葉の意図を正確に理解できる」のが、大きな強みです。
日本語は、似た意味でも微妙にニュアンスが異なる言葉も多く、誤解が生じやすい言語だといわれています。友達との会話ならまだしも、言葉の意味を履き違えて、ビジネス上の契約トラブルが起きたら大変です。最悪、賠償金などが発生することもあり得ますからね。
その点語彙力のある人は、誤解や曲解が少なくて済むので、こうした大きなトラブルに巻き込まれにくいです。
また、「言葉の意図を正確に理解できる」というのは、自分の意思表示が明確だという意味でもあります。相手の意図をきちんと理解できるうえに、自分の発言も相手に誤解を与えにくい。
こういう人は、誰からも信頼されやすく、しっかりとした人間関係を構築できると思います。
深い領域で考えられる
語彙量が少ないと、どうしても思考が浅くなりがちです。思考のベースとなる言葉のストックが不足しているのですから、考えてみれば当然といえます。
前述のとおり、言葉には、それぞれがもつ特有のニュアンスがあるものです。一見似た言葉でも、その裏側には発信者が感じている、もっと深い意味や感情が込められています。
たとえば、ひとことで「怒る」といっても、さまざまなレベルでの怒りがありますよね。激怒している人もいれば、冷静に怒っている人もいるでしょう。怒ってはいるけれども、相手の成長を願っての怒りかもしれません。
でも、「激怒」という言葉はあっても、「冷怒」という表現は聞いたことがないですよね。そのため私たちは、「怒る」という言葉だけを頼りに、状況を正確に判断する必要があります。
そして、そういった判断ができるのも、ベースとなる語彙をたくさん知っているからです。つまり、語彙力があるというのは、「相手の意図を判断する材料が、頭のなかにたくさんストックされている」ということにほかなりません。
人と直接会えず、円滑なコミュニケーションがむずかしくなりつつある昨今、語彙力はなかなか大きなメリットといえるのではないでしょうか。
誤解によるトラブルを防止できる
コロナ下の現在、対面での会話は減少し、SNSでの短文によるコミュニケーションが大幅に増えました。当然、短い文章では表現しきれないことも多く、語彙力が少ないとどうしても誤解が生まれやすいです。
その点、語彙力がある人は、短文の裏側に隠された意図までも深く読み取れます。だから、通常なら誤解が起きそうな状況でも、問題なくスムーズに対応できるわけなのです。
また専門用語にもある程度知識をもっておくと、無用な誤解が生まれにくいです。たとえば、体調が悪くて病院で診断を受けた際に、「この病気は完治がむずかしいので、寛解を目指しましょう」と医者にいわれたとします。
はたして、「寛解」という言葉の意味を理解できる人は、いったいどれくらいいるでしょうか。(本来、専門家は、むずかしい言葉を使わずに説明するべきですが……)
※寛解(かんかい)とは、治療の継続は必要ながらも、とりあえず症状が治まった状態を指す
これは少々極端な例かもしれませんが、こういった聞き慣れない言葉は、医学やIT、経済分野を中心に至るところで見受けられます。
こういう難解な語彙をすべて網羅するのは、現実的ではありません。しかし、自分が関係する分野の専門用語を押さえておくだけでも、コミュニケーションはだいぶスムーズに進むはずです。
勉強の効率がアップ
語彙力は勉強の効率にも、大きな影響を与えます。勉強とは、いうなれば「知らない知識をインプットする」行為です。当然、知識がまとめられた参考書や資料を、大量に読まなければなりません。
「勉強=大量の文章を読む」と考えれば、いわずもがな、語彙力の重要性がわかるでしょう。語彙力が不足していれば、効率よく文章を読み進められず、その結果、絶対的な勉強量が不足します。
また、語彙力不足は、受験にも大きな影響を与えます。現在の受験問題は、とにかく問題の文字数が多く、すばやく問題を読む能力がないとまったく歯が立ちません。
受験でスムーズに問題が読めるメリットについては、別記事で詳しくまとめています。ぜひそちらの記事も確認してみてください。
速読を活用!語彙力を伸ばす7つのポイント
語彙力に優れた人のメリットを知ってもらったところで、今度はいよいよ、語彙力を伸ばすポイントを7つ紹介していきます。
- 速読で大量に本を読む
- 速読を意識せずじっくり読むのも必要
- 普段読まないジャンルの本に挑戦
- わからない語彙は何回も繰り返し読む
- 類義語と対義語を一気に覚えよう
- アウトプットした内容を分析
- 会話の時間を増やす
ひとつずつ解説します。
◯速読のしくみについてもっと知りたい方は、こちらの記事もどうぞ
速読で大量に本を読む
語彙力を鍛えるなら、速読はかなりオススメです。ただこういう話をすると、「速読で語彙数を増やすのはムリ」と反論するかたもいます。「知らない言葉は速読できないのだから、速読と語彙力は関係がない」という考えです。
たしかに、記憶のメカニズムからいって、知らない言葉を速く読めないのは事実でしょう。だからといって、速読が語彙力アップにまったく効果がないというのは、少々極論だと思います。
というのも、速読で全体の読書量が増えれば、それだけ新しい言葉に触れる機会が増えるからです。普通の人が読破に2時間かかる本を10分で読めれば、そのぶん何冊も本が読めます。何倍もの量を読書する間に、新しい語彙がどんどん増えていくでしょう。
◯読書習慣と速読の関係については、こちらの記事もどうぞ
速読を意識せずじっくり読むのも必要
先ほど「語彙力アップに速読は有効」という話をしました。たしかにそれは正しいのですが、同時に「速読を意識せずじっくり読む意識」も同じくらい大切になります。
新書や自伝のようなノンフィクション・新聞などは、書かれている事実に対して、じっくりと考えを巡らせながら読むことが多いジャンルです。
小説・エッセイといったジャンルも、知識を大量にインプットするというよりは、内容を楽しんだり考えたりしながら読む人が多いでしょう。
こういう本でムリに速読をしても、読書本来の目的が果たせません。新しい語彙に触れる機会は増えるでしょうが、楽しく読めなければわざわざ小説を読む意味がなくなってしまいます。
もちろん前述のジャンルでも、速読をしたい人はどんどん速読して構いません。ようは、自分の目的に合わせて、速読と通常の読書を上手に組み合わせていきましょう、ということです。
◯小説の速読については、こちらの記事もどうぞ
普段読まないジャンルの本に挑戦
普段読まないジャンルの本に挑戦するのも、語彙力を伸ばすよい方法だと思います。本は嗜好品的な役割も強く、本好きでも、自分の好きなジャンルしか読まない人も多いです。
しかし、語彙力アップに関しては、できるだけ広い範囲のジャンルに手を出してみるのをオススメします。
というのも、「語彙力に優れた人は、幅広いジャンルの本を読んでいる」というデータがあるからです。
株式会社ベネッセコーポレーションがおこなった調査※によると、新聞やノンフィクションなど2分野以上で読書をしている人は、1分野だけ(新聞・ノンフィクションを除く)読んでいる人よりも、語彙力が20.4%も高い結果になっています。
最近は若者の新聞離れも顕著ですが、小説やエッセイだけでなく、ぜひこういった普段読まないジャンルの文章も読んでいきたいですね。(紙面ではなく、Web版でもOK)
わからない語彙は何回も繰り返し読む
語彙数を増やすために重要なのは、新しい言葉に触れる回数です。ある程度の年齢になっても知らなかった語彙の多くは、「むずかしくてあまり使わない表現」か、「IT用語のように新しくできた言葉」のどちらかだと思います。
こういう耳慣れない言葉は、1回だけさらっと読んでも、時間が経てばすぐに忘れてしまいます。今後あまり使う見込みがなければ別ですが、せっかく出会った言葉なら、なるべく覚えておきたいですよね。
その場合は、その言葉を含む前後の文章を、何回か繰り返して読んでみるのがオススメです。もしまったく知らない言葉だったとしても、前後の文章を読めば、話の流れで言葉の意味がなんとなく理解できることも少なくありません。
それでもわからなければ意味を調べ、何度か口に出してみれば、おそらく今後忘れることはないでしょう。
◯語彙力を伸ばすなら速読がおすすめ!右脳速読トレーニングについて知りたい方は、こちらの記事もどうぞ
類義語と対義語を一気に覚えよう
新しい語彙と出会った際に、その意味がわからなければ、おそらく辞書を使って意味を調べるはずです。せっかくですから、その際には、知らない言葉の「類義語」と「対義語」も調べてしまいましょう。
多くの言葉には、似た意味と、反対の意味をもつ言葉が存在するものです。たとえば、「傲慢(ごうまん)」という言葉がわからなかったとします。
その際には、「横柄(おうへい)・尊大(そんだい)・高飛車(たかびしゃ)」といった同義語と、「謙虚(けんきょ)・卑下(ひげ)」のような対義語もチェックするのです。そうすれば、語彙数が一気にアップします。
なかには、微妙なニュアンスを間違って覚えていた言葉などもあったかもしれませんね。同義語や対義語を調べるのは、少々面倒くさいかもしれませんが、余裕があるときは、ぜひともひと手間かけてみてください。それだけの価値は、十分あると思いますよ。
アウトプットした内容を分析
語彙力というのは、ただ増やせばいいというものではありません。インプットした語彙を適切に使えてこそ、語彙力を鍛える意味があります。
覚えた新しい言葉を実際に使ってみる。そして、相手の反応をみながら、自分の言葉選びが正しいかどうかをチェックする。この「アウトプットの分析」がなければ、本当の意味での語彙力は身につかないと思うのです。
なお、具体的なアウトプットですが、まずは新しく覚えた言葉(文章)を音読してみるだけでも十分効果があります。自分の話す言葉がスムーズに頭に入ってくるようなら、その言葉はマスターしたといってもよいでしょう。
もう1段上のレベルになると、ブログやSNSを使ったアウトプットもオススメです。実際に文章を書くうちに、自然と語彙数は増えていきます。
ただ、これもアウトプットした内容の分析は必須です。自分の意図を正確に発信できているか、きちんと確認してください。そうすれば、他人の目に触れるという意識も相まって、言葉の適切な使い方がしっかり身につくと思います。
◯アウトプットについては、こちらの記事もどうぞ
会話の時間を増やす
前述のアウトプットとも関係する話ですが、語彙力を伸ばしたいなら、「会話の時間を増やす」のも、非常に有効です。
ぜひ、覚えた新しい語彙を、積極的に会話のなかで使ってみてください。他人に向かって話すとなると、ほとんどの人は言葉の意味をきちんと調べてから使います。思い込みで、見当違いな使い方をしたら、恥をかきますからね。
また、会話のなかで同じ言葉を使いすぎると、あまりよい印象を与えません。同じ言葉しか知らない、教養のない人というイメージを与えてしまう可能性があります。
日本語はまだマシですが、英語はこの傾向が顕著です。そのため英語ネイティブは、同じ言葉を繰り返さずに、似た表現で言い換えをします。
日本語ではそこまでシビアに考える必要はありませんが、言い換えの意識をもっておくと、語彙力は飛躍的に伸びると思いますよ。
まとめ
語彙力の高い人は、適切な言葉遣いができるので、他人と無用なトラブルを起こしません。コロナウイルスの影響で、対面でのコミュニケーションが激減している昨今、これからますます語彙力を伸ばしていく必要があるでしょう。
今回の記事では、語彙力を伸ばす方法を7つほどご紹介しました。もちろん、すべてを同時におこなう必要はありません。できそうなものから、チャレンジしてみてください。1〜2個取り組むだけでも、きっとあなたの語彙力は、大きくアップするはずです。
なお、語彙力を伸ばす方法のなかでも、速読はとくに効果の高い方法です。速読で語彙力をアップさせたいかたは、まず「Zoom体験会」で右脳速読を体験してみてください。